警察官から逃げたら異世界に到着しました
@kaiha
第1話山から異世界に行けたっけ?
「はぁはぁ……撒けたか?」
俺、大武拓人おおたけたくとは森の中を走っていた。
「はぁはぁ……っ!」
膝へ八つ当たりを与えたところで自分が走り難いだけだが、どうしてもこの気持ちをなにかにぶつけたくなってしまった。
「クソ!何でこうなった……考えても仕方……!」
周りから足音が聞こえ即座に体を隠す。
「この辺に逃げたんですか?」
「はい!その通りです」
スーツを着こなしていた男は、周りに居た警察官から情報を得ていた。
「何か、彼が落としたものはありますか?」
「こちらに用意しております」
警察官のポケットから出てきたのは、俺の手袋とハンカチだった。
「ありがとうございます、この匂いを覚えなさい」
スーツの男の後ろから犬が3匹出てきたが……警察犬だよな。
詰んだかな。
「ワン!ワン!」
「出てこい、そこに居るのは分かっている!」
凄いな〜犬っていうのは。
俺は両手を上げながら隠れていた木から出る。
「ここだ」
「捕まえますか?」
「いや、まだ良い……少し話をしよう」
「良いですよ……一個良いですか」
「何だ?」
「何で俺があなた達に追われているんですか?」
「しかも、唐突に、何故です?」
答えてくれるとは思っていないが……どう出る。
「答えられないが……そうだな強いて言うなら、そう決まったからだ」
「この世界には上に逆らう精神を持った人が警察に居ないんですかね?」
「居たら、そいつは警官ではなく……元警官だ」
それもそうだな。
「聞きたいことは終わりか?」
「えぇ……話は終わりです」
その瞬間、時間を稼いで回復した体力を全て使う勢いで山を駆け上がる。
「逃げたぞ!捕まえろ!」
その言葉を聞いた警察犬が俺を追いかけてきたが、真っ直ぐやって来る動物を避けられない訳がない。
そして、一心不乱に駆け上がり、山の頂上に着いた。
「はぁはぁ、まだ着いてくるか」
後ろを確認しても居るのは警察官のみ……一気に下るか
そうしてギリギリまで警官を待ち、一気に下りた。
走ってるうちに警官を撒いたのか、辺りは静寂に包まれていた。
「はぁはぁ……やっと撒いたぞ〜」
疲れた、とりあえず寝たいがこのままでは、いつやって来るか分からない。
とりあえず、山は下りておく。
「貴方、ボロボロじゃない」
「というか何でこんな時間にそんな格好で山を彷徨いているの?」
目の前には世にも珍しい青色の髪を、背中まで伸ばしていて、モデル顔負の容姿をしている。
こんな人間日本にいたんだな。
「早く逃げて!俺の仲間だと思われますよ」
「何を言ってるの?というか貴方家は?」
この人は俺が誰か知ってて言っているんだろうか?
「良いから、俺は行く」
最悪だ、人に見られてしまった……なんとか逃げないと
しかし、俺の意志とは別に、俺の体は限界を迎えており、そのまま倒れ込んでしまった。
「大丈夫!」
しかし、俺の目に写ったのはぼやけた景色だけだった。
「ここは?」
辺りを見渡しても、家具ばかりというか、ここ電球が無いんだな。
「おはようございます」
「!?」
赤髪のボブショートに先程の人と同じく整った容姿をしているが……なんでメイド服?
というかこの人居つからそこにいたんだ……早く逃げないと。
「お嬢様、お目覚めになられましたよ」
「本当に!」
扉の奥から声が聞こえてくる……お嬢様?
そうして扉が勢いよく開けられ……外れた。
「良かった〜目の前で倒れられるものですからビックリしましたよ」
お嬢様と呼ばれていたのは、あの時遭遇した女性だった。
「え〜と……ここは?」
とりあえず場所の確認しないとな……山の麓にこんな家が在っただなんて。
「ここは、グリュック王国ですよ?」
何処だ?そんな国地球に在ったっけ?
「え〜と……何処ですか?」
「!?」
何でそんな常識知らずみたいな顔をするの?
だってそんな国地球には無かったじゃん……俺が知らないだけで存在するのかな?
「え〜と……貴方の出身地を聞いても良いですか?」
「俺の出身は東京です」
「トウキョウ?」
何でそんな悲しい子を見るような目をするんだろう?
「わかります?日本の首都の東京です」
まぁ〜日本に首都は無いらしいけど……一般的には首都だよな。
「あぁ〜異世界人でしたか」
異世界人……ここ異世界!
「ここってもしかして?」
「そうです……あなた達の居た世界とは違う異世界という場所です!」
なんと俺は山を走っていたら異世界に迷い込んでしまったらしい……どんなラノベかな?
「ここが異世界という事はわかりましたけど……この世界魔王とかそういうの居たりするんですか?」
もし居たら俺が戦うことになったりするのかな……嫌だな〜血とか見たくないな〜
もしかして俺に特別な力が宿っているとか?……無いな。
「魔王はいましたよ」
何で過去形にしたんだろう?
「魔王は居たんですけど……すでに倒されています」
「二百年前……そちらの世界で行くと二十年前ですかね……一人の異世界人とその仲間たちで魔王は倒されました」
ということはこの世界の十年が俺のいた世界の一年か。
そして俺の生まれた時期ぐらいからこの世界では異世界人が認知されていたとは。
「じゃあ……何で俺ここに居るんでしょうかね?」
「何ででしょうかね?」
そこは呼びましたくらい在っても良い気がするけど……俺、山を下りてきたから正式な手順を踏んでいないのか。
「もしかして俺って……」
「言いたいことはわかります……貴方はこの世界でいうとこのバグです」
まぁ正式な手順をせずに、この世界にやってきた人間は多分俺が初なんだろうな。
「俺元の世界に帰らないとだめですかね?」
できることなら帰りたくは無いけど……どうだろう。
「どうでしょうか……多分後二年位帰れませんけど」
「え?」
二年帰れない……何でだろう?
「この世界は十年に一度あなた達の世界から人を呼ぶんですよ、そして昔存在した勇者様の旅路に則って五年ほどこの世界に滞在してもらいます」
「その後に、元の世界に帰るか選択してもらうんですけど」
「けど?」
「貴方がやってきたのはこの五年の間で……後二年は回ることになってるんですよね」
それが終わるまで帰れないってことか……え?でも
「帰る手段はどうなってるんですか?」
「それは女神様の力ですけど?」
この世界女神というのも居るんだ……って違う。
「じゃあその女神様に頼んだら帰れたりしないんですか?」
「できません……女神様はこの五年に一度しか人間の領土に顔を出さないんです」
領土?
「人間の領土ってことは他の領土が在ったりするんですか?」
「えぇ……あります」
「まず、この世界は貴方たちのお菓子にあるドーナッツ?というものに形が似ておりまして、半分が魔族そして、もう半分が我々人間の領土になっております」
魔族なんてものも居るんのか……魔王が居るなら当然か。
「なら、女神様は何処に居るんですか?」
「女神様たちはドーナッツでいう所の真ん中の位置に居りまして、そこに浮いている場所に住んでおられます」
なるほど……わかりやすいな。
「そして、魔族と人間は大きな壁で遮られています」
じゃあ魔族と人間は交流ができないのか。
「しかし、その壁には門が付いており、そこからなら交流することが可能です」
何か心の中を覗かれたような感覚がするな。
「なるほど……大体わかりました」
「では本日はもう遅いので、ごゆっくりお過ごしください」
「もう少しこの世界の常識をお話しますので、起きたら廊下に出てください」
そういってお嬢様は俺が眠っていた場所から出ていった。
「警官に追われていたと思ったら、今度は異世界に飛ばされたか」
我ながら壮絶な人生を送っているな……でも。
「これで警察からは逃げられたのかな?」
そう考えてきたら先程まで眠っていたはずなのに唐突な眠気に襲われ始めた。
「今日はもう寝よう」
今までの疲労を回復するかの如く、俺は意識を手放した。
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