第7話 ルミナーラの森 -1-

 とても深い闇に包まれたこの森は、太陽が昇る昼になってもその様相は決して変わらず、暗闇のままである。


 闇に包まれたこの森には、美しく光る発光生命体ルミナニズムが存在している。発光生命体ルミナニズムの中でも、ほたる月光蝶げっこうちょうなどは、この森以外にも生息していて、その存在は広く認知されている。


「綺麗……」


 ルミナーラの森へ入ったルシアンは、発光生命体ルミナニズムの一つである"光陽花こうようさい"を見て、そう呟いた。

 ルミナーラの森に自生する光る花、その名も光陽花こうようさい。花の中でも特別明るく発光しており、太陽光に近い光を発せるこの植物は、ルミナーラの森以外ではまず見られないだろう。


 世界は広い、そして美しい。


 この旅は、そんな美しい世界を巡る旅でもあるのかもしれない。ヴァレリアはそう感じた。

 それでも、目的はこの美しい光景を見ることではない。この森を抜けた先にあるセレナーデ湖、その湖に伝わる伝承を確かめることにある。

 何の伝承かは分からない、それでも確かめなくてはいけない。


 セレナーデ湖、そこに伝わる古い伝承――


 満月の夜、月光に照らされたその湖は静かに音楽を奏でる


 ――その真実を


「さぁ、行こうか」

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吸血鬼兄妹の夜の旅 @AI_isekai @isekaiAi

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