第130話 ダンジョンの仮説

 3人で隊列を組んでダンジョンの中へ足を踏み入れる。


 私にとって初めてのダンジョンが、初級から特級まで4段階ある中でも、最高ランクになる特級ダンジョンになるとは、思ってもいなかったよ。


 そんなことを考えていたけど、ダンジョンの中に入って驚いた。


「えっ、洞穴に入ったはずなのに、レンガ造りの通路になってる……」


 そう、薄暗い洞窟をイメージしていたのに、綺麗に敷き詰められたレンガ造りの通路なんだから驚くのも仕方ない。


「マールは初めてのダンジョンだから驚くよね。理由は解明されてないけど、私達の力の源になる理力と同じように、魔物達にも力の源になる魔力があるの。その魔力の影響で、別次元の空間を生み出しているといわれてるんだよ」


 お母さんがダンジョンについての仮説を教えてくれると、師匠は違う仮説を教えてくれた。


「光なる聖神と闇なる邪神の存在があるんだ。聖神の力は天から降り注ぎ、邪神の力は地上から湧き出すしてる」


 言葉の途中で師匠が言おうとしてる意味が判ったので、私が代わりに残りの言葉を口にした。


「私達は光の下で地上で暮らして、魔物は闇の下で地中で暮らす生活区域?」

「本当に賢いね。私達は地上人で、魔物は地底人っていう考えもあるんだよ」


 師匠の仮説が正しければ、魔物にとって私達は侵略者ということになる。ダンジョン攻略をしなければ、魔物が地上に来ることはないのかと考えてしまう。


「まぁ、他にも色々な仮説があるけど、あくまで仮説だからさ、そこは専門家に任せておけば良いんだよ。今はダンジョン攻略に集中!」

「うん」

 

 お母さんの言う通りで、ダンジョン攻略に集中しないといけない。ここは特級ダンジョンだから気を抜けば命に関わり兼ねないので、目の前のことに集中をする。


 しばらく進んでいると分岐点が現れたけど、迷わずに右側へ進むと、お母さんが師匠に指示をする。


「師匠は後方の気配確認をよろしく。ダンジョンは外と違って魔力を感じやすいから、マールはその違いを感じてるんだよ」

「OK、任せな!」

「判った」


 さらにダンジョンを進んで行くと、お母さんが立ち止まって右手を上げる。そこから指を2本出した後に前方を指差したので、前方に魔物が2体居るというハンドサインだ。


「これは兎人カニヒェンっぽいね。強烈な脚力からの生まれる、圧倒的な速さを活かした近接戦闘に注意だよ」


 お母さんが魔物を特定すると、兎人カニヒェンの特徴を教えてくれた。私は近接戦闘ではなく、理魄による攻撃をすれば良いのか確認をする。


「近づけずに理魄で倒せばいいの?」

「素早い相手にどう当てる?」

「威力は落ちるけど広範囲で攻撃だね!」

「正解、タイミンクは私が伝えるから理魄を放つ用意をしてね」

「OK!」


 授業をしてるような会話をして、理魄をいつでも放てるように準備を整える。これが特級ダンジョンでの初戦闘になるので、少し緊張しながらお母さんの指示を待った。

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