第2話迷子になりました
「ん〜」
我ながら間抜けな声が出てしまった。
後から羞恥心がやってきたしまった。
「起きたら廊下にでろだったっけ」
昨日のお嬢様……名前知らないな、が言っていた通りに体を起こし、廊下に出る。
「おはようございます」
「!?」
昨日のメイドさんか……急に現れないで頂きたい。
「おはようございます、え〜と……俺は今から何処へ?」
「貴方は今からお嬢様の部屋に私と一緒に行っていただきます」
「あ、はい」
そうしてメイドさんの言う通りにお嬢様の部屋へと歩を進めた。
この人も名前知らないんだけど。
「こちらのお部屋です」
メイドさんが指を差していたのは……俺が寝ていた部屋の隣だった。
「近すぎでしょ!」
まさか自分が寝ていた場所がこの家の持ち主の部屋だとは思わなかった。
「お嬢様、失礼しますね」
ノックは無かった……礼儀として良いのかな?
まぁそれほど仲が良いんだろうな。
「ようこそ、え〜と異世界のお人?」
そうか、俺が知らないようにこの人も俺の名前を知らないのか。
「俺の名前は大武拓人って言います、拓人で構いません」
「では、改めて……ようこそ拓人さん」
「こんにちは……お嬢様?」
「そのようには呼ばないでください!」
俺が呼ぶと……耳まで真っ赤にして静止の声が飛んできた。
「え?でもそこのメイドさんだって呼んでません?」
「ア〜ン〜」
そこには今まで生きてみたこと無いような修羅がいた。
「そ、そんなに怒んないでください、ちょっとしたジョークですよジョーク」
アンさんという人は今まででは考えられないほどに笑っていた。
さっきまでの仏頂面は何処へやら。
「一個良いですか?」
「は、はい」
お嬢様は俺がいることを思い出して、更に顔が赤くなっていく。
「アンさんは何でさっきまであんな顔をしていたんですか?」
「何でって……その方が雰囲気出るじゃないですか」
色々考えた俺が馬鹿らしい。
「じゃあ、もう一個……お嬢様の名前は?」
「この人の名前はメアリー・アンダーソンって言いますよ」
まさかのアンさんが答えてきた、メアリーさんていうのか。
「因みに王女です、この国の」
だされていた紅茶を吹き出すところだった。
「ほ、本当ですか?」
つい前のめりに聞いてしまった。
「え、えぇ……といっても第四王位ですけどね」
その時、少し顔が暗くなった気がした。
でも、本人が他には語らないからこれ以上は駄目だな。
「それでも凄いですよ」
「そんなに褒めていただけるものでは無いですよ」
まただ……昔に何かがあったんだろう。
そこからは昨日の夜とさほど変わらない世界の常識を教わった。
そして、この屋敷の案内の時間になった。
「にしてもこのお屋敷大きいですね」
メイドが数十人に部屋も数十部屋……大き過ぎる
日本にあったら駄目な気がする。
「この世界ではこの屋敷は権力者の中では小さい方ですよ」
笑いながら言ってはいるが……これが小さいだと。
異世界怖い。
「でも、部屋が多いからって使える部屋は拓人さんが寝ていた部屋だけですよ」
衝撃の真実である。
メアリーさん曰く他の部屋はメイドや物置として使っているらしい。
「にしてもこの屋敷女性の人しか見ませんね」
何気ない疑問のはずが……二回目の衝撃の真実を迎えてしまう。
「この屋敷には女性しか居ませんよ?」
女性しか居ない?そんな馬鹿な。
一対一だぞ?
「本当ですか?数が偏ってません?」
「あぁ〜そうでした、拓人さんたちの世界とこの世界では男女比が異なります」
「一体四くらいですかね?」
つまりこの世界は女性がすごく多いと……にしても多すぎじゃない?
「あ、今の話で思い出しました」
「この屋敷は女性しか居ないので、男性者の服が無いんですよね」
まぁ、そうなりますよね。
「なので、アンと一緒に買いに行っていただいてもよろしいですか?」
この世界での初めてのお使い(メイド付き)か
「わかりました、行ってきます」
流石にいかないと、ずっとこの土まみれの服では過ごしたくは無いしな。
そう思っていた時期が私にもありました。
アンさんとは逸れ、何故か路地裏にいました。
何で?
幸いにも荷物はアンさんが持っていてくれてるから、服がないとはならないな。
「何してんだ!お前!」
まさに典型的なチンピラ。
しかし違うとこがある……デカい。
目視だが多分四メートル位はあると思う。
「いえ、少し迷ってしまって」
「この辺で迷子……異世界人か」
今の発言でそこまで分かるってもはやエスパーの域だろ。
「ってことはお金、持ってるよね?」
「この世界では元の住人にはお金を渡すって言う文化があるから……寄越せ」
そんな都合のいい文化があってたまるか。
「君、何してるの?」
俺の居た所とは反対の位置に居たのは俺と同じくらいの身長をした、金髪の美少女だった。
何でこんな所にいるんだろう?
「あぁ、誰だお前……!」
何故か俺を脅していたチンピラが唐突に汗を掻き始めた。
「分かったらそこ退いて」
「は、はい!」
凄いな、人間?あんなに早く走れたんだ。
「あ、あの……ありがとうございました」
「良いの良いの、それより君異世界人でしょ」
さっきの雰囲気とは変わり、少女のような雰囲気を醸し出している。
「そういえば、あの大きかったのは人?」
人間だとしたら俺もあんなふうにデカくなりたい。
「あぁ、あれは魔族って言って、魔族は人と違って体を簡単に変えられるからね」
まるでお手本を見せるかの如く、俺と同じ身長だった筈の女性が気づいたら小学生くらいまで小さくなっていた。
「あ、それよりも、俺、気づいたらここに居たんだけど、どうやって帰ったら良いかな?」
「気づいたらここに居たの?」
何かを考えているらしいけど……俺にはさっぱり。
「そう言えば何処に住んでるの?」
「え〜と、メアリーさんのお屋敷に住まわせてもらってるよ」
「あ〜メアリーちゃんの家ね」
なんかメアリーさんを知ってる魔族と出会ったみたいだけど……まぁ良いか。
「メアリーちゃんの家はねぇ、ここをまっすぐ行ったら着くよ」
先程、この女性がやってきた方向を真っすぐ行ったら良いらしい。
「ありがとうございます、何から何まで」
「良いよ良いよ、じゃあ多分いつか会うことになるからその時によろしくね〜」
そうして俺は無事メアリーさんのお屋敷に戻ってくることができた。
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