第3話 デルソーレ鉱山

 頭がショートで湯気が出て正気を取り戻したログは彼の顔をジッと観察する。拡大してみると顔のほうれい線や肌にうっすらと鱗の形があるように見えた。ビタンビタンとイラついているのか立派な尻尾を床に叩きつけて尻尾についた色素弾を拭けと命令するような顔で訴えているようだ。


「あぁ~濡れ布巾で取れるんだな。人間の技術はさほど進歩していないようだ」

「信じられない…ドラゴンが人に化けるだなんて」

「化ける?当たり前を知らないんだな、そんなもん名前さえ覚えれば出来るようになるわ」


 魔物調査ギルドの説明会での会話を思い出す。

 魔物は数が多く基本的に弱く大軍を作っても返り討ちにされることが多いが、稀に種族としてステータスが良い個体“種族値最大ユニーク”が産まれることもあるとか。


 その個体には自身を名乗ることがあり、どこで人間の名前を手に入れたのかはわからないが名前を与えられる若しくは、自身がこの世界において名を思いつく行為が起きると昇格されて能力も1段階進化するようで、リーダ―で先陣を切って物や武器を発明する中で戦闘を行わない種族が長寿になるために研究しているのと色々なことを自発的に行うと予測されるがあくまでも推測された事実でしかない。



「ちなみに俺の名はオレゴン。お前の言う赤龍色というより褐色系のオレンジ色でドラゴン。オレゴンって名にしたんだ」

「安直な名前なんですね…」


「んで、お前はなんで俺の住みかを捜しに?わかっていると思うが安寧を崩したくない主義なんでね、内容に寄ってはその場で処理する」



 ログはここに来た理由をオレゴンに話してみた。

 冒険者として志すも才能やスキルも無く、向いていない自分が留年回避するために文章でエルグランドに記されていない魔物の生態系を埋め尽くしたいと思っていると、それを嘲笑う。



「まさかこの俺を取材にしに来る馬鹿がホントに居るとはな」

「それしか特技が無くて…」

「いいぜ。俺も丁度1人で退屈していたんだ。せっかく人間が来たからお礼はたっぷりとしないとな~」



 不敵な笑みを見せるオレゴン

 ロッカールームから何かを取り出すとオレゴンと同じ白衣を渡されてゴーグルなどを装備させられる。ログの身長は約170㎝、体重50㎏で同じくらいの背丈だ。



「人手不足で困っていたからよ。重い物を入れるのを手伝ってくれるか?」

「まぁ、いいですよ」

「んじゃ、俺の近くに寄れ。魔法で転移する」

「行くってどこにですか?」

「つべこべ言わず従え。現地に着いたら話す」



 白衣の袖を掴んでしばらく待つと足元から光が溢れて魔法陣を作り出した。

 行き先も不明なままオレゴンに連れられてたどり着いた先は鉱山の中、ブラッドオレンジ色の水晶が天井にも何処を見てもびっしりと生えている。



 地図を空間上に出すとエルグランドの中心に学園が聳え立つのを起点としてここから100㎞離れたデルソーレ鉱山という昔は鉱山を中心に製鉄所や村に集まるドワーフの中でもレアな鉱石が採れるとドワーフ(もじゃもじゃのおじさん)で活気づいてきたがブームが過ぎ去った今は魔物たちの根城となり誰も近寄る者は居ないという。



「さて、今日もレア種が出るといいんだが」

「廃鉱になってるから流石に無いんじゃ?」

「うだうだ言うな、俺はレアとかそういうもんを狙っているんじゃねぇよ」


 白衣の内側には試験管やフラスコ、薬などを調合するための道具が白衣1枚に格納されており、試薬結果表を取り出して重孝するオレゴンを他所にデルソーレ鉱山の内部を首が痛くなるほど歩きながら液晶画面に内容を打ち込んだ。


「あんまりウロウロするなよ、魔物が居るかもしれんからな」

「魔物!?」

「どう見ても貧相だから俺の傍から離れるなよ」

「ところでオレゴンはレア鉱石が目的じゃないって言ってたけど何が目的なの?」

「この秘密を守り通せると誓えるか?」


 その発言を聞いてゾッとする。

 守り通せるほどの物という重大なキーワードを考察、自身における体の不調を補う物だと確信したログは誓うと約束した。オレゴンは縦に頷くとポケットから何かを取り出した。



「近々、ドワーフ達が同窓会を準備していて鉱石同士の配合で装備に付加属性(エンチャント)の研究発明に協力してくれるか?」


「はい???」

 ただの手伝いに駆り出されただけだ。

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