第131話 ダンジョン攻略①

 特級ダンジョンで初めて戦闘する魔物は兎人カニヒェンで、圧倒的なスピードからの近接戦闘タイプの魔物。


 私は広範囲の攻撃を発動させる準備をして、お母さんからの指示が出るのを待っていた。


『タン、タタン』


 兎人カニヒェンの駆け寄って来る足音が聞こえてくると、お母さんの開かれていた右手が閉じられた。攻撃のハンドサインが出たので、私は理魄で攻撃を仕掛ける。


鉄の矢アイアンアロー!」


『バシュ!』

『ド、ドシュ、ドシュ!』


 飛び跳ねるように駆け寄る兎人カニヒェンの不規則な動きも関係なく、広範囲に放たれた大量の矢が突き刺さった。


「グギャ!」


 兎人カニヒェンは全身の至る所に矢が刺さり、その場で崩れ落ちたけど絶命に至らなかった。やはり広範囲に展開させると一撃の威力はかなり落ちるみたい。そのことはある程度予想がついていたので、お母さんは杖を手にして兎人カニヒェンに近づき、鋭利な先端部分で頭を一突きして2体を仕留めたことで、特級ダンジョンでの初戦は圧勝に終わった。


「マール、見事な攻撃だったよ」

「ありがとう。広範囲だと仕留めきれないね」

「全力で撃てば倒せるだろうけど、ダンジョンを攻略する場合は、どれだけ戦闘をするか判らないからね。理力を抑えて武具で仕留めるのがベストなんだよ」

「じゃあ、動きが遅い魔物の場合だと、足を切断する感じで良いの?」

「基本的にはそれで良いけど、近づくことが危険な魔物もいるから魔物の特性を知って、臨機応変に対処することになるね」


 魔物の討伐は奥が深いんだね。ただ倒すだけではなく、学ぶことはたくさんあるようだ。


 最高の手本になる、お母さんの言うことをしっかりと聞いて、私もSランクハンターになり、お母さんの隣に並び立つんだと誓った。


「ダンジョン討伐は奥深いね。知らないことばかりで『ワクワク』してきたよ」

「じゃあ、必要な部位を回収したら先に進むよ。兎人カニヒェンは角と胸の中央にある魔石を回収すれば良いからね」

「OK!ねぇ、残った亡骸は焼却するの?」

「ダンジョンは本当に特殊で、半日もすれば吸収してくれるから放置で良いよ」

「そうなんだ。本当に不思議な場所だね」


 ダンジョン独特の特性を聞くと、ダンジョン自体が生命体なのかと思ったけど、もう少しダンジョンというものを検証して、頭の中で整理をしてから2人に伝えようと思った。


 そして必要な部位を回収した後は、お母さんの先導でダンジョンの奥へと進んで行った。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る