第54話 バフスキル出現
火曜日出発、異世界冒険3日目の朝。
チュン、チュン……
今日も小鳥のさえずりで目が覚める。
ぐっすり眠れたお陰で、すっかり疲れも取れている。視界にはアイズウィンドウが点滅しており、その横でタケじいが笑っていた。
「おはよう、タケじい!」
「おはよう創真。おそらく、この点滅はレアスキルじゃよ」
「ああ、楽しみだなっ!」
アイズウィンドウ、オープン!
大和創真 Lv15 ジョブ 商人
魔法障壁 Lv1
スキル
1.英雄遺伝子
2.異世界転移
3.交渉術
4.短剣術
5.剣術 必殺技:連撃、切払い、後の先
6.念話術
7.飲酒
8.大食い
9.ボッカ
10.召喚
11.スキルチャージ(初級)
15.雇用 必殺技:ベア
レアスキル出たぁ〜! でも、雇用って名前が地味なんだけど、レアなのかぁ??
「カーカカカッ! 商人にピッタリのスキルが出たのぉ〜!」
ちきしょー! 想像は付くが、一応内容を見ておこう。
『雇用とは、人(魔物)を雇う事が出来る。レベルに応じて良い人材(魔物)が集まり、レベルに応じて対価以上の働きをしてくれる』
これは、……良いのかな?
とりあえず、必殺技を見てからスキルの評価をするとしよう。
『ベアとは、味方のレベルが3上がる』
良いのだろうけど、自分の能力が上がる訳では無いので、今ひとつピンとこない。
「タケじい、どう思う?」
「フォフォフォッ、これはバフじゃな!」
「バフ?」
「バフとは、味方の能力を上げるスキルの事じゃ!」
味方の能力を上げるって、オレの味方というと、ヤタと因幡さんだけだが……。
「創真よ、1人忘れておるぞ。雇用関係にある者も味方に含まれるのじゃ」
という事は、ドワーフのアウレも専属スミスだから味方に入るって事か。
ちょっと整理してみよう。
ヤタ Lv20 配下の魔鴉 Lv13
因幡さん Lv10 配下の魔兎 Lv5
ドワーフのアウレ Lv? 駆け出しだが凄い特殊剣を作れる。
これら全部のレベルがベアによって、3つ上がる訳だ。
待てよ! ゴブリンのレベルが10だから、タケじいが兎部隊は使い物にならないと言ってたけど、魔兎がレベル8であれば戦えるんじゃないかっ?
「創真よ、その通りじゃ。兎部隊も戦力として数えても良いじゃろう!」
よし、あとはアウレだが、レベルが3つ上がると、どんな効果があるのだろうか?
もしかすると、刀を作れる様になるんじゃないかっ?
「うむ、雇用スキルのバフも効いておるから、対価以上の働きをしてくれるかもしれんぞ!」
「タケじい、期待できそうだな!」
オレは、満足してステータスを閉じた。
コンコン、コンコン
ちょうど朝食の準備が出来た様だ。
オレは朝食を食べて、再び自室に戻ると、ズタ袋に鋼の剣を10本詰め込み、転移を唱えて日本の我が家へ帰還した。
ガタン。
自分の部屋に着くと、時計の針が水曜日の朝7時を指していた。
台所では、母が朝食の準備をしており、オレの帰って来た音に気付くと、部屋に駆け込んで来る。
「創真、お帰りなさい。怪我とかしてない?」
「ただいま、母さん。怪我はしてない、元気だよ!」
「良かったわぁ、それじゃ〜朝食にしましょ!」
オレは、いつもの大和家の朝食、トーストと目玉焼きとサラダをほおばり、波々と入ったミルクで喉に流し込んだ。
「まぁ、創真ったら。お腹が空いていたのね! ホホホホ」
イヤ違うんだ。さっき朝食を食べたばかりで、一気食いはクセになってるだけなんだ! とは言えず、オレはうなずいた。
母は誤解に気付かず、嬉しそうに笑っている。
オレは朝食を食べ終えると、身仕度を整え学校へ行った。
「おはよう創真君!」
いつもの公園の側で香織が待っていた。
相変わらず、可愛いなぁ〜。
朝から好きな人に会うと楽しい気持ちになる。
「おはよう、香織! この公園の側は危ないから、立ち止まらない方がいいよ」
すると、香織が公園の入口を指差して小さく笑う。
オレが振り向くと、そこには先日のゴブリン騒動でオレの話を全く信じてくれなかった警官が、バツの悪そうな顔で、こちらを見ていた。
なるほどねぇ、テレビで総理が言ってた周辺の警備も厳重にするという事なのだろう。
オレは仕返しとばかりに、警官に一礼して香織と歩き始めた。
香織は無邪気な笑顔で、警官に手を振っている。
「創真君、勉強の方は進んでる?」
「まあ、ぼちぼちかな。今は高2までの復習をしてるんだけど、今度の期末の範囲がイマイチ分からなくて困ってるんだ」
香織は少し考え込んだ後、照れた顔をして言った。
「じゃぁさぁ〜、放課後に一緒に勉強しよっか?」
「えっ、でも図書室は使えないよ?」
「ほらッ、この間の喫茶店。奥の席は静かだったでしょ! どうかなぁ~?」
うっ!!
オレは即答しかけたが、今日の放課後はロングソードの納品がある。同じ喫茶店だと、秘密の取引が香織にバレてしまう。
ても、せっかくの香織のお誘いを断るのは、あまりにも勿体ない。
何か良い手はないものか?
タケじいに相談しようか? いや、またくだらないと言って叱られるのがオチだ。
ゴルフバッグから例の物を出さなければ、何とかなりそうだが……
「いいよ、喫茶店で一緒に勉強しよう!」
オレは自分の欲求に逆らう事ができなかった。
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