第120話 アイマールの翼

 中等科を送りながらも、週末は師匠のもとでしっかりと修行を行ってる。師匠とお母さんとアリシャ以外には見せることはできないけど、私は師匠と同じ7属性の理魄を使えるようになった。〚創造変換トランスフォーム〛は桁違いのチート才覚で、私が理解できればどんなものでも創造することができるので、私のオリジナル理魄である金属メタルがその例になる。


 理力操作も戦闘訓練も順調に腕前を上げて、今の実力なら現役の騎士を相手にしても、まず負けないだろうと師匠に言われたので、新しいことに挑戦することになった。師匠が言うには人類の夢だそうで、どんなことに挑戦するのか楽しみに師匠の元を訪れた。


「今日からしばらくの間は戦闘訓練はやめて、これに挑戦してもらうで」


 部屋に入ると、師匠から手渡された資料を見て驚いた。その資料は鳥類についての学書で、鳥類が空を飛ぶ理論が書かれたものだったから。


(人類の夢って空を飛ぶことだったのか)


「空を飛ぶんか!」

「自由に空を飛ぶ!それが人類の夢やん?」

「まぁ、そうやけど。飛ぶんやったら飛行機でもええんちゃうん?」


 私がそう言うと、師匠は人差し指を立てながら横に振りながら否定した。


「判ってへんな〜、空を飛ぶなら翼を羽ばたかせてなんぼやん!まだまだ未熟やな〜」

「まぁ、そういうことならそうするけど、生物は専門外やから金属メタルのようにいかへんと思うで?」

「またまた〜、ビックリ天才娘がなにを言ってるん?どうせ直ぐに飛ぶんやろ?」


 地質学が専門だったけど、生物学は専門外なので簡単に理解できるとは思えなかった。そのことを師匠に伝えると、笑い飛ばして信じてくれなかった。


 確かに、翼を出すくらいなら簡単だと思うけど、筋肉の動作や風を掴まえる感覚は、学書を読んだだけでは理解できないと思う。まぁ、空を飛んでみたいから、できるだけ頑張ってみることにする。


 この日から鳥類の学書を読みあさり、鳥類の飛行理論を悪戦苦闘しながらも、少しずつ理解を深めていった。そして、飛行は全然無理だけど、翼を生やすことができるようになったので、師匠達に翼を披露することにした。


「まだ飛べないけど、翼を生やすことができるようになったから見せるね。ウイング!」


 私がウイングを唱えると、背中から純白の翼が発現させて羽ばたかせる。



『バサッ、バサバサッ!』


「おぉ~、凄い!早く飛ぶ姿を見たいよ!」

「見惚れるような翼だね。飛行理論の理解はマールでも難しいのかい?」


 2人が翼を褒めると、師匠は飛行理論のことを聞いてきたので、苦笑いしながら答える。


「飛行理論は難しいね。実際に飛べる人が書いた訳じゃないので、そのまま実践しても機能しないから、自分で理論を構築してるんだよね」

「「……?」」


 3人は首を傾げて、誰も返事をしてくれなかった……難し過ぎて何も言えなかったみたい。周りの人からのアドバイスは期待できないようなので、地道に飛行理論を築きあげることにする。


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