第20話 試験の幕が開ける

さてさて、こちらは勇者学院

はるか昔から続く伝統の……という訳ではなく、つい最近併合してできた学院である


元々、魔法使いを育成するための魔道学院と武闘派が集う武装学園があったのだが、それらをまとめればより優れた生徒の才能を引き出せる!と新しい校長が言い始め


反対する連中を全力で説得し、この勇者学院が作り上げられた。と言う昔話?割と最近の話がある


そんな学院の先生にして、今回は警備を担当させられていたオズワル氏は今日も退屈すぎて暇していた。

そもそもこの学院を襲撃するとか自ら死ぬつもりでも無ければやるわけが無いのだ


それに今は入学試験の週間故に、各国の素晴らしい生徒たちが集っている。

そんな現場に攻撃を仕掛けてくるやつなんて……精々、頭のとち狂った馬鹿野郎ぐらいだろう……


そんな彼が良さそうな木陰で、くつろぎつつ本を読んでいた時だった。


突然、”バッゴーン”と言う轟音が鳴り響き、森が少し揺れた。

彼は慌てて、周囲を警戒する。今の衝撃的におそらく途方もない質量の物体、もしくは速度のものが飛んできたのだろうと彼は推測し

それが敵襲の可能性を考慮して、姿勢を低くしながら当たりを伺う


すると


「……まさかですわ……止め方を誰も考えていなかったとは……ある意味わたくし達が生きているのは奇跡ですわね……」


「いやいや、マナで防御はしましたよぅ……でもなんか思ってたより速度の方が強かったみたいで……」


「申し訳程度に私が止めようとしたのですが……」


「あはは!まぁ無事だったし良いんじゃねぇの?……そんなことよりここどこだよ?」


4人の女性の声がする。しかし何かを破壊するような敵意は感じられない


よかった……と思いつつ彼は慎重に近寄る。

すると


「……さっきからそこで見ているそこのお方……変態ですの?」


まぁもちろん、鑑定眼を持っているレフィアにはバレバレだったようで


彼は仕方なく立ち上がり、名乗りあげる。


「……俺の名はオズワル……この勇者学院の先生をしている……君たちは?」


その言葉に


「お!先生かぁ……ちょーどいいや、学院の行き方が分かんなくて探してたんだよね……教えてくれるよねぇ?」


そう言って近寄ってくる。

俺は少し離れるようにしつつ、答える


「まぁ教えてやってもいいが……いやそもそもさっきの轟音は君たちの物か?」


「?あ〜あれねぇ……ちょいとミスったんだよね……一応、生態系とかは破壊してないから大丈夫!」

(多分何割か生態系を変えてる気がするけどまぁ知ったことじゃないし)


いや何が大丈夫なのか。俺は疑問を抱きつつも彼女らからは一切敵意を感じなかったことを信じて案内をする。


しばらく歩く間、彼女らの行動を黙って見ていると


「うーん貴方のその目線、微妙に気持ち悪くてかないませんわ……早急にやめていただけるかしら?」


ジロジロ見ているのがバレたのか、すっごい冷たい視線をくらう。


俺は、俺ってそんなに気持ち悪い?と思いながら少し肩を落としつつ歩いてゆく



◇◇◇◇◇



「ほぇぇーここが勇者学院かぁ……テンションあがるなぁ!」


私はそう言いながら、門をくぐろうとして弾かれる。

?もう一度ぶつかるが弾かれる。


すると

『こちらに自分の身分証、またはそれに準ずるものを入れてください』


そんなメッセージとともに鳥がやってくる。

美味そう、バーベキューにしてあげたい


そんな目線を向けると、ビクッとしたような顔をして逃げていった


ちなみに私が入れたのはギルドカード


ノエルも同じくギルドカード、レフィアは貴族用の確認カード

フォールもギルドカードを渡す


すると、何やら手に印のようなものが付き

『許可します』

とだけアナウンスがあった。


私たちはそうして、踏み入ったのだが



──────「おいおいなんだあのみすぼらしい格好の奴らは……」


──────「ほんとねぇ……ここが勇者学院って知ってるのかしら?」


異世界系特有のテンプレが発生する。まぁそんなことはどうでも良くて私はガン無視する。

同じく、ノエルもレフィアもガン無視する


唯一、フォールだけが睨み返していたがそれもすぐにやめた


◇◇◇◇


「では皆様……こちらの試験を受けて頂きます……その前に、こちらのカードをどうぞ」


これが試験カード?と私は裏返したり叩いたりしてみる。多分、材質は普通のものだ


・最初の試験……『攻撃のダメージを図る装置にダメージを与え…そのダメージを数値化してポイントをつける』


ふーんと説明を聴きながら思う。

たぶんほかの3人も同様に半分ぐらい聞き流していた。


「それでは……最初の試験……開始!」


私たちの他にも多数の受験者が並んでおり、それらの人達が色めきたち、あるものは興奮し

またあるものは己と向き合いながら攻撃を当ててゆく。


私たちが攻撃をするために列に並んでいると、後ろから話しかけられる


「どきなさい!あなた達如き下民は私の前から消え失せるべきだと思うわ!」


その声に


「あらあら相変わらず態度が悪いし、それに並び順を守れないなんて貴族としてなっていないとわたくしは思いますが?」


レフィアが滅茶苦茶皮肉を言う。その煽りに対してその赤髪の女性は


「───っ!……やっぱりあんたも来てたのね……レフィアいえ、ブルーム家!」


「前々から言っていたはずですわ……わたくしは今回の試験を受けるつもりだと……聞いていませんでしたの?……御三家が一つ『リング=セピア』殿?」


「くうぅ!あなたといると虫唾が走りますわ!……もういいです!行きましょう!カイン、アベル!」


「はっ!」「仰せのままに」


そう言って2人の男を引き連れて去っていく。


「全く……順番待ちもできない貴族なんて人として恥ずべきですわ」


そんなことをやっていると、どうやら私たちの番が来たようだ。


どうやら先程のセピアとかいう人はもう試験を終えていたのか、後ろから後方彼氏面で見ている。


「今回のターゲットの的にダメージをいくつ与えたかで得点が変化します。最大で100。

ちなみに今のところ最高得点が『リング=セピア』様の91点でございますので……それを頑張って超えてくださいませ……では」


そう言って試験官がフラッグを下ろす。

20秒間でいくつダメージを与えたかで特典が変わるのだが


隣の人が杖を構えて、何かを呟き始める


「……炎の精霊よ─我が手に集い─その力を我がものとせよ!……炎よ─我が─制約─それらを以て─敵を撃ち抜け!……『火炎球ファイヤボール』!」


バーンという音がして、手のひらサイズの炎の玉がゆっくりと飛んでいく。

それが当たった時に、的に数値が表示される


「モブル=カイ……記録、『38点』……!」


いや、しょぼ!と私が口輪滑らせかけた時


ぉぉー!という声が会場の試験者たちから届く。


遠くの方で誰かが


「……すごいな彼、詠唱を9小節で唱えたぞ!?」


「まぁまだ伸びしろがあるな……!」



──────ん?待てよなんかレベルがひくくね?


次の人がまた出てきたことで、それをもってして確認しようと私は考える


「次の方どうぞ!……」


「俺の名は『ボンディ=レバー』です!……見せてやりますよ!……俺の力を……」


「雷よ─その身に宿し─雷華の─怒りを放て─『雷槍ライトニングランス』!

!」


バリバリという音がして、雷の槍が高速で的にあたる。


「記録、70点!……素晴らしいです」


ぉぉーという歓声が響き渡る。その様子を見ていて私は疑問が浮かび上がる。


そもそも、私は魔法が使えないのだがノエルやレフィアは全然唱えてすらいないのになんで彼らは唱えているのか?と


すると、後ろからノエルが


「あの……そもそも無詠唱で魔法を使えるのはごく僅かなんですよ……だからこの場に2人もいるのが普通はおかしいんですぅ……」














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