第3話

『おおおぉーっ!!』


絶叫と共に、女が駆けた。


そして、一心不乱に信長の胸目掛けて剣を突き刺したのだった。


ズズッ!!


鈍い音と共に、女は確かな手応えを感じた。


ところがー。


『なっ・・・!?』


その瞬間、女は絶句し言葉を失ってしまった。


何と信長は少しの抵抗も見せず、自ら両腕を広げて女の剣を受け入れていたのだ!


見ると剣は真っ直ぐにその胸を突き破り、背中にまで到達していた。


『見事な腕だ、お農の娘よ・・・』


信長はそう言葉を漏らし、とても納得したように柔和な笑みを浮かべていた。


それからそっと両手で女の顔に触れ、愛おしむようにこう語りかけていった。


『・・・ほんに、よう似ておる。

 凛としたこの目、この美貌・・・

 それに、気の強さも剣の腕も全てお農譲りじゃ。

 だが残念なことに、口の悪さはわしに似たかのう・・・』


ふふっと笑った信長を見て女はようやく我に帰ると、剣から手を離し思わずその場から退いてしまった。


『今さら何を白々しいことをぬかす!

 貴様を父親だなんて、あたしは絶対に認めはしない!

 死んだ母様だって、きっとそう思ってるに違いないさ!』


『・・・それでよい。

 この先ずっと、この信長を憎んで行けばそれで・・・

 だがの・・・わしにとってそなたは娘・・・

 心から愛したお農との、ただ一人の大切な娘なのだ・・・』


信長はそう言うと、胸に突き刺さっている剣を両手でグッと握り締めた。


そして女の眼前で、それを強引に引き抜いていったのだ。


噴き出す血しぶき・・・


辺り一面を血で真っ赤に染める中、信長は膝からゆっくりと前のめりに崩れていった。

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