武器商人は忙しい！〜日本壊滅かぁぁあ！？弱小ゴブリンに自衛隊はお手上げですっ！🪖

第12話 異世界へ

　翌日、オレは学校を休んで大和商店の準備に取り掛かった。

　まずはバイト先へ行き、家庭の事情で辞める事を告げた。一応、嘘じゃないよな。

　次は銀行。大和創真名義で口座を作って完了だ。

　お次は税務署。個人事業主になる為には税務署で手続きが必要になる。

　税務署に行くと係の人が丁寧に教えてくれた。そして、ようやく大和商店の屋号を手に入れる。もちろん代表は大和創真だ。

　なんか一国の主になった気分。売り上げはまだゼロだけど。

　最後は異世界冒険の準備だ。

　タケじいと相談しながら、異世界へ持って行くものを買い集める為に、俺達はショッピングモールの中を歩いていた。

「タケじい、持っていくものは何が良いかなぁ〜？」

「なんだか嬉しそうじゃの〜。小学校の遠足と勘違いしとりゃせんか？」

「そ、そんな訳ないじゃないかぁぁ！」

　正直オレはワクワクしている。

「まぁよい。ワシが何でも揃う、とっておきの店に連れて行ってやるぞえ」

　オレ達は沢山あるお店を全て通り越してワークマンに辿り着いた。

「ここが何でも揃うワークマンじゃ！」

　なんで１８００年前のじじいがワークマンを知ってるんだぁ？

「さぁ、買い物じゃあっ！」

　オレはお店に入って商品を見渡す。すると、ワークマンは作業服ばかりでなく、機能的でオシャレな服も置いてあり、小物も意外とカッコいい。

　オレはタケじいと相談しながら、選んだ商品をカゴの中へ次々と放り込んでいった。

　結局、選んだ商品は以下の通り。

　ジーンズの上下、黒のハーフブーツで鉄板入り、黒の革手袋、ベルトと短剣を掛けるホルダー、下着類、それとウエストポーチとリュックサック、ポンチョ、懐中電灯、メジャー、ライターなど。

　支払いを済ませて店から出ると、今度はスーパーへ連れていかれた。

「創真よ、ここでは食料を調達するぞえ。但しお菓子は１０００円までじゃ。かっぱえびせんを忘るでないぞぉ！」

　タケじいの方がワクワクしてんじゃねぇ〜かっ！

　ここでもタケじいと相談しながら商品を選び、ようやく全ての買い物が終わった。

　家に戻って遅い昼食を済ませると、ワークマンで揃えた上下のジーンズに着替え、鉄板入りのハーフブーツを履く。ベルトのホルダーには家宝の短剣を括りつけ、ポケットにゴブリンの魔石を入れる。リュックに備品と食料を詰め込んで、異世界冒険の装備が完了した。

　時間は午後の４時、ちょうど学校が終わる時間だ。

「タケじい、本当にバイトが終わる時間までに帰って来れるのか？」

「大丈夫じゃ。異世界の時間の流れはこちらの世界の５倍の速さで流れておる」

「？？？」

「分からんか？　あちらの世界で２５時間過ごすと、こちらの世界では５分の１、つまり５時間しか経っておらんという事じゃ」

　なるほど！　バイトの時間が４時間、移動で１時間、合計５時間と考えると、バイトの時間が異世界での１日という事か。

　これなら母さんにバレずに異世界へ行って帰って来れるな。でも１日で２日過ごすとなると、かなりハードなんだが……

「創真よ、準備はいいか？」

「ああ、どうやればいいんだ？」

「行きたい所をイメージするのじゃ。そして、異世界転移発動と唱えるんじゃ！」

「……」

「タケじい、オレ異世界へ行った事ないんだけど……」

「あぁ〜、こりゃすまんかった。異世界転移には行きたい場所、つまり座標が必要なんじゃが、初めてだとイメージできんわのぉ。

　それなら、ワシが１８００年前に行っていた街の座標を設定してやるぞえ。もう一度やってみよ！」

「分かった。異世界転移発動！」

　すると回りの景色が黒い渦に包まれ、いろんな光が後ろに流れはじめる。まるで電車がトンネルの中を走っている様だ。

　やがてトンネルの先に白い光が見えてきた。どうやら出口の様だが……

　次の瞬間、周りが一気に明るくなり、眩しくて目を閉じた。

　その後ゆっくり目を開けると、オレは小高い丘の上の草原に立っており、丘の下には城壁都市、その周りには広大な農地が広がっている。

　まさに、そこは異世界だった！

☆☆☆☆☆☆☆

　その頃、防衛省の休憩室で、真壁室長とその息子である真壁陸佐がコーヒーを飲みながら話をしていた。

「陸、コブリンを倒せる武器の目処がついた」

「えっ父さん、それは本当ですか？」

「あぁ本当だ。恐らく彼なら大丈夫だと思う」

「彼、その人物とは誰ですか？」

「今はまだ言えない。謎の武器商人とでも言っておこう！」

　陸は謎という言葉に訝しむも、話を続ける。

「それで、どのような武器なんですか？」

「それは剣だ！」

「えっ、この時代に剣ですか？」

「残念ながら、今の所コブリンに通用するのは剣だけなんだ。そこで、お前に頼みたい事がある」

「何でしょう？」

「中隊規模の剣士部隊を作ってもらいたいのだ」

「剣士部隊？　あの〜新選組みたいなものでしょうか？」

「ああ、その通りだ。そして、その部隊のメンバーをお前に揃えて欲しい」

　陸は混乱していた。銃器の扱いが上手い人選なら何度もやってきた。それが剣の扱いが上手い人選なんて、一体どうすればいいのか？

「父さん、何とかやってみます」

　真壁陸佐は、父親の命令にしぶしぶ納得したのであった。