第2章 勇者学院入学編

第15話 その女性、つよつよお嬢様

「学校?……それって」


私が尋ねると、ノエルはにっこりと笑いながら

「そうです!勇者を目指す学校……この国で1番の学校です!」


(嫌だなぁ……わざわざ異世界まで来て学校とか)

私はそう考えてノエルに自分は行く気がないよ。と告げる


「え〜!なんでですかぁ?!……まぁでも試験ぐらい一緒に受けませんか?……勿論私の夢なんですよ!……分かりますよね?ね?」

(そこまで言うか……?まぁある意味この世界について知るためのチャンスかもしれない)


「……わかった、行くよ……で?その試験は何時どこで何をやるんだい?」


すると、カバンをゴソゴソとノエルは漁りながら一枚の紙切れを手渡した

(ふむふむ、ミーティア勇者学院?……)


その時、遠くの方で悲鳴が聞こえる


「おっと敵か?……まぁ行ってみるか」


私達がそこに向かうと既に


「うっ……これはひどい有様ですね……そこの女性、大丈夫なんですか?」


モンスターの亡骸に囲まれながら、佇む一人の女性がいた

そばには3人ほど気絶している人がいるが


「?ああ私に言っているんですの?……私は見ての通りぜーんぜんヘッチャラですわ……むしろピンピンしてますの」


確かに、服に傷1つ無いし何より


「そのでっかい棍棒は一体?」


場違いな程にでかい棍棒を片手で担いでいた。

少なくとも、その見た目はお嬢様って感じの人が持つべきものでは無い


すると

「あらあらしかし皆様方はずーいぶんお強そうな感じですのね……もし良かったらしばらくの間護衛を頼んでも宜しくて?」


「さ、流石にお金とかって……」

(ノエル、あなた思ってたより図太いんだね)


「あらあらもちろん支払い致しますわ!このわたくし『ブルーム=レフィア』の名に誓って!」

(ブルーム……?

……それにしてもかなりのお嬢様なのにそういった人特有の面倒くささがない……)


「ぶ、ブルーム……?!あの名家ブルーム家の方ですか!?……そそそそんな……お、恐れ入りますう!」


私は、そんなにすごい人なの?と尋ねる

珍しく縮こまるノエルを見るのは割と新鮮だったのだが


「その通りですわ……まぁわたくしはあまり父上とは気が合わず……おっと失礼致しましたわ!……家には家なりの事情がございますのよ」


ノエルの話によると、ブルーム家はブルーム伯爵と言う人物が作った一族で

有り得ないほどの武力と財力を持ちながら、決して領民とは相容れない……言ってしまえば

かなりのステレオタイプな人らしい。


「説明ご苦労さまですわ……もしかして貴方は私のことを……いえブルーム家を知らないんですの?」


私はうん、と頷く。続けて


「私は異世界転移してきたからね」


と伝える。するとその言葉を聞いて

レフィアさんは

「……なんと!つまりはあの試験を越えられた方ですの!?……素晴らしいですわぁ!…………もしよろしければの話なのですが」


そう言うと、レフィア嬢は


?……もちろん学費も含めて私が出しますので」


そう提案される。

ノエルは縮こまりすぎて最早プルプル震えているが


「?なにか裏があるとかじゃないよね?」

(この世にはタダより怖いものは無い……からね)


私のその言葉に

「もちろん裏はありますわ!……わたくしは旅をしたいのですが……親がどうしても学院に通え……友達を作れ……とうるさくて仕方ありませんの」


再び息継ぎをして


「そこでさっさと卒業して冒険に行く為にわたくしはなるべく強いお方と知り合っておこうと思いまして……ああ勿論学院の方にもお強い方はいらっしゃると思いますわ……ですが」


(なるほど、つまりさっさと親の手を離れたいのかな?)


「貴女方の秘めたる力に比べれば学院の者など所詮はただのザコですわ……何故なら私の目は『鑑定者』の目ですの」


そう言って目をキラリと輝かせる。

確かに彼女の瞳には目盛のような不思議な模様が展開されていた

その目を見ているだけで何故か自分の全てを見通されているようなそんな複雑な気持ちになる


「わ、私はおじゃま……ですよね……」


ノエルがそう言うと


「?なーにをおっしゃいますの?わたくしはと言いましたので……当然そちらの方の分もお支払い致しますわ……こう見えてわたくし商売もしていますので財には困った試しがございませんの!」


「……ええ?!いいのですか……私はそこまで自分を強いとは……」

(ノエルのその謙遜は確かに分かるけど)


私は知っている。少なくとも魔力がEXの人をこの道中で見かけた試しがないということを


そもそも、スサノオを現界させるために魔力を注ぐだけでそれを可能にするという人のどこが普通なのか


私はため息をつきながらノエルに


「まぁせっかくなんだし、援助受けといたら?……それで試験は免除されるの?」


「試験……ですわね……あれは金ではどうすることも出来ませんの……ですのでわたくしも受けなくてはなりませんのよ……それに」


それに?なんだろうか


「あの学院の試験は理不尽なモノをよく行うと聞いていますの……それ故にわたくしは万全を期すために仲間を雇ったのですが……」


(あ〜この3人の人はそれか)


「高い金を払って雇ったくせにぜーんぜん強くなかったんですの……たかが『レジェンドウルフ』如きに叩きのめされて……全く鍛錬が足りて無さすぎるのですわ」


ちなみにレジェンドウルフとは、並の冒険者なら一瞬で殺されてしまうレベルの強敵であり

速度、強度、魔力耐性などがほかの魔物よりも強い魔物である


参考までに、こいつに挑んだほかの転移者3人は普通に苦戦したし

チート能力を持っていても下手したら殺されかねない化け物なのだが


それを大して強くないとこの女性は言ったわけで


(流石名家のお嬢様……ってことか)





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