三日後もよろしく
太宰の住むアパートの一室。カーテンの隙間から朝日が射し込んでいた。
「……ん?」
敦が布団の中、自分の携帯でカレンダーを見ていると、三日後の日付でリマインダーが設定されている。曰く『可燃ごみの日』。しかし自分はそれを設定した覚えはない。しかも敦の住む社員寮の可燃ごみの日は昨日だった。なんだろうと思っていると隣で太宰が怠そうにのっそり体を起こす。「おはよう敦君」と欠伸を噛み殺しながら云うので、敦もおはようを返す。それから、この人に訊けば分かるんじゃないか? と敦は隣の太宰に携帯の画面を見せた。
「ねえ太宰さん。この『可燃ごみの日』ってなんですかね。僕こんなの設定した覚えないのに」
「ああ、それは私がやったのだよ」
「なんで……」
「私よくごみ出しの日を忘れちゃうんだよね~。敦君なら毎日のようにうちに来てくれるし、教えてくれると思って」
其れを聞いて敦は、ああ、と納得する。そこではたと気づく。
「……って僕、この携帯にはパスコード設定してるはずなんですけど」
いつの間にどうやってこのリマインダーを設定したのか。訊けば太宰はうっすら微笑みながら敦の頬を撫ぜた。
「君の事なら何でも知ってるよ?」
どきりと敦の胸が高鳴る。
「敦君ってほんとに一途なんだね。その携帯でえっちな動画サイトを見た痕跡もない」
「なッ」
敦の顔が真っ赤に染まる。其れを見て太宰は愉しげに笑う。
「ってわけで敦く~ん。私お腹空いたけど腰が痛いから何か作って~」
ごろりとまた蒲団に寝転がる太宰に、敵わないなぁ、と敦は溜息をついて衣服を身に着け始める。昨夜一緒に買い物に行ったので、冷蔵庫の中身はだいたい把握している。そういえば、敦がこの部屋を訪れるようになって最初に驚いたのは、冷蔵庫にビールと蟹缶くらいしか入っていなかったことだ。「自炊しないんですか」と訊けば「私、食にあんまり頓着しないんだよね」と返ってきたのを思い出す。
「敦君の作る味噌汁、美味しいからまた飲みたいな」
「はいはい、ちょっと待っててくださいね」
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