第12話 おまけの話

綺麗な死に様だと私が思ったところで


「──────おいこら!私に対しての誤りとか無いんですか?!」


消えゆくスサノオをノエルが無理やり叩き起す。

(ええ?……いい感じに纏まったのに……?)


私がそう思っていると


「……せっかくいい感じに去れると思ったのにな……まさか消えかける神格を呼び起こしてくるとか君どんだけ……」


あ、帰ってきた。

スサノオはちょいと決まりが悪そうなばつの悪い顔をしていたが


「まずは私に対する謝罪!それから私の母親を間接的に殺したことに対する謝罪!あとは!!」


その言葉にスサノオは”はっ”と息を飲む。

確かに彼女の後ろには一人の女性がたっていたし

それをスサノオがわざと見ていないのも気がついていたが

(まあ親子って色々あるよね……)


と家庭の事情に首を突っ込むべきではないと考えて引き下がっていたと言うのに


「お、おう……げ、元気か……?クシナ……ぐふぅう?!」


(すっごい見事なストレートアッパー……私でなきゃ見逃しちゃうね)


女性は思っきりスサノオの消えかけの体をぶん殴る。

そのまま倒れ込むスサノオをヘッドロックして


「───手前何今更父親ずらしてやがるんだ?……まさか私のことをわざと見ていなかったとか……んなわけないよ……ね?……ね?」


すっと目を逸らすスサノオ

さらにきつくロックをかける女性


それをいいぞーやっちゃえ!と応援しているノエルという最早カオス。

加えてそこに先程逃げた村長がボウガンをもって飛び込んできたのだからもう……


「……情報過多!」


私は思い切り地面を叩き、その場を仕切り直す


「まずは父を助けて頂きありがとうございました……私の名前は……クシナダと申します」


(クシナダ?……それは確かスサノオの妻だったはずでは?)


私は自分の知っている情報と合わないその言葉に疑問を抱きつつ


「へぇ?……クシナダさんかぁ……それでなんでヘッドロックをかけているんですか?」


そう聞くと


「ええ、このバカ親に少し痛い目を見てもらおうかと……100年近く帰ってこないと思ったら何やってんだ!このバカ野郎め!」


(あ、見た目と完全に逆の性格の人だこれ)


「ギブ!ギブ!頼むから少し話させて……あ……やばい魔力が……ってアダだだだだ!」


ノエルがにっこりと笑って魔力を押し付ける。

多分その表情から察するに、大丈夫生かしておきますよ

と言う顔をしていた。

何アレ怖い


「貴様ら!私のことをコケにするなど!許さん許さんぞぉ!」


それはそれとして、今感動の再会をしている2人を邪魔するとか君どんだけ頭がおかしいんだ?


私はため息をつきながら村長を遠くの方に殴り飛ばす。


すると、その体が変質し始めてみるみるうちに1匹の大蛇へと変化する


「貴様なんぞ!私が飲み込んでやるわ!」


そう言いながらリツをぱっくりと飲み込む。

しかし


「あのさ〜その程度で私を殺せるとでも?」


私はそう言いながら飲み込まれた腹の中でチェーンソーをふかす


リツは知らなかったのだが、村長は賢者の石の丸薬(特別仕様)

を先程食べており、その効果で1番自分が恐ろしいと思う存在

……即ち八岐大蛇もとい大蛇へと変化したのだ。


しかし、その村長は知らなかった。リツという人間がいかにやべえ奴であるかを


飲み込んだ途端にお腹の調子が悪くなったような感じがして、慌てて吐き出そうとする村長


しかし

「────ヒャッハー新鮮な的のご登場だなぁ!?……おいおい肉体の内側を晒すとかてめぇまじでアホだろ?」


大蛇の腹を割きながらリツが飛び出す。

──────この間実に20秒ほど


当然腹を割かれてその痛みに呻きもがく村長を見ながら


「お前は人じゃねえ。だから……解放リベレイト!」


大蛇の腹の内壁、即ち”龍の肉体”をチェーンソーの中に貯めて

その力を纏った一振を送り付ける


すると、まるで油に水を入れたようにバゴン!という音を立てて村長は爆散する

(?!まじかそうなるのか)


古来より龍の弱点は別の龍、もしくは自分と同じだけの力を持つ存在

だと言われている。


チェーンソーは周囲のマテリアルを蓄積する。そうして蓄積したもの……即ち、龍の血肉

それをぶつけられたのだ、それは当然即死な訳だ



◇◇◇◇◇◇



──────「おや?お帰りなさいですね……リツさん……スサノオ様が何か話したいそうです」


「お、おう……ちいと話したいことがあってな……スマンが他の奴ら少し席を外してくれると助かる……」


(私と戦ってた時よりもさらに肉体がボロボロになってる……)


そんな体の破損など、どうでもいいとばかりにスサノオは話し始める


「……お前はこの世界のことどう思う?……奇妙だと思ったことは無いか?」


私は心当たりがありすぎて考えがまとまらず、とりあえず頷く


「多分お前のような、異世界人にとってこの世界は何かがおかしいというのは分かるだろう?……それはな」


「それは?」


スサノオは息を吸い込み、その言葉を告げる


「───順序がおかしいと思っていないか?」


私は確かに。と考える

そもそも、異世界に呼び出された時から色々とおかしかった。


まず第一に、異世界に呼び出された私たちの扱いが明らかに客人に対するそれではなかった

(例えるなら、呼び出してやってる……という上から目線のようなそれ)


二つ目に、スサノオと八岐大蛇。そしてクシナダ

本来私が知っている神話がぐちゃぐちゃになっている点

……八岐大蛇が暴れてクシナダを助けるためにスサノオが討伐し

そのしっぽから手に入れたのが草薙(天叢雲剣)なのに今回は真逆だ。


何故かスサノオが八岐大蛇になって、それから神に戻り、そして天叢雲剣を振るう。

その後に、クシナダに怒られる


……おかしすぎる。


私がそう考えているのを読んだのか、スサノオは口を開く


「そうだ。おかしいだろ?……何故ならこの世界は全ての因果律が乱れてる。……例えるなら1度作った酒を水で薄めてその後別のお酒のボトルの中に半々に入れて……」


(どうしてその例えを選んだ?!)


「おっと貴様は未成年だったな」


「まぁつまるところ…………違うか?……」


(確かに全てが逆転しているのか?……それにこの世界では言及していなかったけどお金が全てあちらの世界と同じだ……百円玉もあったし1000円札もあった)


私が深く考え始めたのを見て、スサノオはさらに衝撃の一言を付け足す


「───そもそもこの世界は異世界だが異世界じゃねえ。お前が生きていたであろう日本、いや地球と辿だったわけだ。」


(……並行世界?)


「だけど、誰だか知らんがこの世界の法則をガンガンにねじ曲げた奴がいる

……そいつのせいでこの世界は本来歩むはずだった形から外れてしまっている……それこそがお前が感じた違和感の正体だ」


つまり、この世界は異世界であり元の世界でもある?ということか


それなら確かにメートルがあって、秒数があって、お金の単位が同じなのも納得か


(それにおそらく現代との違いは魔法だろうか?それともスキル?)


「まぁ俺も詳しいことはわからん。なんせ大体のことは姉が全部終わらせやがったからな」


「姉?」

私はそう聞き返す。確かそこのポジションは天照大神……


でも因果が逆転しているなら天照大神ではなくて月読命?

私は必死に日本昔ばなし及び、古事記と日本書紀を思い出す


そんなことを話している時、突然世界にアナウンスが流れる。



『『ピンポンパンポーン!皆さん!この世界に新しいが追加されますよ!……それでは3、2、1、キュー!』』


耳の中でそんな声が響く。

見ると他の人も同様なようだ


「?!何ですかこれ……ステータス?」


私は目の前にステータス表示というものが追加されたことを見つけて確認する


『ステータスについて

ステータスは皆様の身体能力、魔法技術、戦闘能力や祝福、及びスキルなどの可視化のために設定されました。

数値は上からS、A、B、C、D、E、Fと続き、基本的に数値が高いほどステータスは上の記号になります


なお、唯一の例外がEXエクストラ……まさに例外。こちらのステータスをお持ちの方は非常に稀有な能力を持つものとして認識してもらって構いません……


もちろん鍛えれば数値は上がりますのでそこはご安心を……それではみな様の人生に幸あれ!』


ピンポンパンポーン


「……?こんなことがあるのか?……ステータスなんて言う概念が追加された……だと!?……あれは確か廃止したはずでは……」


スサノオが焦りながらそう言っているのを見ながら私は自分のステータスを開く


(『体力』ってのはつまり自分のHPの総量?……こっちの『攻撃力』は物理的に与えるダメージか……なら『魔力』は恐らく魔法に関する攻撃のダメージになるのか?)


私はたった3つしかないステータスに驚きつつもうひとつのことを考える


「ノエル?君はステータスなんてものを知っているかい?」


私がそう聞くには理由があった。

(もしノエルが知らなかったらそれは間違いなく異世界人がなにかしたことになるはず)


果たして


「?知らないですよ……そもそも人の身体能力とかを可視化出来るようにしてなんになるんですか?

そんなものをすればただの格差を広げるだけですよ……見えない方が相手に対する尊敬とか、自分の先入観を捨てれるのに……」


ノエルが案外まともなことを言っていることに驚きつつ、やはりな。


と私は確信する










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