真夜中の復讐者

星雷はやと

真夜中の復讐者



「な、なんでこんなことを……」


 深夜のキッチン。恋人は私の手にする物を見ると、顔を青ざめて後退した。如何やら私の行動を理解出来ないようだ。


「ふふふ……『なんで』? そんなの貴方が一番良く知っているでしょう?」

「……わっ!? ……ま、まさか!」


 私は彼との距離を踊るように、ゆっくり詰める。すると彼はダイニングチェアーにぶつかり、床へと倒れた。幼子に言い聞かせれば、瞳を見開いた。全く愚かで可愛らしく人だ。


「嫌がる私を唆したのは何処の誰だっけ?」

「……ぼ、僕が悪かったから!! お願いだから止めてくれ!! 許してくれ!!」


 この場の主導権は私にある。優位な立場に自然と口角が上がる。しかし彼を見下ろす、私の目線は冷ややかであろう。彼の怯える表情がそれを物語っている。


 私を大人しく聞き分けの良い女だと侮った貴方が悪い。

 

 罪には罰を与えるべきだ。


「さあ、報いを受けなさい」

「や、やめてくれ!!」


 私は許しを請う彼を無視し、容赦なく手にある物を彼の口に入れた。





「うぅ……真夜中にカツカレーだなんて……美味しすぎる!」

「チーズもあるわよ?」


 ダイニングテーブルの席に着き、涙を流しながらカツカレーを食す彼。その姿を目にすると気分が最高潮に良い。うっとりと悪魔のように、彼に甘い誘惑を口にする。


「うっ! そんなっ! 罪過ぎる……」

「でも美味しいでしょう?」


 戸惑うが、彼が次に口にする言葉は分かっている。私は目を細めた。


「……うん、おかわり」


 彼の返事に気を良くした私は、ご機嫌でカツカレーを盛りつけた。勿論、チーズのトッピングを忘れずに乗せた。


 全てはダイエット中の私に、ケーキを沢山食べさせた貴方が悪い。


 お気に入りのワンピースが窮屈に感じるようになってしまったのだ。責任を取ってもらわなければならない。目には目を歯には歯を、である。


 翌日、体重計に乗った彼が悲鳴を上げたが、私は微笑み珈琲を飲んだ。

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真夜中の復讐者 星雷はやと @hosirai-hayato

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