第129話 特級ダンジョンへ

 明後日から特級ダンジョンへ行くけど、特にこれといった準備は必要ない。野営用のテントと結界装置に食料くらいだから、3人で『パッパッ』と買い物を済ませてお母さんの部屋に戻ると、特級ダンジョンに現れる魔物について簡単な説明を受けた。


「特級ダンジョンは10層構造になっていて、現れる魔物は最も弱いものでBランク、単体で現れることはまずないから、絶対に囲まれないように注意するんだよ」


 森林や山岳地帯で討伐していた魔物は、Aランクのワイバーン以外にもBランクの魔物が現れたけど、基本的には単体だったので戦いやすかった。それが複数で現れるというのだから、かなり危険な場所だと理解した。


「うん、お母さんの指示通りに動けば良いんだよね?」

「そうだね。最初は私が指揮を取るけど、マールにも指揮を取れるようになってもらうからね!」

「判った、頑張るよ」

「口で色々言っても、実際にダンジョンに入れば全く違うと思うからさ、深く考えないで気軽な気持ちで行こうね!」

「うん」


 普通に考えれば、私が入れるようなダンジョンではないと思うので、お母さんに全てを任せておけば安心だね。


 そして、特級ダンジョンへ向かう日になり、私達は師匠の部屋を訪れた。そこにはいつものローブではなく、防具を身に着けた師匠が待っていた。


「2人とも来たね。転移石を使ってダンジョンへ向うよ」

「わっ!そんな高価な物を用意してるなんて、流石は妃爵様ですね資金力が桁違い!もしかして往復なんですか?」

「当たり前だろ?あんな距離を移動してたら洒落にならないからね。さぁ、私に触れておくれよ」

「「はい」」


 転移石がどれほどの価値なのか知らないけど、お母さんが驚くほどだからもの凄く高価な物なんだろうね。私達が師匠に触れると、師匠は転移石を頭上にかざしてから声を発した。


「転移!」


 師匠が声を発した瞬間、身体が軽くなり目の前が真っ暗になった。


『パッ』


 暗くなったと思ったら視界がクリアになると、全く知らない場所へと移動していた。


「ここが特級ダンジョンなの?」


 私が呟くと、お母さんが丘の中腹にあるダンジョンの入口を指差してくれた。


「正確には特級ダンジョンの少し手前だね。入口は丘の中腹に見える洞穴だよ!」

「あれが入口なんだね」


 お母さんが指差した場所を見てると、師匠が私の肩を『ポン』と叩いてから声をかけてきた。

 

「さぁ、ダンジョンへ入るよ。目標は最下層の10層を目指すからね」

「隊列は先頭から私、マール、師匠の順で進むからよろしくね」

「はい」

「了解」


 お母さんの指示で隊列を組んだ後に、私達はダンジョンの入口を目指して移動を開始した。


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