掌編「イッパツ勝負のテレパシー」
頭の中で思い浮かべたことがそのまま相手に伝わる……、便利なコミュニケーション方法だが、しかしデメリットだって当然ある。
つまり推敲ができないのだ。
一発勝負で、意見を相手に届けなければならない……。口に出して伝える意見は、頭の中で考え、まとめ、整理し、口から出すのだが、頭の中で考えたことが、そのまま相手にダイレクトで伝わるとなれば、整理がまったくできない……。
速度は出るけど質が悪くなる……だから毎回、緊張してしまうのだ――
『おはよう』
『あ、
ぱぁん、と、風船が破裂したような衝撃があった。
「落ち着いて」
「――はっ!」
ビンタされて、意識が戻った……おれは、一体、なにを考えて……?
「――っ、すみませんでしたぁ!!」
「あー、いいからいいから。男の子が考えてることなんてだいたい想像つくし、頭の中で一回でも考えたことが全部わたしの脳内に直接届くなら、まあこうなるよねって分かるし……男の子が考えてることなんてこんなものでしょ? まったく予想外じゃないから」
「……え?」
「だから怒ってないよ。気にしないで続けて?」
「は、はい!!」
おれは夢月さんと再び、テレパシーをする――
『この変態絶対殺す』
「いやブチ切れじゃないっすか!!」
女の子の推敲した言葉なんてもう信じないからなあ!!
…了
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