第3話銀のブレスレット
「ただいま戻りました〜」
扉を開けると同時に、何かが俺の体に突っ込んできた。
「すいませんでした〜!」
すごく痛かった。
「た、拓人さん、良かった〜ちゃんと帰ってきてくれて」
心配してくれたのはメアリーさんだけだった。
「それにしてもアン、近くに居て逸れるってどうゆうことですか?」
顔は笑っていた……何か後ろに見えるけど。
「ち、違うんです、唐突に拓人さんが消えましてね」
「そんな訳無いじゃないですか、貴方の確認不足でしょう」
これは誤解をしている気がする。
「メアリーさんちょっと待ってください」
「は、はい」
「アンさんの言ってることは大体は真実です」
驚愕の表情を浮かべていた……まぁ急に消えたなんて言われたらそうなる気がするし。
「アンさんの隣を歩いていたら、気づいたら路地裏に居たんですよ」
メアリーさんは何かを考えるような顔を浮かべていた。
「そして、そこで金髪の魔族と出会って帰ってきました」
「金髪の魔族ですか?」
相手は知ってるぽかったし、メアリーさんも知ってるのかな?
「何か渡されたりしました?」
「いえ、特には何ももらってなかったはずですけど」
ポケットを探してみると……何かあった。
「あの、こんなものが出てきたんですけど」
向こうの世界でも見る、銀色のブレスレットが出てきた。
「これを魔族からもらったんですか?」
「いえ、何故かポケットに入っていたんです」
本当に今気づいた、いつから入っていたんだろう。
「少し、お借りしてもよろしいですか?」
「構いませんよ」
そうしてメアリーさんはアンさんとは別のメイド?にブレスレットを渡していた。
「本日は疲れたと思いますのでもう食事にしましょう」
こんな大きな家の食事……どんなのが出てくるんだろう?
「行きましたか?」
「行きましたね」
拓人が帰り、安堵の表情を浮かべたのもつかの間、今度は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。
「このブレスレット、ただのブレスレットでは無いですよね?」
そこでメアリーは、魔道具の鑑定を得意とする従者をに確認を取る。
「えぇ、これは何か特別な魔法が施されています」
しかし、と言葉を続かせ、メアリーたちは唾を飲む。
「これほどまでに複雑かつ、高度の魔法となると私では判断ができません……最悪神話級の可能性があります」
「というか、これほどのレベルとなると、間違いなく神話級です」
神話級とは、何百万といる魔族のトップに立つ三人の魔族の事をさす。
それほどまでの大物が、拓人に何故興味を持ったのかは、考えるまでも無かった。
「異世界の技術ですかね?」
「しかし、それは」
「えぇ、女神様によってその話を聞くことは許可されておりません」
なら、とアンが言葉を続けようとするが、それよりも早く、メアリーは持論を展開する。
「聞くのが駄目なだけであって、やらせることは、多分大丈夫だと思うんです」
「しかし、それでは女神様との全面戦争になりませんか?」
「しかし、神話級の方々は女神様と同格程度の力を持つとされています」
どれだけ考えても結論は出ず、一旦食事を摂ることにした。
「この事、拓人さんに伝えます?」
そう聞いてきたアンだったが、メアリーの中ではすでに結論は出ていた。
「言えるはずがありません、この世界に迷い込み、知人とは逸れ、路地裏に飛ばされるだけで手一杯になるはずなのに、さらに、重荷を背負わせるわけにはいきません」
「ふぅ〜いい風呂だった」
昼食を取った後、何やら重い雰囲気でやってきたメアリーさん達だったが、特には教えてくれなかった。
その後、貸してもらっている部屋に戻り、時間を潰し、夕食を取り、温泉よりも大きい風呂に一番風呂で入れてもらった。
最初は遠慮したが、どんなに言っても『いいですから」の一点張りで、先に風呂に入らせてもらった。
俺が貸してもらっている部屋に戻りベッドに転がり込むと……金髪の魔族がやってきた。
「こんばんわ、また会ったね」
しかし、俺は当然かの如くパニックを起こしていた。
「え、ちょ……不審者?」
「不審者じゃなくて、今日の昼に会ったでしょ?」
昼は……あ〜あの時の。
「あのときは助けていただいてありがとうございます」
「良いの良いの、というかもう寝るところだった?」
「いや、まだですけど」
「じゃ〜少しでけ、散歩に出かけるからベランダに出て?」
散歩?こんな時間から?何でベランダ?
金髪の魔族の言う通りにベランダに行くと、金髪の魔族から翼が生えてきた。
「魔族って翼も生やすこともできるんですね」
「いや、これは在ったほうが見やすいでしょ?」
確かに、じゃあ無くても飛べるのか。
「じゃあ、お空の旅に出発〜」
そう言いながら、俺の体をホールドし、空高くへと飛び上がった。
「あぁぁぁぁぁ!」
もう絶叫コースターに乗ってる気分だったけど、途中からはちゃんとスピードを下げてくれて、会話のできるレベルにまでになった。
「はぁはぁ、死ぬかと思った」
「手は絶対に離さないから、大丈夫だよ」
「それとこれとでは話が違いません?」
そう言うと、金髪の魔族は何かを考え始めた。
「やっぱり君、私というか、この異世界にに住んでいる人たち皆と距離を置いてるでしょ」
その言葉は俺の心を見透かしているような感覚を覚えた。
「あれかな、君が正式な手順を踏まずにこの世界にやってきて、なおかつ、無償でこんなにいい暮らしをしているせいかな」
実際、人間が人間に向ける、無償の物には、俺は恐怖しか覚えることができない。
たとえそれが、命の恩人からのものだったとしても。
「君、名前は」
「大武拓人です」
「じゃあ拓人君、もう少し、人に何かを頼るということを覚えたほうが良いよ」
「お昼だって、呼べば誰か来たかもしれないのに、呼ぶ気無かったでしょ」
「で、でも誰かに頼ることは迷惑になる気がしますけど」
「拓人君は昔、何かあったのかもしれないけど、それは向こうでの話でしょ?ここは君が住んでいた世界とは別の世界なんだから、また新しく始めようよ」
「本当の大武拓人を」
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