第25話 虹色の魔石

 ボス兎が降参してくれたお陰で、オレは早々に街へ戻る事が出来た。


 今日の戦果は、アルミラージの魔石23個と謎の御守1個。

 御守袋を開くと、中からキラキラと虹色に輝く美しい魔石が出てきた。


「タ、タケじい、変わった魔石が出てきたぞ?」


「おお~これは凄い、虹色の魔石じゃ!」


「虹色の魔石?」


「通常の魔石は、武具に装着出来るのじゃが、虹色の魔石は生き物にも装着出来るのじゃ! しかも、ユニークスキルが付いておる。早速鑑定じゃ!」


 オレは虹色の魔石を鑑定した。


虹色の魔石 『兎』

スキル 大跳躍


 かなり、分かり易い内容だが……


「まずは試してみい。御守袋を首にかけてジャンプしてみるのじゃ」


 オレは軽くジャンプしてみた。すると、本来なら50センチの所を、何と1メートルもジャンプするではないか!

 今度は真剣にジャンプしてみると、自分の身長を超える2メートルの大ジャンプが出来た。


 これは凄い! まるでトランポリンに乗っている様だ。

 これなら、空中一回転ができるのではと、弾みを付けた所で、タケじいに止められた。


「首の骨を折るから止めておけ」


 オレの仮面ライダーデビューは、まだまだ先となった。


「タケじい、この魔石はいくらになると思う?」


「そうじゃのう、虹色の魔石はレア中のレアなんじゃ。貴族に人気が高いでなぁ、おそらくプラチナ金貨1枚、いや2枚はするのではないかのう。売るのか?」


「売る訳ねえだろう!」


「良い判断じゃ」


 話もついた所で、オレ達はギルドの換金窓口へ顔を出した。


「おや、今日はやけに早いね〜。あまり稼げなかったのかい?」


「まあまあかなぁ〜♪」


 オレはアルミラージの魔石23個とクエストの受注票をカレンさんに差出した。


「やるじゃないか! このクエストは割に合わなくて人気がなかったんだ。良くやってくれたね、ありがとう!」


 カレンさんは魔石の計算を済ませて、金貨2枚、銀貨1枚、銅貨50枚をトレイに載せて渡してくれた。


「ところでソーマ、明日なんだけどパーティに参加する気はないかい?」


「突然、どうしたんですか?」


「実はねぇ、私の娘のパーティが、ぶどう農家さんからクエストを頼まれちゃってさ〜、人手が欲しいって言ってるんだ。アルミラージを倒せるなら心配ない魔物だし、どうだい?」


 そう言うと、カレンさんはクエストの依頼書を見せてくれた。


「なになに、ぶどう農家のピエールさんからの依頼。うちのぶどう畑にマモシが大量発生して、危なくて来週からの収穫が出来ません。助けて下さい! クエスト達成条件はマモシ100匹以上で報酬は金貨7枚と高級ワイン」


 高級ワインが気になるなぁ。でもそれ以上に娘さんが気になるので、思いきって聞いてみる。


「あの〜、娘さんって、もしかしてキャロルさんですか?」


「えっ、ソーマは娘を知っているのかい?」


 オレは迷子の所を、キャロルさんに助けられ、ギルドに連れてきてもらった事を話した。


「そうかい、それなら話は早い。受けてくれるかい?」


 半ば強引な誘いだったが、キャロルさんには恩がある。オレはパーティに参加する事に決めた。


「ありがとう。それじゃぁ、キャロルには私から言っておくよ。集合時間は南門に明朝8時、遅刻するんじゃないよっ!」


 ギルドを出ると時刻は午後の5時。今なら夕食に間に合う。オレは推しの宿、和倉屋へ駆け足で向かった。


 宿に着くと、ぎりぎり夕食に間に合い、銀貨1枚と銅貨50枚を支払い、夕食の時間までゆっくりと露天風呂に浸かる。


「相変わらず良い湯加減だぁ〜。体の芯まで沁み渡るぅぅ〜!」


 風呂から上がり浴衣に着替えると、始めての夕食バイキングへ向かう。


 とっても楽しみだ!


 食堂に入ると、中央のテーブルには山と積まれた肉、肉、肉! 更に色とりどりのフルーツ、フルーツ! サイドテーブルには良い香りの黄金スープが宿泊客を惹きつけている。


 ある家族連れのお父さんが両手の皿を山盛りにして、自分たちのテーブルへと忙しなく料理を運んでいる。

 あるカップルは、いちゃいちゃしながら料理を堪能している。

 どのテーブルも満員御礼で、ワイワイガヤガヤ、とても賑やかだ。


 オレも負けじと、4人家族と同じくらいの料理を自分のテーブルへ運び、全部1人で平らげる。


 ムシャムシャムシャ、ガツガツガツ!


「あ〜美味しかった! 満腹、満腹!」


 宿の店員は、オレの食べっぷりに驚いていた。


 腹を十分に満たしたオレは、今日も同じ部屋でぐっすりと眠りに就いたのだった。


 チュン、チュン……


 今日は、朝8時に集合のため、いつもより1時間早い目覚めだ。

 点滅しているアイズウィンドウを開くと、またレベルが上がっている。


大和創真 Lv6 ジョブ 商人

魔法障壁 Lv1

スキル

1.英雄遺伝子

2.異世界転移

3.交渉術

4.短剣術

5.剣術  必殺技:連撃、切払い

6.念話術


 つ、ついにジョブが出てきた! 勇者とか英雄とかを期待していたが、やっぱりというか予想通りの商人。


 残念!


 必殺技には切払いが追加されており、更に強くなった様だが、必殺って、これ防御の技なんだけど……


 そして、今回の追加スキルは念話術。


 内容を見てみると、波長の合う相手と念話ができる。但し、レベルに応じて対象範囲が広くなる。


 これは因幡さんのおかげだね。


 それから、いつもの様に朝食をたらふく食べると、集合場所の南門へ向かった。

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