掌編「イッパツ勝負のテレパシー」


 頭の中で思い浮かべたことがそのまま相手に伝わる……、便利なコミュニケーション方法だが、しかしデメリットだって当然ある。

 つまり推敲ができないのだ。

 一発勝負で、意見を相手に届けなければならない……。口に出して伝える意見は、頭の中で考え、まとめ、整理し、口から出すのだが、頭の中で考えたことが、そのまま相手にダイレクトで伝わるとなれば、整理がまったくできない……。

 速度は出るけど質が悪くなる……だから毎回、緊張してしまうのだ――



『おはよう』


『あ、夢月むつきさん、おはよう――胸、じゃなくて、ダメだダメだ考えるな見るなこれが全部伝わ――ってあぁあ伝わってどうしようフォローを弁解を言い訳をあうぁうもうどうしようもないこれあぁあもうどうにでもなれおっ〇いでかいかわいいお尻もいいエロいおっぱ〇とスカート! 肌色えろいえろい唇あぁうあぁうなんこれ今おれはこれなに考えて――』


 ぱぁん、と、風船が破裂したような衝撃があった。



「落ち着いて」


「――はっ!」



 ビンタされて、意識が戻った……おれは、一体、なにを考えて……?


「――っ、すみませんでしたぁ!!」


「あー、いいからいいから。男の子が考えてることなんてだいたい想像つくし、頭の中で一回でも考えたことが全部わたしの脳内に直接届くなら、まあこうなるよねって分かるし……男の子が考えてることなんてこんなものでしょ? まったく予想外じゃないから」


「……え?」


「だから怒ってないよ。気にしないで続けて?」


「は、はい!!」


 おれは夢月さんと再び、テレパシーをする――



『この変態絶対殺す』


「いやブチ切れじゃないっすか!!」



 女の子の推敲した言葉なんてもう信じないからなあ!!




 …了

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