第12話「人殺し」2

 私達は"聖職者の牙"と共に、中間地点の街までやってきました。あちらはすでに依頼の予約があったそうで、すぐに解散となってしまいました。

 去り際、メルスさんの目が私を悲しく見つめていましたが、余計なことを言われずに済んでほっとしています。


「よし、俺達もこの街のギルドに少し顔を出そう。」


 私達はギルドに顔を出すと、何故か応接間に急ぎ通されました。私のことが…バレたのかもしれない。震える手をなんとか誤魔化していると、ギルド長がにこやかに入ってきました。


「どうも。私はこの街のギルド長であるダクマと申します。聖王都のギルド長から連絡があり、会う前に旅立ってしまって決議の結果を伝えられなかったと」


 私達はなんのことかさっぱりでした。


「君達"鋼鉄の繋がり"のパーティを、上級冒険者に認定する」


「「「「えっ」」」」


 上級冒険者、それはかつて存在した勇者のクラスの二つ下です。勇者の下が特級冒険者、下が上級冒険者。その下は中級などですが、圧倒的な差があるのです。


「我らは中級なので、おそらく人違い。パーティ違いかと」


「そ、そうよ。この前上級にあたるアンデットドラゴン倒したのだって弱っていたからだし…」


 魔王軍の幹部と戦いを繰り広げ、歴史書に残る熟練パーティは特級冒険者です。上級冒険者もギルドからの危険度の高い依頼を100以上クリアした者達で、生き残ったパーティしかなれません。。組んで一年程度で中級に上り詰めたとはいえ、中級など数えられないほどいます。つまり、ほぼルーキーな私達が上級冒険者にはなれるわけがないので


「何かの間違いでは?」


 と、リーダーのルーカスさんが言うのも当然です。


「シッ…片目のアンデットドラゴン討伐の話は内密にと言われたはずだ。実はな、あのアンデットドラゴンは残った骨の調べによると異常種。細胞が無限に増え、あの単体で別のアンデットドラゴンを産み出す可能性があったようなのだ。」


 私達は血の気が引きました。あれだけ準備して、油断なく不意打ちでしっかりと倒せたものの、同じようなアンデットドラゴンが増えていたらと思うと…きっと私達だけでなく多くの人々が死んでいた。


「は…早めに倒せてよかったな…」


「あ…だから私が浄化しても最後まで息があったのですね…」


 私の浄化魔法が甘かったのではなく、あのアンデットドラゴンが異常だったのだと知って少し安心しました。しかし、そんな存在でもしっかりと浄化しなければ回復役としても聖職者としても未熟者です。


「つまり、そんな危険な奴を討伐した君らはもはや中級ではない。その時の戦術も報告にあがっていたから、これから異常種アンデットドラゴン討伐の基本戦術として拡められていくことになる。君らは今日これより上級冒険者だ。」


 渡された純銀の指輪は上級冒険者の証明です。私達は呆然としたままギルドの休憩所に戻ってきました。全員左手中指につけた純銀指輪が、現実だと言っています。


「上級…なっちまったな。一年生が。」


「光栄なことではある。が、我らの身に余るものでは…」


「故郷に自慢できるけど、これってあれよね」


「断れない上級依頼が飛んでくるってことだと思います。」


「……と、とりあえず祝いだな!酒場に行こう!」


「「「さんせーい!」」」


 それはそれとして、実力を認められたことは嬉しいのでお祝いすることにしました。


 そんな私達は、きっと悪者から見れば羽振りの良いカモに見えたのでしょう。

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