第127話 やってくれたね

◇◇◇アナスタシア視点

 私の許可なく城にアクセルがやって来た。マールに興味を持つのは仕方ないけど、準備が整ったら声をかけると言ったのに突然来るとは……、これが私に会いに来たのなら、可愛い孫だと喜ぶところだけど、異性に対するトラウマを抱えるマールが目的だから止めるしかない。


「アクセル、止まりなさい!会うタイミングは婆ちゃんが決めると言ったじゃないか」

「だって、可愛くて、頭が良くて、強いんだろ?その娘は俺の妻になる為に生まれてきたようなものじゃないか!今すぐ会わせてよ」


 なんというか、幼少の頃から私も含めて甘やかしたから、人の話を全く聞こうとしない。タイミングを見計らってマールと引き合わせる予定だったのに……


「妻にしようと思ってるのなら、なおさら相手のことを考えてあげなさい。嫌われたらどうするんだい?」

「俺のこと嫌い?そんなことはありえないよ。だってこのネックレスを着けるんだから、俺の言うことに絶対に従うからね」


 そう言うと、ポケットからネックレスを取り出した。女性への贈り物なら、もっと綺麗な箱に入れるような心遣いをして欲しい。ただ、ネックレスを『渡す』ではなく『着ける』と言った後に、『絶対に従う』なんて怪しい言葉があったので、そのネックレスを確認する。


「アクセル、そのネックレスってまさか?」

「これ?隷属のネックレスだよ。学園で気に入った女にはこれを着けさせてるから、何でも思う通りになるんだよ。だからアイマールにもこれを着けるから嫌われることはないよ」


 完全にアウトな考えをしていた。普通なら厳罰に処するところだけど、可愛い孫にそんなことはできない。なんとかネックレスの回収と王都へ引き返すように説得を試みる。


「そんな物を使っちゃダメだよ。婆ちゃんに渡しておくれ、ちゃんとセッティングをするから今日は王都へ帰ってくれないかい?」

「嫌だよ、婆ちゃんは俺よりもアイマールの方が大事なのか?ネックレスは渡すからさ、ちょっとで良いからね会わせてよ?ねっ!」


 ネックレスを回収できれば、会っても無茶はできないと思ったので、少しだけなら会わせても良いだろうと思ったので、食事室へ連れて行くことにした。


「判ったよ。ネックレスは渡しておくれよ。ガーベラ、アクセルを案内するよ」

「かしこまりました」


 機嫌が良くなったアクセルを連れて食事室へ案内すると、そこにマールは居なかった。マールだけではなくミナとアリシャの姿もなく、机に手紙が置かれていたので確認する。


『連れてくると思ったので、3人で女学院へ帰ります。残念でした!』


「やってくれたね!」


 私ではアクセルを止めることができないと判断して、マールを連れて女学院へと逃げ帰ってしまっていた。この後、機嫌の悪くなったアクセルをなだめるのに苦労したのだった……

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