第128話 母vs妃爵

 私達が女学院へ戻ってから4日後、師匠が城から戻ってきた。


 お母さんが手紙を置いてきたので、特に問題はないと思ってたけど、お母さんと魔物の討伐から戻ると、呼び出しがあったので師匠の部屋へと3人で向かった。


「勝手に帰ったから怒られるのかな?」


 私が勝手に帰ったことを気にしてると、お母さんは私の頭に手を置いて笑いながら応える。


「あれは師匠が悪いから文句は言わせないよ。バカに会わせるつもりだったら、最初から城になんか行かなかったからね。やられたことをやり返しただけだよ」

「でも、王族が相手なんだから、王命で王子に会えと命令を出されたら断れないんじゃ?」


 今回は逃げることで王子に会わずに済んだけど、相手は王族だから会えと命令されると、断ることができないと思った。


「そういう命令を出してきたら、私は爵位の返上と軍部を退官すると脅しをかけるよ。これでも最高戦力の1人だから、それなりに睨みをきかせることができるからね。さぁ、着いたから部屋へ入るよ」

「あっ、うん」


 話をしてると部屋に着いたので、ドアをノックしてから部屋へと入っていくと、『ムスッ』とした師匠が席に座ってこちらを睨んでいた。


(めっちゃ怒ってるやん……)


「その様子だと、あのバカをなだめるのに苦労したんですか?」

「誰のことをバカと言ってるんだい!」

「無断で城にやって来て、嫌がるマールに会わせろと駄々をこねるようなヤツは、バカ以外になんと言えば良いんですか?」

「ミーナリア!」


 流石に孫のことをコケにされて、師匠が大きな声でお母さんの名前を叫ぶと、お母さんの表情が一変する。どうやら怒ってるのは師匠だけではなく、お母さんもかなり怒っていたようだ。


「アナスタシア様、私は国に仕えてるだけで、王族に仕えてる訳じゃないですからね?師弟関係だからといって、何でも言うことを聞くと思わないでくださいね」

「私はマールの回復具合を見計らって会わすつもりだったんだよ。ちゃんと言い聞かせたから、その時が来たらアクセル会わせるのはいいだろ?」

「そちらの都合は知りません。マールが嫌だと言うなら絶対に会わせません。呼び出した用事はこれだけですか?他にないなら帰りますよ」


 お母さんは、私と王子を会わせようとする話にウンザリしたようで、他に用事がなければ帰ると言いだすと、師匠は何か思い出したようで話題を変えたの。


「いいや、長期休暇の修行の件だけど、城は使えないから特級ダンジョンへ行こうと思うんだ。そこならアクセルは来ることができないからね」

「なんだ、ちゃんとした話があったんですね。それにしても特級か、師匠も来るんですか?」

「当然だよ。ミナ1人じゃ流石に厳しいだろ?」

「まぁ、居ないよりましか」

「この私が居ないよりまじだって?喧嘩を売ってるのかい?」


仲良く話してるのかと思ったら、また衝突し始めたので2人の会話を遮る。


「えっと、特級ダンジョンへ3人で行くんですよね?それで、いつから行くんですか?」

「明後日ですよね?明日で準備を整えます」

「それで良いよ」


 特級ダンジョンで修行をすることが決まったので、師匠の部屋を後にすると『ホッ』と一息つくことができたのだった……

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