第10話祭りの準備④

朝俺が起きると、メイド達が入り乱れる音が聞こえていた。


というか俺がそれで起きた。




「あの、アンさん一体今日何があるんですか?」




「す、すいません詳しいことはお嬢様に聞いてください」




そう言い残してアンさんは凄まじいスピードで別の部屋に向かっていった。


同じく近くにいたメイドに聞いても。忙しいの一点張りで大人しくメアリーさんに聞くことにする。




ちょうど近くで、メイド達の指揮を取っていたメアリーさんに近づく。近づいてみて気づいたが、メアリーさんはなんだか疲労困憊の表情を浮かべていた。




「あの、今日は何か大事な事でもあるんですか?」




「大事なんてレベルじゃない位の、国が揺らぐほどの方がやってこられるんですよ!」




もしかして女神様がやって来るとか?でも、この屋敷に来る理由がないし。




「実は、太陽神様がこの屋敷に来られると今朝手紙が来まして」




太陽神?それは何か新しい女神様とか?




「女神様ですか?」




「すいません、実はこの世界は魔族の方々を神話級、魔王級、天使級、宰相級、聖職級、の五つに分かれていて、神話級のお三方の一人を太陽神と呼び、誰にも別け隔てなく太陽のような笑みを浮かべることからこの二つ名が付いたと聞いております」




誰にも別け隔てなく太陽のような笑みを浮かべる魔族……もしかしてアリス?確かに昨日、メアリーさんが会いたがってるって話をしたけど、こんなに急に来る?




「すいません、その太陽神様に出す、お茶菓子ってなんですか?」




もしかしたら、人に出すものを食べるヤバイ奴に思われたかもしれないけど、背に腹は変えられない。




「このケーキなどですが」




そこには、普通の人が見ると、美味しそうで涎が出てしまいそうになるほどのケーキ類が大量に置かれていた。




「すいません、少し街に行ってきます」




「え!大丈夫ですか?」




「ちゃんと、太陽神様が来るまでには帰ってきます」




というか、俺の考えが当たってるなら多分やって来るのはアリスの筈。


















俺が帰ってきてから一時間ほど経った後、唐突に強烈な存在感を纏った者……というかアリスがメアリーさんの家の前にやってきた。




「い、いらっさいませ」




緊張でメアリーさんが噛んだ……というか、アリスこんなにカッコいい表情や雰囲気ってできたんだ、いつもの戯けない雰囲気でやって来ると思ってた。




「大丈夫、そんなに緊張しないで」




「ひ、ひゃい」




太陽のような笑みはメアリーさんには逆効果だったらしい。


何でアリスは此方を見るの?




「君が言ってきたじゃん」




そうだけど、こんなに早く来るなんて普通思わなくない?




「此方としては早くあっちに送りたかったんだけど、こんな話を聞いたら話に来ないと駄目じゃん?」




そういうものなのかな?分からないけど。




「そういうものなの」




「あ、あの太陽神様は一体誰とお話に?」




確かに、俺の心の声を読みながらの会話だから、メアリーさんからしたらアリスが独り言を言ってるように見えるのか……少しおもしろいな。




「面白くないし……メアリーちゃん?」




「ひゃい!」




「その太陽神様って言い方辞めにしない?アリスでいいよ?」




その距離の詰め方は駄目詰め方だよアリス……ほら〜メアリーさんショートした。






「大丈夫、回復魔法で治したから」




関係無かったらしい。




「こんなところで喋るのもいいですが、あちらにお部屋をご用意しておりますので、そちらに向かいましょう」




一人の勇敢なメイドによって、アリスは俺と横並びになる形になるように調整しながら移動する。




「それにしても、どうだった今日の私」




そんなにドヤ顔で言われても……カッコよかったけど、今の会話が無かったら完璧だったね、もう少しその真面目モード続かないの?




「もう無理だね、やっぱ拓人君と話してるのが楽だよ」




というか、やっぱアリス俺の心の声読めるよね?俺一言も声発して無いよ?




「気の所為だよ?」




此方を見ようか?




そうして、雑談?をしながら、予めメアリーさん達が用意していた部屋にアリスは通されていった。


もちろん俺は通せんぼを食らったけど、アリスがオッケーを出したから俺も一緒に入れてもらえた……よく通ったな。




「それにしても、太陽神様、本日はどのような要件でこの家に?」




メアリーさんさっきの回復魔法が効いたのか、緊張を全く感じない……よく見たら服をめっちゃ握ってた。




「用事といっても、祝福の手続きをしている魔族が会いに来たんだ」




笑みを浮かべるアリスとは正反対にメアリーさんは……またショートした。


この人今日だけで二回も頭がショートしてる。




「大丈夫、私が治す」




貴方がオーバーキルしたんだけどね?




復活したメアリーさんは先程のショートしていた顔と変わって、驚きが隠せない顔をしていた。




「も、もしかして拓人さんが仲良くしている魔族って」




「そうだね、私だね」




「これで、祝福に行ってもいいですかね?」




「流石にアリス様が用意したものを私が拒否する理由もありませんので……良いですよ」




やった、メアリーさんから祝福を受けて良い許可が降りた。




「あ、アリス様、よかったらお茶菓子を用意しましたので、よかったらどうぞ」




そこには、あの時見たケーキの数々が並んでいた。




「まぁ、しょうがないよね」




アリスは諦めの声を上げ、メアリーさんは何の事か分からずただこちらを見ていた。




「アリス、これさっき買ってきたんだけど」




俺が買ってきたのはチョコレートだった。




「ほら、この前チョコ好きって言ってたでしょ?それに、普通お客さんにチョコなんて出さないからメアリーさん達は用意してなかったけど、どうせならその人の好きな物を食べてほしいから……はい」




俺はチョコをアリスに手渡す。




「あ、ありがと」




アリスが此方を向いてくれなくなった……何でだろう?




そこからは、メアリーさんの緊張も解け、他愛もない雑談が続いた……俺は話に入れなかった。




「じゃあ、今日はありがとね」




「いえ、こちらこそありがとうございましたアリスさん」




メアリーさんの呼び方が気づいたらアリスさんに変わってた。




「あ、それと拓人君」




何故か俺の名前が呼ばれた……どうしたの?




「いや、今日がその日だから、ちゃんと部屋にいてね」




あ〜祝福の話か……安心してちゃんと覚えてるから。




「それなら良いよ……じゃあ、私はここで失礼するよ」




そうして、アリスは消えるように帰っていった……やっぱこの帰り方は変わらないか〜

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