第126話 察してください

 アリシャの言った内容は、『はい、そうですか』とは簡単に受け入れられるものではなかった。その当時はアナスタシア女王時代だったはずで、そんな非人道的なことを師匠がするはずがないと思ってるのと、亜人デミヒューマン計画は他国で行われてたと認識してるからだ。


亜人デミヒューマン計画って、人体に魔石を埋め込んで兵器化するってヤツだよね?あれはシュルト王国の話であって、アリスター王国は関係ないはずだよ」


 私がアリスター王国は関与してないと否定すると、悲しそうな表情で首を横に振りながら、当時のことを思い出しながら返事をした。


「私はこの国で実験体となりました。私以外の実験体は魔石に耐えきれず埋め込まれたショックで死んでいきました。唯一の生存個体の私も魔物の力を得ることができずに廃棄処分となり、処分される直前にアリエル様に救われたのです。それからは才覚〚偽装〛でヒューマンの容姿になり、アリエル様に仕えました」

「アリエル様は亜人デミヒューマン計画について何か言ってなかったの?」


 もし、アリエル様がアリスター王国が関与したことを知れば、何か言ってるはずだと思って、そのことを聞いてみると下を向いて黙り込む。私が師匠の弟子ということで、信頼すべき者なのか判断がつかないんだろうと思った。もし、この国が非人道的なことをしてるのなら、マールを連れて離れてもよいという想いを伝える。


「本当に師匠がそんなことをしてたのなら、私はこの国に尽くすつもりはないよ。そしてマールに害があるならアリスター王国を離れても良いと思ってる。どうか私のことを信じて欲しい」


 アリシャは私の言葉を聞いた後に、目を閉じて悩み悩んだ末に口を開いてくれた。


「アリエル様は、お嬢様が生まれたことを伝えなかった。それで察してください。今はそれ以上のことをお伝えできません」


 私がアリエル様から手紙をもらった時、レジストリーの名前ではなくレイバック姓が使われていた。そして師匠は弟子であるアリエル様の娘であるマールのことを知らなかった。そのことを知っていれば、アリエル様が亡くなった時に必ず保護していたはず。アリシャが『察して』と言ったことからも師匠が関与してるのは明白だった……


「判った。私は師匠を行動に気をつけるよ」

「それが良いかと思います。妃爵様は私が┃亜人デミヒューマンだと気づいていますが、アリエル様に知られたことは知らないはずです。ミーナリア様のことを、完全に信頼できると判断した時に、全てをお話します」

「うん、貴方の信頼を得るように努力するよ」


 話しはそこで終了して、アリシャが〚偽装〛でメイドの姿になったところで、マールが待つ私の部屋へと戻って行ったのだった。

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