第9話祭りの準備③

「まずは自己紹介から、私の名前はエナです……知っての通り貧乏です」




そんなに言うほどなの?




「俺は大武拓人……何も言う言葉が見当たらないよ」




本当に可愛そうでならない。もう少し何かをあげた方が良いのかもしれないけど、これは人のお金だからムダ遣いができないんだすまないなエナ。




「拓人さんっていうんですね……最後の言葉要りました?」




「さぁ、どうだろうな」




「何故か少し性格悪くなってません?」




少し悪ふざけが過ぎたらしい……にしても何でこんなに貧乏なんだ?




「お前、何でそんなに貧乏なの?」




何か特別な理由があるなら話は別だけど……どうだろう?




「いえ、実は特別な理由があるんです」




「特別な理由?それは一体?」




「少しばかり、玉を回したり、動物を応援したり、船を応援したりといろんなことをしていたらお金が減っていたんです……何でですかね?」




簡単言えば……ギャンブルじゃねぇか!




「違います、いろんな競技や応援です!」




「嘘つけ!絶対にギャンブルだろ……というかそれ以外に考えられるか」




こいつ、まさか俺からの金も使う気じゃないだろうな。




「そんな訳無いじゃないですか、半分だけですよ」




そう言って何人が全額溶かした思ってやがる……多分こいつも全額溶かす気がするし、お金あげなくても良いよね。




「それは困ります!どうやって生活していけば良いんですか!」




俺から搾り取る気満々かよ!




「当たり前じゃないですか、実際私の店の商品を見て安いなと感じましたよね?」




それは、まぁ




「そして、今の私に慣れた拓人さんはずっと私のお店にやってきて、お金を恵んでくれる……永久機関の完成ですよ!」




それは辞めろ……実際エナの店にはこれからもお世話になる気がする。




「でしょ、ですから今のうちに使って恵まれた方がお得じゃないですか」




「まぁ、考えておくよ」




そうして俺とエナの雑談はもう少し続いた。














「そろそろ時間ですか?」




「あぁ、意外と面白かったよ、また来るよ」




「では、これは言わないとですね」




一体何を言うつもりなんだろう?




「またのご来店お待ちしております」




満面の笑みを浮かべてるけど……多分営業スマイルだなそれに、




「俺は、何も買ってねぇよ」




「どうせいつか買うんですから……それにこんなに可愛いこの笑顔を無料で拝めるんですよもっと凝視してみないと」




実際可愛いとは思うが……どちらかと言えば残念美人が一番似合うな




「そうですよ〜どうせ私は残念美人ですよ〜だ」




「そんなに拗ねんなって……じゃあ、またいつか来るよ」




「わかりました、その時は沢山お金を恵んでくださいね」




それはお前の態度次第だな。




そうして俺は、エマの店からメアリーさんの家に向かって帰っていった。










「ただいま戻りました〜」




俺がそう言うと、ちょうど近くにいたのかタイミングよくメアリーさんがやってきた。




「おかえりなさい、それにしても凄い大荷物ですね」




なんだか新妻感を覚えたのは俺だけでは無いはず。




「実は易くて室のいい店を見つけましてね、それで王国祭の準備をしてもらったんです」




実際エマの店は店主さえ変えれば、繁盛する気がするけど……多分値上げするよな〜。




「それは良かったです……この荷物を見る限り狩猟には出ない感じですか?」




「ええ、俺に狩猟は少し難しい気がしまして」




というか、皆魔法を使いまくるなか、俺だけ普通というのも恥ずかしい。




「確かに、拓人さんには狩猟は少し難しいかもしれませんね」




なんだか小馬鹿にされた気がする。




「っと、すいません私はこの辺りで」




そう言ってメアリーさんは早足で向かいの部屋に入っていった……どうしたんだろうか?


そんな事を考えていると、いつの間にか隣にアンさんがいた……この人は唐突に現れないと気がすまないのだろうか?




「実はお嬢様、拓人さんがちゃんと帰って来るかずっと心配していたんです」




当然かのような暴露……それにしてもメアリーさんが俺の心配をしてくれてたのか、もしかしてさっきメアリーさんと会ったのって。




「えぇ、想像の通り心配でずっと玄関の前にいた所鉢合わせです」




なんだか申し訳無さが込み上げてくる。




「後もう一つ」




「?」




「この事は内緒にしてくれないと私が死にます……色んな意味で」




「メアリーさん〜!」




「ちょ、タンマ!」




一回この人は痛い目を見たほうが良い気がする。




「では、俺は自室に戻りますね」




しかし、アンさんから返事は帰ってこなかった……なんだか生まれたての子鹿がいた気がするけど、気の所為かな。
















「アリスは……まぁいないよな」




当たり前か、なんだか最近忙しそうにしてたし……そろそろメアリーさんに紹介したかったんだけど、タイミングがあったらかな。




「やっほ、また来たよ」




そこには部屋の真ん中に唐突に現れた……アリスだった。




「毎回言うけど、その登場の仕方どうにかしない?少し慣れてきたとは言え、まだ心臓に悪いよ」




「大丈夫、そろそろそんなの関係無くなるから」




一体何の話をしているんだろうか?




「そう言えば何で私を呼んでたの?」




あ、忘れる所だった。


そして俺は、アリスにメアリーさんが会いたがってるとか、奇妙な奴に出会ったなどの今日起きたことを話していた。




「エマって子の事は知らないけど……まぁ、メアリーちゃんからしたら当たり前か、急に魔族が祝福の手続きを整えるなって聞かされたら」




そこには少し悲しそうな顔を浮かべるアリスがいた……自覚あったんだ。




「大丈夫だよ、多分アリス有名人だし、なんとかなるかもだし、最悪俺が何か言うよ」




「そう、だね……じゃあ、魔法の練習しようか」




良かった、いつもの元気なアリスに戻ったらしい。




「わかりました、先生」

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