第4話街に行こう
「はぁはぁ、死ぬかと思った」
「大丈夫だよ、私がキャッチするから」
実際に俺が落ちてもこの魔族はキャッチするぐらいは余裕だと思うけど、
「そういう問題じゃないじゃん、落ちたらどうなるかとかずっと考えてたんだけど!」
「でも、行って正解だったでしょ」
実際に俺は、人との考え方が変わり始めていた。
「というか、貴方の名前は?」
「私の名前?私の名前はアリス、呼び捨てでいいよ?」
アリスと言うらしい、たしかに金髪だったり、アリスっぽさがある。
「わかったよアリス、ありがとう、なんだかスッキリしたよ」
「どういたしまして」
はにかんだような笑顔は、元の可愛さも相まって、とても絵になっていた。
「どうしたの?」
「いや、なんでも無い」
とても、見とれていたとは言えない。
「じゃあ、私はもう帰るね?」
「分かった、ありがとうアリス」
そう言うと、アリスは窓から落ちたかと思ったけど、飛んで帰っていた。
「あ、こんな時間に五月蝿くしすぎたかも……寝る前に言い訳を考えておこう」
そうして、約十分ほど考えた後、ベッドに入りそのまま眠ってしまった。
「おはようございます、メアリーさん」
「おはようございなす、拓人さん」
起きた俺は、そのままダイニングルームにやってきていた。
「昨日は休めましたか?」
「えぇ、色々あって、疲れていましたので、ベッドに入ったら、すぐに寝てしましました」
アリスが遊びに来たなんて、口が滑っても言えない。
「そういえば、昨日変な音が聞こえませんでした?」
「昨夜は特にはありませんでしたよ?」
ということは、誰にもアリスが来たことはバレていないのか……何でだろう?昨日普通に大声を出した気がするけど、アリスが魔法で何かしたのかな?
「昨日聞き忘れてしまってんですけど、何か食べれないものがあったりします?」
唐突にそんな事を聞かれてしまった。
「どうしたんですか?」
「いえ、多分しばらくはここに過ごすことになると思うんですよ、なので、何か嫌いなものを無理やり食べてほしくなかったので」
この人は本気で俺が現実に戻る間、不自由をさせたくないらしい……優しいな。
こんな人から距離を取ろうとしていたことが少し恥ずかしく思えてくるな。
「嫌いな食べ物はキュウリが苦手ですかね」
「キュウリですか?」
キュウリの匂い、味、食感の何もかもが嫌いだ。もしかしたらこの世界にはキュウリが無いのかもしれない……それはそれでラッキーな気がするけど。
「緑色の棒状のものですよね?」
あってしまうのか、この世界にキュウリが。
俺は絶望感を覚えた。
「そんな顔をしないでください、料理長からは私が言っておいておきますので」
「ありがとうございます」
きっとこの人は女神か何かだろう。
この世界は本当の女神が居るけど。
そうして朝食を取り、自分の部屋に戻っていた。
「今日は何しようかな〜」
「じゃあ、街に行ってみる?」
「確かに、それも良いかもしれないけど……は?」
ベッドで寝転んでおり、体を起こすと、アリスが窓からやってきていた。
「また来ちゃった、てへ」
いや、てへじゃないでしょ。
「まぁまぁ、そんな事は気にしないで、街に行く?}
気にはなるけど、この世界の事を知っておきたいし……よし。
「そうだね、じゃあ、街に行きたいけど……また一人でいったら迷子になりそうだけど」
「それは大丈夫だよ、私が案内するから」
なんと、アリスが案内を買って出てくれた……正直とても有り難い。
「じゃあ、案内をお願いするけど」
「けど?」
「初めてあった時、あの魔族がなんか驚いてる気がしたけど、有名人だったりしないの?」
もし、有名人なら、俺が殺されたりしそうだけど。
「大丈夫、認識阻害魔法で私って気づかれなくするから」
そう言いながら、胸を張っていた。
程よい胸が更に強調されていた……俺は悪くない!男の性だ!
「どうしたの?大丈夫?」
辞めて、そんな純粋な目を向けないで。
「大丈夫だよ、とりあえず、メアリーさんに言いに行くから少し、この部屋で待ってて」
「分かった、行ってらっしゃい〜」
そうして、ベッドに座りながら、手を振っていた。
「急なこととは思いますが、少し街に行ってきます」
「本当に急ですね、どうしたんですか?」
「いえ、二年位過ごすならこの世界がどうなっているのか気になってしまって」
嘘は言ってない、でも真実も言ってはない。
「わかりました、でも、早めに帰ってきてください、どうしても心配をしてしまいますので」
本当にこの人はお人好しがすぎると思う。
「わかりました、夕方くらいに帰ってきます」
「では、行ってらっしゃいませ」
「行ってきます」
そうして、メアリーさんに見送られながら、扉から外に出た。
俺が外に出ると、すぐ側にアリスがやってきた。というか出てきた。
「その登場の仕方どうにかしない?」
本当に唐突に出てくるから心臓に悪い。
「そうかな?まぁ、考えておくよ」
そう言いながらアリスは笑っていた……本当に考えておくのかな〜。俺は半分あきらめていた。
「まぁ、良いか……じゃあ、案内よろしくね」
「任されました!」
アリスは俺の手を引きながら、街へと歩いていった。
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