第26話 パーティ

 異世界長期滞在3日目。


 オレは集合時間の10分前に南門へ到着した。

 門の前には4人の冒険者が集まっており、その中にキャロルさんがいた。

 彼女はオレに気付き手を振る。


「創真〜、こっちだよ〜!」


「キャロルさん、おはようございます」


「ああ、おはよう! 今日はよく来てくれたね〜。ありがとう!」


「いいえ、この間はお世話になりました。今日はよろしくお願いします」


 キャロルはニコニコしながら、他の3人を呼び寄せた。


「それじゃ、まずは自己紹介からだね。私はキャロル、剣士さ。このパーティ『ファームガード』のリーダーをやっている。で、こっちが槍使いのディーン」


「ディーンだ。よろしく頼むぜ、兄ちゃん!」


 キャロルも背が高いが、更に頭1つ高い。何より筋骨隆々で強そう。歳はキャロルと同じ26歳くらいかな。


「よろしくお願いします」


「じゃあ〜、次は私ね。魔法使いのエリンです。よろしくね!」


 ロリっ子魔法使いがきました〜! 


 歳はオレと同じくらい。いや少し下かな?


「よろしくです」


「……ロイド。ナ、ナイフと弓を使う」


 無口キャラが登場した。身長はキャロルと同じくらいで、細身マッチョのロン毛。歳はキャロルさんと同じくらいか。

 おそらく、3人の同級生パーティにロリっ子が加わったのだろうと勝手な推測をする。


「アハハ、ロイドはちょっと無口だが、優しいヤツなんだ。仲良くしてやってくれるかい?」


 ちょっとなのか……


 オレはうなずいて自己紹介を始めた。


「ソーマです。異国のニホンという国から来ました。ジョブは駆出しの商人ですが剣を使います。皆さん、よろしくお願いします」

 

 自己紹介も終わった所で、キャロルが皆に号令をかけた。


「よ〜し、ぶどう畑へ出発だ! 細かい話は道々教えたげるよ」


 オレ達パーティは南門を抜けると、真っ直ぐ続く広い道を南へと歩き始めた。


 道中では、キャロルがクエストの内容と報酬の分け前を説明してくれる。


「このクエストはね、2日前に近所のピエールさんが泣きついてきたのさ。

 今回のターゲットはマモシという蛇の魔物なんだが、毒が厄介でね〜、噛まれると3日寝込む猛毒さ。だけど、ここに毒消薬を持ってきたから、すぐに飲めば半日で治るから安心しな!」


 お〜い、それって半日も苦しむって事だよなぁ……


「だ、大丈夫なんですかぁ〜?」


「ああ、問題ないよ。マモシのレベルは6だ。弱い魔物だから、注意していれば噛まれやしないよ。だけど、数が数だから人を集めたんだけど誰も来なくてね〜。ソーマが来てくれて助かったよ!」


 ええっ〜! レベル6ってオレと同じだけど大丈夫なのかぁ〜?


「あのぅ〜、つかぬ事をお聞きしますが、キャロルさん達のレベルはいくつなんですか?」


「ごめん、まだ言って無かったね。私はレベル20、Dランク冒険者だ。

 ディーンとロイドはレベル19でEランクだけど、今回のクエストでDに昇格の予定だ。エリンはレベル10でランクEになったばかりだよ」


 おいおい、みんなレベルが高いんですけど〜!


「キャロルさん、オレのレベルって知ってます?」


「ああ、もちろんさ。母さんからアルミラージのクエストを軽くこなしたって聞いてるし、近所のエバンスさんもアルミラージを全て追い払ってくれたって喜んでいたからね。ソーマはレベル10くらいだろう?」


「レベル6なんですけど……」


「えっ?」


 キャロルの顔が一気に青ざめていく。回りで聞いていたメンバーも、驚いて顔を見合わせている。


「まぁなんだ。同じレベル6で格上ではないんだから、ギリギリセーフだよなっ? なっ?」


 キャロルは必死になってメンバー達に同意を求めている。


 それにしても、ギリギリって……


「よし、私がソーマを守るから、まかせておきな。薬もあるし、死にゃ〜しないって!」


 全く慰めになってないんですけど〜。


 なんか、キャロルが自分に言い聞かせている様に見えるのはオレだけだろうか?


「あっそうだ! 報酬の取り分の説明がまだだったよね?

 報酬はきっかり5等分だ。ちなみにマモシの魔石は銅貨60枚だから……」


 オレはギリギリという言葉でそれどころではなく、途中から説明が頭に入って来なかった。


 その後はフォーメーションの説明やら、注意事項の説明やらを受けて、ようやくぶとう畑に到着した。


 フォーメーションは前衛がキャロルとディーン、後衛がロイドとエリン、そしてオレは4人に守られる形の中央となった。


 畑の入口でキャロルが号令をかける。


「さぁ〜気合いを入れていくよ。進めっ!」


 いよいよパーティでの討伐戦が始まった。


 レベルが上の4人は回りを警戒しながら歩みを進める。オレも風の剣を構えて回りと歩調を合わせる。


 しばらく進むと、キャロルが声をあげた。


「いたっ! 左の木の上に1匹」


 左の木を見ると、マモシがぶとうの木に巻き付いている。


 ディーンが、リーチの長い槍で突き刺すが、木の下へぽとりと落ちる。落ちた蛇はスルスルとこちらへ向かってくる。

 動きは遅いが見た目が怖い。恐怖で反応が遅れるオレに、マモシが飛び掛かってきた。


 間に合わないっ!


 その瞬間、マモシの頭にキャロルの剣が突き刺さる。


「創真、気を抜くんじゃないよ! 自分の身は自分で守るんだッ!!」


 そんなぁ〜! さっきは守ってくれると言ってたよね、キャロルさん?




✒️✒️✒️

【キャロルのイメージ画像】

https://cdn-static.kakuyomu.jp/image/ODJHZRin

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