第2話 ドラゴンが怠惰で強大な生物だと思うな

 ドラゴン――




 この大陸やどっかの大陸には必ずと言っても存在する圧倒的な力と図体のデカさを誇る魔物の一種である。属性による口から炎や氷のブレスを広範囲に吐いて数万の軍勢を蹴散らすほどの威力で国が喉から手が出るほどの欲しい力を象徴した魔物ドラゴンだが、一度討伐して鱗を剝いで装備を整えることに使うことしか記されていない。




 生態、生活リズム、主食は人間の村を襲って食っているのか?


 脅威でしかないドラゴンの基本的な情報を求む!




「詳しくは魔物調査ギルドまでお越しください…行ってみるか」




 僕の名はログ。


 ログ・イニス、17歳。






 冒険者を志す学園に在学はしているが成績不振に単位不足で留年確定までと首の皮一枚の危機に校長先生に呼び出されて留年を回避するための特別課題を俺に擦り付けられた。というのもこの課題は若き日の校長先生が昔やろうとしたことを僕に文章でなら君にも出来るだろうと舐めた態度で渡してきたのが自由帳。






 ここになんでも書いていい。


 好きなだけ君が体験した物を調べ上げて文章で埋め尽くせと――


 校長先生の知り合いにギルドが肩代わりしてくれるそうで調査ギルド“ホワイトワークス”へと足を運ぶと出迎えてくれたのは獣人の女性。






「ようこそ、魔物調査ギルド“カレイドスコープ”にお越しいただきありがとうございます。当ギルドを初めてご利用するログ・イニスさんですか?」


「もう話通してあるんですね」


「留年回避のためにも我々は全力でサポートを致しますので、何卒」






 畏まった態度で接客するのは白猫の背丈が高く、長髪の黒髪で立派な耳を持っている。金色の目と上下の衣服は蛍光色のグリーンで寒がりなのか長袖&ジーパンを履いているようだ。






「それで?あなたが調べたいものは何?」


「この地エルグランドに代々伝わる赤龍の話について纏めたいけど…」


「あ~そうね…(初っ端からドラゴンを調査するとか命知らずもほどがあるでしょ?!)」


「どうかしたのか?」


「いえ!なんでもないですよ…」






 ログが住んでいる大陸の名はエルグランド。


 この地には大型の生物や人間を超える超人が存在するが実際に目撃したのは数件だけで、詳細な情報やどんな生活をして仲間はいるのかととにかく敵か味方なのかがハッキリしないほど説明書が足りていない。だからこそ空想でしか考えて体験も無しに怯えるしかないのだ。






 ログには冒険者としての素質も無ければどのジョブに対しても才能が無い。


 1つだけ上げるとすれば文章で特定の物を纏め上げることだけは少し出来るくらいだ。スマホサイズの液晶画面を取り出して人差し指を2~3秒ほど押し続けて無地の紙に付け替えると自動的に名前と物に関するデータを紙に記すことができるため、いつでもどこでも編集可能。




 ログにとっては欠かせないアイテム――




「んで受けてきたのはいいけど、簡単には来ないな…」






 待てど暮らせどその辺で野宿を繰り返すこと3日。


 ドラゴンについての報告は2年前の目撃情報を最後に消息を絶っており、どのように生きているのかも詳細がわからない。4日目の朝に激しい咆哮と唸り声に飛び起きたログがキャンプの外に繰り出すと赤龍のドラゴンが上空を飛んでいる。ポケットから取り出したのは色素弾、狙いを澄ませてドラゴンの尻尾に命中すると細く白い煙が垂れているのを確認したログは目視で追いかけた。






 ついに終着点でドラゴンの住みかと思われる洞窟の入り口にて着陸態勢に入り、翼を格納させてノシノシと振動を鳴らしながら帰っていく。ログはドラゴンの記録をスマホに入力した後で追いかけて洞窟へと足を踏み入れると真っ逆さまに落ちた。


 どうやら落とし穴のトラップが敷かれていたようだ。






「うわぁぁぁぁぁぁぁ~」


 ポフンと可愛い着地音が鳴ると落とされた先の景色を見ると無機質な空間だが散りばめられた宝石の装飾が施された研究室のようだ。






「ここは一体?」


「誰かと思えばここに人間が迷い込むだなんてどういう神経だ?」


「!?」






 現れたのは白衣を纏い研究者としての風格を現す50歳くらいのおじさん。


 不機嫌な顔でこちらを睨んでいるようだ。






「つーか、尻尾のやつ洗って落ちるのか?目的はなんだ?」


「まさか…あなたはドラゴンですか?」


「?その口ぶりからすると馬鹿でかいドラゴンはどこ行ったのかと言いたそうな顔してるな。あのドラゴンは俺自身だ、人にも成れるしドラゴンに形態変化するからな」


「え??え??」






 理解が追い付かない――


 今どきのドラゴンは人にも変化することも出来るハイブリッドな世界なのだと、辞書で読んできた常識が崩れ去る。

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