第50話 リベンジ オーガ虫

カタナ? 聞いた事ないなぁ〜」


 この世界に『刀』という言葉は無いらしい。オレはメモ用紙に刀の絵を書いてアウレに見せると、何かを思い出したのかアウレがほくそ笑む。


「これはサーベルだな! 使い勝手は良いんだが、折れ易いんでお勧めしないぞ!」


 西洋の湾曲剣サーベル。ナポレオンが片手に持っているヤツだ。

 そう言えば、パイレーツオブカリビアンで主人公が使っていた様な……。


「違う違う、そうじゃ無い! 形は似てるけど両手持ちで、斬れ味バツグンで、細いけど折れない剣なんだ! るろうに剣心とか知らない?」


 アウレは途中から意味不明なオレの説明にポカンと口を開けている。


 少し熱く語り過ぎた様だ。るろうに剣心は余計だったわなぁ……。


「創真はその刀って武器が欲しい訳だな? サーベルよりも頑丈で斬れ味抜群の剣が。るろうに剣心は意味が分からんが、お前の求めているモノは理解出来た。俺もそんな凄い剣を作ってみたい!」


「協力してくれるのかっ?」


「ああ、喜んで! できれば、その刀という武器を一度見てみたいもんだ」


 刀かぁ〜、東雲さんに頼めば用意してくれるかなぁ?


「アウレ、もし刀が手に入いったら持って行くよ!」


 オレはアウレのいる工房の場所を聞くと、残りのエールを飲み干して店から出た。


 推しの宿、和倉屋に着くと、もう夜の11時。店員に連泊費用一週間分の金貨1枚を渡してチェックインをした。


 オレは部屋に荷物を置くと、定番の露天風呂を堪能する。


「う〜ん、やっぱりここのお風呂は最高だなぁぁ〜!」


 部屋に戻りベッドで横になると、疲れとアルコールのせいで、いつの間にか眠りに落ちていった。


 チュン、チュン……


 目覚めるとアイズウィンドウが点滅している。


 ステータス・オープン!


大和創真 Lv13 ジョブ 商人

魔法障壁 Lv1

スキル

1.英雄遺伝子

2.異世界転移

3.交渉術

4.短剣術

5.剣術  必殺技:連撃、切払い、後の先

6.念話術

7.飲酒

8.大食い

9.ボッカ

10.召喚

11.スキルチャージ(初級)

12.-

13.-


 ゴブリンしか倒してないのにレベルが3つも上がっている。それに奇妙なスキルが追加され、その後が空白になっている。

 オレは不安からタケじいを呼んだ。


「タケじい、何もしてないのにレベルが上がってるんだよぅ、なんでぇ〜?」


「創真よ、召喚獣が倒した経験値の一部がお主の経験値となるのじゃ」


「魔鳥は召喚して無いんだけどぉ……」


「配下も召喚獣と同じ扱いじゃ」


 なるほど、自分で倒したゴブリンと魔鳥が倒したガマロ60匹の経験値の一部が流れて来た訳かぁ!


 後は妖しげなスキルチャージ。


 オレはスキルチャージの内容を見た。


『スキルチャージ(初級)とは、ノーマルスキル獲得をスキップしてレアスキルを獲得する(自動)。チャージが大きい程レア度が上がる』


 おいおい、自動って自分で選択出来ないのか〜い!


 オレは、いつか出てくるレアスキルに期待をかけ、朝食を食べるとギルドへ向かった。


 ギルドに着いてマップを物色していると、何か問題が起こっている事に気付く。

 掲示板には『緊急告知、オーガ虫大発生につき換金率2倍!』と書いてある。


 マップの至る所にはオーガ虫の付箋が貼られ、魔石価格表にはオーガ虫Lv3=銅貨50枚を取消し、銀貨1枚と訂正されていた。


 オレの脳裏にオーガ虫の恐怖が蘇る。しかし、討伐だけで言えば超簡単なオーガ虫が高額の銀貨1枚だ。かなり美味しい仕事ではある。


「なぁタケじい、どう思う?」


「創真よ、アルミラージのレベルはいくつじゃったかのぉ?」


「え〜と、確かLv5だ。そうかっ、Lv5のアルミラージでLv3のオーガ虫を狩ればいいのかぁ!」


「おのおの1匹だけなら、匂いもつかんじゃろ。あとは兎達の報酬を用意してやれば良い」


 オレ達は兎の報酬を買う為に中央通りへ向かう。


 通りには多くの八百屋があり、その中でも人参が安い店を探して何軒も回ると、人参の相場は銅貨2〜3枚という事が分かった。


 早速、オレは安い人参を買おうとして問題にぶち当たる。ズタ袋に50本も入れると重すぎて運べないのだ。


 八百屋の店主に相談を持ち掛けると、リアカーを貸してもらえる事になった。但し銀貨3枚、人参100本よりも高い。


 オレはリアカーを借りて、因幡さんが配下を引き連れて消えた山の方、つまり北門から転移の丘へ移動した。


「因幡の白うさぎ召喚!」

 

 オレの前に因幡さんが現れた。


「因幡さん、久しぶり! 元気だったぁ?」


「これはこれは創真の旦那ぁ、俺はいつでも元気だぜぇ〜! で、何か御用でやすか?」


 腰が低くて好感が持てる。ヤタとは大違いだ!


 オレは因幡さんにカメムシ、いやオーガ虫の討伐を依頼した。もちろん報酬はアルミラージの好物、人参だ!


 因幡さんとの話合いで、報酬はオーガ虫の魔石1個で人参2本となった。


 因幡さんは不思議な踊りと鳴き声で部下を呼び始める。


 キュ〜、キュ〜、キュゥゥ〜!!


 しばらくすると、沢山のアルミラージが転移の丘に集まってきた。その数100匹。


 まずい、人参が足りねぇ〜!!


 オレの焦りを知ってか知らずか、因幡さんが配下のアルミラージに号令をかける。


「皆んなぁ、これからオーガ虫の討伐をするぜぇ〜。報酬は人参2本だぜぇ〜。美味しいぜぇ〜。よろしくたのむぜぇ〜!」


 キュゥゥ〜!!



✒️✒️✒️

ここまで読んで、

この作品が好きっ❤️と思った方は、

★★★で評価をお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る