第23話 難敵アルミラージ

 オレはアルミラージを鑑定した。


アルミラージ Lv 5

魔法障壁 Lv1

スキル 角突進


 アルミラージはすばしっこいという事だが、角突進には要注意だな。


 オレは目の前の舐めきったアルミラージにゆっくり近づくと目が合った。


 ニヤリ!


 一瞬、アルミラージが笑った様な気がした。そして、また何食わぬ顔で人参を食べ始める。


 コイツ舐めやがって、皮をはいで塩水につけてやろうかあ〜!


 ブゥンッ!


 オレは怒りにまかせて剣を振るった。しかし、刃が当たる寸前に見事な横っ跳びでかわされ、下手くそと言わんばかりにこちらを見ると、どこかへ逃げ去って行った。


「タケじい、狩れる気がしないよぉ〜」


「カカカッ! かすりもせんかったの〜」


「アドバイスはないのかよ?」


「自分で考えるのも修行じゃ。しばらく頑張ってみるのじゃ!」


 勿体つけやがって、この〜クソじじいッ!


 それから数時間、ひたすら剣を振り回し、寸前で逃げられる事を繰り返し、疲れ果てて地面に倒れ込んだ。


 ハァハァ、チキショォォー!


「創真よ、前にワシが教えた事を思い出すのじゃ」


 そう言えば、深夜の素振りでタケじいが言ってた言葉、小さく振り抜く事! 斬ろうと振るのではなく、当ててから振り斬る、そして、2撃目は突きだ。

 これを深夜に練習させられたのを思い出し、連撃の技をなぞる。


「どうやら思い出したようじゃな。それに剣のスキルを合わせるのじゃ!」


 オレは、舐めきって人参を食べているアルミラージに向い、言われた通りにやってみた。


 まずは瞬歩で一気に距離を詰める。


 ザザ〜ッ!


 アルミラージは、突然目の前に現れたオレに驚いている。

 次は腕を折りたたみ、肩から小さく振り下ろす。


 シュッ!


 当たった! そのまま一気に振り抜く。


 ブゥンッ!


 むっ、手応えない。毛皮にかすっただけだ。


 アルミラージが鬼気迫る顔で横っ跳びをするが、オレの2撃目がそれを逃さない。


 バスッ!


 2撃目の突きが、アルミラージの胴体を空中で捉えた。

 アルミラージは剣に突き刺さったままもんどりを打ち、やがて靄になると魔石に姿を変えて地面に落ちた。


 パチパチパチ!


 タケじいが拍手をしてくれた。


 オレが拍手に答えてガッツポーズをすると、なぜかタケじいが困った顔をしている。


「創真よ、もうすぐ日没じゃ。あと1匹倒さねば宿に泊まれんぞ」


 そう言われて辺り見ると、もう夕暮れになっていた。帰りの時間を考えると、あと1匹狩れるかどうか。


 絶対あの宿に泊まりたいっ! 


 強い思いで人参畑を駆け回り、辛うじてもう1匹を仕留める事ができた。


 結局、今日の戦果はアルミラージ2匹と不甲斐ない結果に終わり、1時間歩いて東門に着く頃には辺りがすっかり暗くなっていた。


 マズい、カレンさんに怒られるぅぅ!


 オレは疲れた体にムチを打ち、ギルドまで走った。ギルドに着いたのは午後の7時。換金所のカレンさんはニコニコして出迎えてくれた。


「ソーマ、今日は時間を守れたね。良い心懸けだよ。それで、今日も凄いのを見付けて来たんじゃないだろうね?」


「残念ながらアルミラージ2匹です」


「アハハハ、それが普通だよ」


 オレはカレンさんから銀貨1枚を受け取ると、推しの宿、和倉屋へ向かった。


「いらっしゃい、あれっ昨日のお客さんですね。今日もお泊りですか?」


「はい、お世話になります」


 銀貨1枚をカウンターに置くと、宿屋の店員は昨日と同じ部屋のルームキーを差出す。

 勝手知ったるなんとやら、部屋に入ると荷物を置いて露天風呂へ直行した。


 いい湯だなぁ〜、疲れた体に沁み渡る〜!

 

 露天風呂を堪能して部屋に戻ると、持ち込みの非常食で腹を満たす。


 明日こそは宿の夕食にありつこう!


 オレは決意を固めてベッドに入り眠りに就いた。


 チュン、チュン……


「おはよう創真、朝じゃぞぉぉぉ〜!」


 翌朝、モーニングコール、いやモーニングじじいの囁きで目が覚めた。


「おはようタケじい、どうしたんだ?」


「おめでとう! レベルが5に上がっとるぞ」


「タケじい、今日は朝から何か変だぞ?」


「まぁなんじゃ、とりあえずステータスを見てみぃ」


 恥ずかしいが、アイズウィンドウ・オープンと唱えると、目の前にいつものステータスが表示された。


大和創真 Lv5

魔法障壁 Lv1

スキル

1.英雄遺伝子

2.異世界転移

3.交渉術

4.短剣術

5.剣術  必殺技:連撃


 おお~、スキルに剣術が追加されている。そして、カッコイイ必殺技が出てきた。


「なぁタケじい、必殺技を発動する時は連撃〜と唱えればいいのか?」


「ばかもん! 唱える必要があるのは異世界転移だけじゃ。他はレベルに応じて自動発動じゃ」


 あれっ? 交渉術発動とか言ってた気が……、ちょっと恥ずかしくなった。


 でも、これでレベルはアルミラージと互角になった。今日こそはクエストをコンプリートして、宿屋の夕食にありつこう。いやいや鋼の剣を購入しようと心に決めた。


 コンコン、コンコン


 朝食の準備が出来た様だ。オレは身支度を整えると、腹一杯に朝食を食べて推しの宿、和倉屋を出発した。

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