第7話祭りの準備①
俺が祝福を受ける事が決まってから一夜が明けた。
「祝福を受けるのは明日だし、とりあえずメアリーさんにお祭りに行けるかどうか聞こうかな?」
俺はベッドから飛び起き、隣のメアリーさんの書斎に向かった。
もし、行けないと言われたらどうしようかな、今からアリスに、行けないというのも申し訳ないけど……確認してから決めようかな。
扉にたどり着いた俺は、目の前にある扉を叩いた。
「すいません、今良いですか?」
「拓人さんでしたか、大丈夫ですよ」
そうして、許可を得た俺は、メアリーさんの書斎に入っていった。
というか、多分俺が起きたのが七時位だったはずなのに、何でこの人はもうここに居るんだろう。
「どうしました?」
「いえ、実は二日後にお祭りがあるらしいんです」
「ええ、グリュック王国を挙げてのお祭りですよね?」
そんなに凄いお祭りだったんだ。
「それです、実は、それに行きたいと思ったんですけど、メアリーさんも一緒行けないかな、というお誘いです」
というか、俺が一緒に行きたい……アリスとだけじゃなくて、最近はいろんな人と仲良く過ごして行きたいと思い始めてきたから。
「行くのは構わないんですけど、それには女神様の祝福が必要だったはずですけど」
「ええ、なんだか友達が祝福の手続きをしてくれるらしいんですけど」
これ、この世界に住んでる人たちからしたら、胡散臭過ぎないかな?
というか、何でメアリーさんは驚愕した顔を浮かべているんだろう?
「も、もしかして、拓人さんには女神様のお友達が?」
「いえ、そういうのではなく、魔族です」
「わかりました、しかし、私は仕事がございますので」
そう言って断ろうとした時、隣りで静かにしていたアンさんが話に入ってきた。
「この際ですし、行った見たらどうですか?」
良いぞ、まさかのアンさんが味方に付いてくれた。
「し、しかし私には仕事が」
「その仕事の七割はメイドや後宮に住んでいる他の人の仕事を奪ったものですよね?」
え、じゃあ今している仕事とかもその中に含まれてるのかな?
「う、奪ったは人聞きが悪くないですか!」
「自分の仕事じゃないって所は否定しないんですね?」
なんだろう、何故かこの時のアンさんが凄く楽しそうに見えるのは気の所為だろうか……絶対に違う、あの人メアリーさんをからかうことを凄い楽しんでる。
「そうですね、張り詰めてはいけませんしね」
何か秘密にしていた事がバレた子供のような顔をしていた。
「わかりました、では俺はこのまま祭りに行く準備をしに行きますので」
「あぁ、少し待ってください」
「どうしました?」
「今まで少し立て込んでいて渡すのが遅くなってしまいましたが、こちらをどうぞ」
渡されたのは袋だった……なんだろう重いし、触る事に感触が変わるんだけど。
「あの、これは?」
「それはお財布です、大体金貨百枚くらいです」
「えぇ!こんなにもらっても良いんですか?」
この世界は銅貨、銀貨、金貨、白金貨で向こうの十円、百円、千円、一万円になっていて、金貨百枚って事は百万円ももらえた……こんなに貰うのは流石に。
「あの、こんなに貰うのは流石に」
申し訳ないと言おうとした時、アンさんがまたもや口を挟んできた。
「いえ、それくらいじゃないと駄目なんです」
どういう事か聞こうとしたが、話すタイミングをくれなかった。
「王家の娘となると、いつ異世界人が家に居るかを知られるわからないんです、もしバレた時に、その異世界人に渡した金額が少ないと、王家の娘としての威厳が少なからず疑われることになるんです」
この世界は異世界人というか、常識を知らない人にどのような対応をするかで威厳が出てくるらしい。
俺には到底分からないし、理解できない世界の話をしてらっしゃる。
「なので、どうかこのまま受け取ってください」
真剣な眼差しで訴えかけてくる、横に居るメアリーさんの方に目配りをしてみると、何も言わず頷いていた。
「わかりました、ですが……倍にして返させてください」
そういうと、先程までとは違う、嬉しそうな顔を浮かべていた……嬉しいって言ってるし多分そう。
「ですが、これはお渡ししますが、いつか貴方の友達と言われるその魔族に会わせてはくれませんか?」
これはアリスのことだろう……会わせることは良いんだけど、今のまま夜に魔法を教えてくれる事を許可してくれるかな?
「わかりました、次会った時に話してみます」
そう言うと少し安心したような感情がやってきた。
この魔法、オンオフ機能がついてると嬉しんだけど、まぁアリスと相談かな。
「では、お金はお渡ししましたので、お祭りに使う物を買ってきてください」
「わかりました、では行ってきます」
何か、今の会話初めてのお使い感が合った気がするけど……多分気の所為じゃないな。
俺はメアリーさんに見送られながら、先日アリスが案内してくれた、日用品エリアに向けて足を進めた。
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