第34話 GAT初陣

 GAT隊が現場に到着すると、至る所で銃声が鳴り響き、辺りには多数の警官が血を流して倒れていた。

 そして、前方にはゴブリンの集団が待ち構えている。


「GAT隊突入!!」


 近藤の号令で隊員達は抜刀し、ゴブリンの集団に向かって突進していった。


「ウオォォォ〜!」


 永倉が正面の1匹に斬り込んだ。


 シュウッ!


 ゴブリンは余裕をもってスルリとかわす。

 永倉は次の太刀を放つも、反撃を受けて防戦一方になる。

 他の前衛も剣が当たらず、次第にゴブリンに囲まれていく。


「土方、原田、前衛に加勢しろっ!」


 後方から近藤が指示を出す。その両脇にいる女性2人は、近藤からの指示を待っている。


 戦況は中衛の2人が加勢に入った事で、なんとか膠着状態になったが、この芳しくない戦況を見て近藤がつぶやく。


「一度、下がらせるか?」


「チッ!」


 舌打ちをした沖田が、突然走り出した。


「沖田ぁ〜、待てぇぇ〜!」


 近藤が必死に止めようと叫ぶが、沖田は止まらない。


 沖田は前衛の所まで行くと、永倉の横をすり抜けて平晴眼の構えを取り、左腕一本で一気に突きを放った!!


 バスッ! バスッ! バスッ!


 永倉を囲んでいた3匹のゴブリンの喉を、沖田の剣が次々と貫く。


 沖田は倒れた3匹のスペースに入ると、更に2匹のゴブリンを斬り伏せた。


「ふ、総子さんに続けぇぇ〜!!」


 防戦一方だった6人は、総子の勢いに乗じて息を吹き返した。


 総子を先頭に、左右を扇状に固めると、目の前にいるゴブリンを次々と倒していく。

 そして、最後に残ったリーダー格も、総子の突きで呆気なく倒してしまった。


 全ての敵を殲滅した総子は、艷容な笑みを浮かべると、剣についたゴブリンの血を払って鞘に収めた。


 その様子を、遠くから見ていた陸は総子の凄さに唸る。


「う〜ん、これ程とは……」


 その後、周囲の安全を確認した近藤が人質のいる小屋へ突入の指示を出す。


「突入!」


 小屋の中に入ると、そこには4名の裸の女性が倒れており、その内の2名は既に息をしていなかった。

 1人は放心状態で命に別状はなかったが、もう1人はお腹が膨れており息が絶え絶えになっていた。


 軍医の山南が脈を測り、お腹を触診した時だった。お腹の中にいる何かがムニムニと動き出し、同時に女性が大声で叫び出した。


「アアァ〜〜ッ! ギィャ〜〜ッ!」


 お腹の中の何かが更に激しく動き出すと、女性の叫び声が止まり、股の間から大量の血と共に緑色のゴブリンの幼体が顔を出した。

 

「隊長! どうしましょうか?」


「ちょっと待て!」


 近藤は無線で陸に指示を仰いだ。


「陸佐、どうしますか?」


「とりあえず捕獲だ。こちらで檻を用意する」


 山南がゴブリンを股から引き出して原田に渡す。


「原田君、ちょっと持ってなさい!」


「オ、オレ〜!?」


 山南は再び脈を取るが、女性は既に息絶えていた。


「隊長、亡くなっています」


 近藤はうなずくと陸佐に無線を繋いだ。


「陸佐、小屋の確認が完了しました。生存者1名、死亡3名。ゴブリン幼体1匹です。救急隊をお願いします」


 しばらくすると、救急隊が担架を持って現れ、拉致被害者4名が運び出されていった。


 GAT隊も小屋から出ると、外で警戒していた斎藤から黄色の宝石を5つ渡される。


「隊長、ゴブリンが消えた後に黄色の宝石が落ちていました。どうしますか?」


「う〜ん、何かの手掛かりになるかもしれん。檻を待っている間に探せるだけ探せ!」


 ゴブリンの幼体を持っている原田以外は宝石の探索を始めた。


「うぇぇ〜隊長、いつまでコイツを持ってなきゃいけないんですかぁ〜?」


「え〜い、もう暫くだ。我慢しろっ!」


 近藤と原田が真壁陸佐の元に辿り着くと、陸佐の足元にはペット用の檻が用意されていた。

 原田は嬉しそうに檻の中へコブリンの幼体を入れると、近くのトイレへ手を洗いに走って行った。


「近藤、ご苦労だったな!」


「はい、一時はヒャッとしましたが、総子さんのお陰で助かりました」


「ああ、彼女は想像以上に凄いな!」


「はい、想像以上です」


 陸と近藤は目を合わせると、予想を上回るGAT隊の戦果に、思わず笑いが込み上げてきた。


 ハハハハハ!!


 その後、全員を呼び戻すとGAT隊は速やかに多摩湖から撤収した。



☆☆☆☆☆☆☆



 翌朝、どのチャンネルもゴブリンの話題で大騒ぎとなっていた。


「緊急速報です!」


「昨夜、多摩湖に16匹のゴブリンが出没しました。

 ゴブリンは民間人5人を拉致し、小屋に立て籠もっていましたが、自衛隊の新設特殊部隊GATが突入し、全てのゴブリンを殲滅しました。

 しかし、拉致者の4名は死亡。救助されたのは、たった1名だけです。

 また、警官隊の被害も甚大で、死者30名、負傷者20名との事です。

 GAT隊がもう少し早く駆けつけていれば、被害は最小限に抑えられたかもしれません!」


 GAT宿舎の食堂で、真壁陸佐と近藤、山南が朝食を食べながらテレビを見ていた。


「おいおい! これじゃGAT隊が悪者みたいじゃないかぁ!?」


「テレビ局の悪意を感じますわね!」


「防衛費がここ数年で2倍に膨れ上がっているからな。金食い虫の自衛隊が気に食わないんだろうさ!」


「ですが陸佐、それはアメリカから新型兵器を買う予算であって、我々には回ってきてませんよ!」


「だけど、国民には分からないからなぁ〜」


「自分は悔しいです! ううう〜」


 朝っぱらから熱血の近藤であった。


「ところで山南、今日は休日のところ悪いんだが、中央病院を見てきてくれないか?」


「例のユーチューバーの方ですわね?」


「ああ、それで彼女が落ち着くまでは側に付いててやって欲しいんだ。先方の病院には話しを付けてある。よろしく頼む」


「了解しました!」


 山南は敬礼をして席を外した。


「さてと、俺達は研究本部だ!」


 陸と近藤も食堂を後にした。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る