第124話 理力全開飛行

 師匠と話した翌朝、マールが目覚めたので昨晩のことを、朝食を取りながら説明する。


「あのクズ女コリーヌが、マールのことを王立学園の元同僚に言いふらしたことで、バカ王子の耳に届いたらしくてさ、ヘタレ王に『マールに会いたい』とか言っらしいのよ」

「それって、凄く面倒なことになってるの?」


 私の説明を聞いたマールの表情から、不安が急激に高まって身を震わせながら答えていた。私は直ぐにマールの隣に寄り添って抱きしめると、私の手を強く握ってきた。


「大丈夫だよ。私がどんなヤツからもマールを守るからね。例え師匠が敵に回ってもだよ」

「ミナ!私はマールを渡すというのかい?」


 お母さんが私を守ると言った後に、師匠を挑発する発言をすると、少し怒気を含ませながら答えたけど、お母さんは師匠が接触可能か確認した時点で、完全には信頼していないみたい。


「そりゃあ、この城に来たのは修行半分で、残り半分はバカに会わせたかったんでしょ?」

「ほほぅ、アクセルをバカ呼ばわりかい?」

「その反応こそが信頼を損なった理由ですよ。可愛い孫と弟子を天秤にかければ、選ぶのは孫ですよね?」


 王国の最高峰の戦力を誇る2人が睨み合う。私はお母さんの手を握ってるだけで、2人の会話に割って入ることができずにいると、ガーベラさんが慌てて食事室へ入ってきた。


「アナスタシア様、ア、アクセル王子が城に来られて、この食事室に向かっておられます」

「アクセルが?来るなんて聞いてないよ!」


 師匠は私達の方へ顔を向けて知らないと言い、私に会う為にここへ来ると言われ、思わず身体が竦んでしまうと、お母さんが冷めた声で師匠に話しかけた。


「師匠が責任を持って止めてくださいよ?ここまで来てマールに近づくようなら……身の安全は保証しません」

「どういう意味だい?」


 お母さんの言葉を聞いて、師匠は形相を変えて詰めよっていくと、冷たい表情のまま突き放すように返事をした。


「そのままですよ?マールを脅かすなら排除の対象になりますからね」

「っ、私の孫だよ!」

「マールは私の娘ですから。早く行った方が良いですよ」


 師匠は話しならないと判断して、ガーベラさんに声をかけてアクセル王子を止めに行く。


「くっ……、ガーベラ案内を!」

「かしこまりました」


 師匠とガーベラが慌てて食事室から出ていくと、お母さんが私に声をかけてきた。


「マール、この城を出ようと思うんだけど、私とアリシャを連れて飛べる?」

理力全開フルスロットルなら飛べると思うけど、勝手に城を出ていっても良いの?」

「師匠は孫に甘いから押しきられる。だからここに居るとバカに会うことになるの。会いたくはないでしょ?」

「うん」

「じゃあ、女学院へ向かって飛ぶよ!」

「うんウイング!」

『バサ、バサバサッ!』


 翼を広げてはためかせて、飛行準備を整えたので2人に声を掛けて手を伸ばす。


「お母さん、アリシャ、捕まって!」

「うん」

「かしこまりました」

「行くよ!飛行フライ!」

『バサバサッ、バサァーッ!』


 2人の手を掴んだ私は、食事室の窓から飛び出して女学院を目指して飛び立ったの。


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