第17話……世は情けなどないと言うのに

俺は後ろから現れた女性に驚きつつもなんとか状況を建て直ひゃああ!!!


俺の目の前スレスレをチェーンソーが掠める。髪の毛がはらりと削られ、その勢いのままチェーンソーは後ろの岩場を破壊する


俺は冷静に分析しようと距離をとるが


「おいおいおいおい!逃げてんじゃねぇぞ!?」


一瞬で追いつかれる。やばい、この人


何より、見た目は明らかに地味系な女性から繰り出される言葉が怖すぎて

俺は久しぶりに女性は怖いものだった事を思い出す


異世界に来てからハーレムを作ったり、冒険者と心を通わせて仲良くなったりしていたことで

俺は自分が強くなったと錯覚していたのかもしれない。そう思わせてくれるほどにこの人がヤバい。


さっきからチェーンソーが当たる度、その周囲が消し飛んでる。

当たったらと思うと俺はゾッとする。間違いなくあれは即死レベルの技だ……それをあんな軽々と放ってくる……やべぇ!


俺はリボルバーを二丁引き抜き、追いかけてくる女に連射する。

小気味の良い音がして、体を魔力の弾丸が穴だらけにする


「やったか!?」


言ってから気がついた。それは死亡フラグだ


案の定、全く無傷の様相でそいつはチェーンソーを構えて襲いかかってくる。

その様子を見て、俺は13日の〇曜日に登場するジェイ〇ンに追いかけられる人の気持ちがよーく分かった


「しねぇ!しねぇ!……な、なんで死なねぇんだよ!!」


もう既にひたすら肉体に弾丸が炸裂しているというのに

ドラゴンでさえ、この銃弾の雨からは逃れられないというのに


チェーンソー片手に振り回して追いかけてくるそいつは止まらなかった。


そして、その攻撃がついに俺を捉えた


「あっ……」


森を抜けようとした時、俺は木の根っこに躓く。それは何時もなら何ら問題がない事だが、その一瞬が命取りになる


俺は目の前に迫るチェーンソーを見て

(あ、死んだわ……まじか)


そう思ったが……その瞬間、後ろから来たモンスターによってその攻撃は中断される


「あらあら……大丈夫なの?ベルグル?……あんたともあろう奴がどうして近接戦なんかを?」


俺はその声にほっとして振り向く。

そこには緑髪の美女、俺の異世界での仲間の1人、モンスターテイマーのカミルがいた


カミルの操るモンスターの攻撃で、どうやらあの女は食い殺されたようだ。

俺は、カミルに”ありがとう”と伝えて事の顛末を語り始めようと、息を吸い込んだところで


「───あ?なんかまた増えたが……?まぁいいか」


食い殺したはずの女が普通に出てきた。

それもモンスターの腹を割いて


唖然としている俺たちを見て、そいつはニヤリと笑い


「……さてと……何秒で死にたい?」


そう明らかに見た目からは出てこないであろう言葉をぶん投げられる

俺が目配せをすると、カミルが


「残念だけど時間切れよ!……死になさい!」


そう言いながら周囲四方八方からいっせいに仕込んでいた魔物を呼び出して襲いかからせる。

──────これは決まった!


俺がそう思った瞬間


「はぁ……その程度であたしを止められるとでも?」


そいつはあろう事かチェーンソーを地面に刺し、それにもたれかかって目を閉じ始めた


「?!バカにしてるの!私の魔物を舐めるんじゃ無いわよ!」


確かに、カミルが呼び出した魔物はかなり小型のものばかりだ。しかしその強さは普通に並の冒険者程度なら為す術なく殺せる物ばかりだ

俺は念の為、リボルバーを構えて撃とうとするが


ザクザクぐしゃあ……!


音がしてそのからだから血が吹き出し……?あれ?……吹き出してない


体に噛み付かれたまま、それら。一体ずつからだから引き剥がして

チェーンソーの刃に当てて行く。


その屈辱的な行動にブチ切れたカミルが


「もういい!死ねぇ!」


そう言って呼び出したのは猛毒炎龍『ポイズニアス』

彼女の切り札にして、俺とのコンビ技を使う合図。


俺は即座に取り出した武器を構え、つぶやく


「ナパームって知ってる?」


俺はこいつとの戦いで確信した。こいつは間違いなくゾンビとか、不死身とかの類だ。

しかし古今東西いつだってゾンビものの弱点はだ。


カミルの指示を受けた『ポイズニアス』が毒の液体を放つ。

それに合わせて俺は炎の弾丸を発射する


果たして


ボン!ボボボボボボボカン!ジュワアア!!


肉が焼ける心地よい臭いと、倒れる女性


俺たちの作戦は見事に命中した。やった、やはりゾンビ系の能力だったか

そう俺たちが安堵してハイタッチを交わした瞬間であった


「──────なるほど?毒液を浴びせて着火して焼き殺す……ふーん見た目よりかなり理知的な戦い方だねぇ……まぁ……」


そいつは炎を振り払いながら、目を赤く光らせてゆっくりと立ち上がる。


「……あたしを倒すことはできなかったね」


俺たちが唖然としていると


「あ〜ついでに”これ”お返しするね……『解放リベレイト』」


そう言ってチェーンソーから放たれた斬撃は炎を纏っていた。


「な!?」


俺たちが慌てて反応するよりも早く、確実に俺を葬り去るつもりなのか!


俺は慌てて避ける。

途端、後ろでごうごうと言う音がして、木々が燃える。

しかし、その炎をチェーンソーから放たれた風の刃が消し去る。


「……さて、あと何回良けれるのかなぁ?!」











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