第5話ワイバーンがやってきた


アリスは宣言した通りに街案内を始めた。




「メリーちゃんの家から一番近いのはここ、日用品とかを多く売っているエリアで、困ったらここに来れば良いと思うよ」




「もしかして、俺が迷子になったとこも?」




「そうだね、このエリアでだね」




にしても、アリス何か格好が変わってる気がするんだけど。




「ねぇ、アリス」




「どうしたの?」




「いや、何か服が変わったよね」




元々アリスは黒いショートパンツに白い七分袖を着て髪はロングだったが、今は、デニムにホワイトスウェットと、そしてポニーテールとカジュアルな格好に変わっていた。




「何でって、デートでしょ?」




デート?俺たちはいつから付き合っていたんだろうか?




「デートの意味は知ってる?」




「意味も何も、仲の良い男女が何処か行くことでしょ?」




そうだけど!そうじゃない!




「まぁ、そんな感じだよね!」




「?」




心底不思議そうな顔を浮かべていたが、解説はできない。


だって、俺は、彼女がいた経験が無いから!




「そんな事は置いといて、何か街並が変わったよね?」




少し、興味深そうな顔を浮かべていたが、すぐに切り替えていた。




「そうだね、この辺りは飲食店が多くて、冒険者が多いから、実用的な作りが多いかな」




確かに、周りを見てみたら、ゲームとかに出てきそうな建物が多く見える。




「どうせだし、この辺りで何か食べてから行こうか?」




「確かに、ずっと歩いてきたから少しお腹が空いてきたかも」




そう言って俺たちは、まさにマ○クみたいな看板をした、ハンバーガー屋に入っていった。


この世界にマ○クってあったんだ。




「このお店の名前何ていうの?」




「モックって言って、拓人君の世界からのお店だね」




何だその、ハンバーガーショップの二大巨頭を足したような名前は!




「まぁ、良いか……メニューとかってどうなってるの?」




テーブル付近を見回してみてもメニューが見当たらない。




「それは、このボタンを押すと、目の前に出てくるでしょ?そしてメニューをタップすると、注文完了だね」




「おぉ〜」




凄い、これが魔法か。




「魔法というか、魔法具だねこれは」




そうして俺は、ビックモックを注文した……大丈夫かな?














「ふぅ〜美味しかった〜」




にしても、この肉、鶏肉みたいな味がしたけど、食感は鳥肉じゃ無かった気がするけど、なんだろう?




「ねぇ、アリス、このハンバーガーの肉は何を使ってるの?」




「このお肉はカエルだね」




「カエル」




マジで、これカエル肉使ってるの……何だか吐き気が。




「大丈夫、ちゃんと美味しかったでしょ?」




美味しかったけど、そうじゃない……固定概念って怖い。




「じゃあ、食べ終えたし、お会計に行こうか?」




「分かった……あ」




今気付いた、俺財布持ってない。


というか、この世界のお金を持ってない……どうしよう。




「大丈夫、ここは私の奢りだから」




「でも」




流石にデート?の相手に奢らせるわけには。




「でも、拓人君お財布持ってないでしょ?」




「それを言われると言い返しが見当たりません」




「でしょ?」




「じゃあ、次遊ぶ時に奢らせてよ?」




なんとかして、それまでにお金を見つけないと。


というか、何でアリスはぽかんとしてるの?




「アリス〜大丈夫?」




目の前で手を振ってみたけど……動かない。




「アリス〜大丈夫?」




「だ、大丈夫だよ」




そうは思えないけど……本人が大丈夫と言ってたし、大丈夫でしょう。




「じゃあお会計に行ってくるから、先に出て待ってて」




「分かった、ありがとう」




そう言って俺は、アリスよりひと足早く、店を後にしていた。


モック……意外と美味しかった、また来よう。




















店を出てしばらくすると、アリスが出てきた。




「じゃあ、これからどうする?」




「そうだね、ご飯も食べたし……!」




「どうしたの?」




急にアリスが何もない場所を向いていた。




「いや、なんでも無いかな」




少し、不機嫌な顔をしていた……本当にどうしたんだろう?




「まぁ、良いか……じゃあ、このままお菓子が売ってある場所があるんだけど、そこに行かない?」




「分かった、どうせならメアリーさんたちの分も買っていこうかな?……お金が無かった」




どうしたら、この世界でお金が稼げるかな?




「何か、向こうの世界の物を魔法具として、売ってみるのも良いかもしれないね?」




「でも、俺のいた世界の技術を使っては駄目って、メアリーさんが」




「大丈夫、たしかに電子機械?は駄目だけど、魔法具としては大丈夫だから」




なるほど、じゃあこの世界で不便に思った事をアリスに相談してみようかな?




「とりあえず、お菓子屋さんに行こう、私のお気に入りのお店から新作が出たらしいから」




目をキラキラさせながらウズウズしていた……猫みたいで可愛いな。




「分かった、早速行こうか」




「じゃあ、出発〜」




そうして、俺たちはお菓子屋さんに足を進めた。




「!」




なんだろう、この感覚、恐怖?憎悪?よくわからないけど、そんな感じがする。




「拓人君も気付いた?」




「なにこれ?恐怖のような、でも憎悪も混じってるよな感覚は」




アリスは少し考えているようだったけど、それよりも早く、この感情の持ち主が俺たちの前に現れた。




「な、なにあれ、ドラゴン!?」




というか、十匹は多くない!




「ドラゴンと言うか、ワイバーンだね、ゲーム?でよく見るんでしょ?」




確かに、ワイバーンはよくゲームで見るけど、まさか本物を見ることがあるとは思わなかった。




「ヤバいよねこれ、大丈夫?」




もしかしたら、俺はここで死ぬのかな?




「大丈夫だよ、この国の兵士は優秀だよ、それに最悪私が殺す」




何故か、アリスが言ったら本当にそうなりそうな気がする。




『我が国の国民に告げる、このワイバーンは我が国の兵士が討伐に行く、それまでしばし待っていてくれ」




そう言って、放送が途切れた……こういうのも魔法具なのか。




「兵士は普段は宮廷に滞在していて、ここに来るまでは約二時間……待ってみようかな」




そう言って、アリスが手を広げると、俺とアリスの周りに何か半透明の何かが出てきた。




「なにこれ?」




「防御魔法だよ」




これで、ワイバーンの攻撃は大丈夫かもしれない。




そう安心していたが、ワイバーンから炎の球が飛んできた。


実際にダメージは無かったが、俺は驚いて、尻もちをついってしまった。




「ねぇ、拓人君、私がさっきなんて言ったか聞こえてた?」




さっきというと、




「待ってみようかなってとこ?」




「そう、私は兵士が来るまで待っておこうと思ってたんだ……でも、彼奴等は拓人君に向かって火を吐いてきた、つまり、私達に向かって攻撃をしてきた……じゃあ、正当防衛だよね」




そう言ってアリスが手を上に掲げると、その手のひらには先程のワイバーンの炎が可愛く見えるほど、大きく、白色の炎があった。




「今、拓人君とデートしてるの、分かる?」




先程までの雰囲気とは一風変わって、本当に怒っている事が分かる。




「邪魔するなら……死んで?」




そうして、アリスの手に留まっていた、炎はワイバーン目掛けて飛んでいった。


そうして、空に飛んでいた筈のワイバーン十匹は跡形も無く消えていた。




「じゃあ、お菓子屋さんに行こうか」




「いや、行こうかじゃなくて、何今の?」




「今のは炎魔法の最上位、テラフレア何だけど、どうだった」




どうだったって、何がだろう?




「私、かっこよくなかった」




そういうことか、たしかに凄いカッコ良かった




「炎の風で、髪をなびかせてた所とか凄いカッコ良かったよ」




俺もあんなふうに魔法を打ってみたいな。




「それは難しいかも、魔法は本人の才能が九割だから」




俺の心が見透かされた。




「拓人君はこんな魔法を覚えなくても良い気がするけど」




「それは、どういう事?」




「さっき、ワイバーンが来た時、そのワイバーンの感情も分かってたでしょ?」




確かに、あれは何だったんだろう?




「あれは感知魔法何だけど、拓人君のは生物の感情を読み取る事においては、最強レベルだよ」




やった〜最強だって。


感情を読み取ることだけど。




「多分さっきのは無意識でやってたから、今は感じ取れないでしょ?」




確かに、今までの感じていた感情が全く分からなくなった。




「だから、明日からは、私と魔法の練習をしよう」




「良いの?」




「此方から言ってるんだから駄目とは言わないよ」




「じゃあ、よろしくおねがいします、先生」




「任されました」




そうして、俺は明日から魔法の練習をすることになった。




「でもその前に」




「?」




「約束通り、お菓子屋さん行こう?」




「確かに、びっくりして少しお腹が減ってきたし、買いに行こうか」




「じゃあ、早速行こう〜」




そうして、アリスは最初と同じように、俺の手を引きながらお菓子屋さんにやってきていた。




「この辺りは、小腹が減った時に助かる物が多くあるから、少しお腹が空いた今のような時にはお勧めだね」




確かに、辺りにはクッキーやケーキのようなお菓子が沢山あった。




「アリスは何が一番好きなの?」




「基本的には何でも好きだけど……チョコレートかな?」


「チョコレートって甘い物や、少し苦い物があったりで、飽きないし手で食べれるから好きなんだ〜」






「美味しいよね、チョコレート……何か俺のいた世界のブランドがありそう」




「確か……大正っていうチョコレートブランドがあるよ?」




あれか、時代ってことは。




「それは高いの?」




「すごく高くて、貴族御用達なお菓子だね」




真逆の位置に接してるんだな。




「まぁ、今日出た新作はクッキーだけどね」




「俺は、クッキーが好きかもな〜」




そんな雑談をしながら、新作を買い、帰路についていた。




「にしても良かったの?俺の分だけじゃなくて、メアリーさんの分まで買ってもらって?」




「良いの良いの、お金は余るほどあるから」




何か、アリスが言ったら本当にそれほどのお金がありそう。




「じゃあ、また夜に来るから」




「分かった、また」




そう言って、アリスは消えた……こういう消え方はカッコいいけど、来るときは少し心臓に悪い気がする。

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