第123話 不測の事態に備える

◇◇◇ミーナリア視点


 夕食を終えてマールを部屋に送った後は、師匠の部屋へと向かった。


「失礼しますよ〜」

「部屋へ入る時はノックしな!」

「は〜い」


 ノックをせずに部屋に入っていくと、師匠から注意されたので、舌を出しながら謝ってから席に着く。


「それで、マールの方はどうなんだい?」

「えっと、なにがどうなんでしょうか?」

「街に出てた訳なんだから、異性に対するトラウマはどうだって聞いてるんだよ」


 なにを聞いてくるのかと思ったら、異性へのトラウマのことだったので驚いた。ここに来た理由を考えると、戦闘系の話を聞かれるのだと思っていたから。とりあえず街中を一緒に移動した時のことを伝えた。


「そこですか?私と手を繋いでれば、視界に入る程度なら問題ありませんよ」

「ふむ、マールのトラウマはそれほど深刻なのかい……参ったな」


 私の報告を聞いた後、師匠の様子が妙におかしい、何か嫌な予感がするので、もう少し踏み込んで聞いてみることにした。


「なんか嫌な感じがするんですが、なにを企んでるんですか?」

「コリーヌだよ。あの娘が王立学園でマールの凄さを伝えたもんだからさ、アクセルの耳に届いたんだよ……」

「!?」


(あの……クズ女が!)


 クズ女が王立学園の元同僚達に、マールのことを言いふらしたせいで、バカ王子にそのことが伝わったらしい。そして、バカ王子はマールに興味を持って、祖母である師匠に会わせろと言ってきた訳なのね。


「それで、可愛いお孫さんがマールに会わせろと言ってきたんですか?」

「少し違う、息子が会わせて欲しいと言ってきたんだよ」

「パスカル様ですか……」


 なんと、バカ王子ではなくヘタレ王が言いだしたのか、有能なマールを妃に迎えることで、人気に陰りのある王族の立て直しをねらったのか。


「マールの状態を考えると断るしかないね」

「当然です!強引に会わせようとすれば、私はマールを連れて城を去りますからね」


 これについては師匠が相手でも、絶対に引くつもりはない。ヘタレ王を望みを断ることで、不敬だといわれてもマールだけは必ず守る。


「そんな怖い顔をしないでおくれ。私の命を救ったアリエルの娘を無碍に扱わないよ」

「頼みますからね!私は今からマールを守る為に離れませんから、男が近づけば王族でも命の保証はしませんよ?」

「判ったよ。今のこの国であんたを止めれるのは私だけなのは、パスカルも判ってるはずだ」


 私は師匠に念を押すと、アリシャにバカどもが来るかも知れないと伝えると、アリシャは部屋の前に待機、私はマールの部屋で一緒に寝て、不測の事態に備えることにしたのだった。

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