第4話 ガーゴイル
「ヴァレ
ルシアンの呟きと共に、夜空にある影が見える。
「ヴァレ
「ああ、ガーゴイルだ」
ガーゴイルにも”
通称――
「
ヴァレリアはすぐに戦闘態勢を取る。
空を飛ぶ魔物は、それだけで地上にいる者たちには手を出しにくくなる。永続的な飛行能力を持たない吸血鬼は、空の上にいるガーゴイルと互角の条件で攻撃することができないのだ。
「ヴァレ
不安そうに見つめるルシアンに、ヴァレリアは微笑みかける
「大丈夫だよ、直ぐに片づける。目閉じて、俺の背中に隠れてるいるんだ」
そう言うとヴァレリアは、自身の周りに五つの赤い魔法陣を展開させていく。赤い魔方陣が示すのは、火魔法。
「
ヴァレリアが魔法を発動すると、五つの魔法陣から赤みを帯びた火の玉が連射されガーゴイルを襲う。速度に重きを置いた牽制用のそれは、
その攻撃によって
とどめを刺すために、ヴァレリアは間髪入れずに紅の魔方陣――血魔法を展開する。
「
ヴァレリアの周囲に、黒と赤が帯びた
しかし、それが届く前に体勢を立て直した
「核を破壊しなければ完全には倒せないか」
ゴーレムと同じ性質、核がある限りは身体が修復され続けることを確認するとヴァレリアは、決着を付けるためにさらに上位の魔法を行使することを決めた。
「
ヴァレリアの詠唱に呼応するかのように、五本の
それは、岩をも貫く槍で始祖の頃より受け継がれてきた王族の血を持つ吸血鬼だけが扱える魔法である。
「これで終わりだ……」
ヴァレリアが呟くと、
王族の血で構成されたその槍は、硬質な岩を貫いたのち、
「終わったの?」
「ああ、もう目開けても大丈夫だ」
「相変わらず、ヴァレ
ルシアンは、呆れたように呟いた。
「そんなことないよ。ルシアンも使えるはずさ」
ヴァレリアは、ルシアンの頭を撫でながら優しくそう告げる。
「本当に?」
尋ねるルシアンにヴァレリアは頷きながら答えた。
「ああ、コツさえ掴めば俺みたいに使えるようになるよ」
「本当の本当に?嘘じゃない?」
「嘘じゃないよ、きっと使えるさ」
血魔法は、吸血鬼の中でも別格の存在である始祖の血を持つ王族が代々受け継いできたものだ。その血を色濃く受け継ぐ王族たるヴァレリアだからこそ行使できる。だが、ルシアンならばすぐに習得することができるだろうと考えていた。
ルシアンは血は薄いものの、王族であることに変わりはなく、血魔法以外の才能はヴァレリア以上。このまま成長すれば、ヴァレリアを超えることも可能だろう。だが、今は力が足りない。
それに――血が苦手なルシアンがこの魔法を扱えるようになるのは簡単なことではない。大きなキッカケでも無ければ、不可能なのだ。
「さぁ、行こうか」
ヴァレリアがそう言うと、二人はまた歩き出した。
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