第117話 コリーヌ連敗を喫する

◇◇◇コリーヌ視点

(うそ……私が生徒に負けたの……?)


 私はショックのあまりその場に崩れ落ちた。


「先生、大丈夫ですか?」

「情けないわね……私から言い出して簡単に負けるなんて、笑えるでしょ?」


 私に声をかけてきたアイマールに、自分を蔑むように答えると、首を『ブンブン』と横に振って私の言葉を否定した。


「コリーヌ先生は強かったです。お世辞ではなくお母さんと模擬戦をしてる感覚になりました。先生はそれに近い強さで間違いありませんよ」


 アイマールは、普段からミーナリアを相手に模擬戦をしてると言った後に、それに近い強さだとまで言った。近い?まさか、あのミーナリアに勝ったことがあるように聞こえた。


「あなたは日頃から、ミーナリアと模擬戦をしてるというの?」

「はい、師匠の命令なので、お母さんと定期的に模擬戦を行ってます」

「勝ったことがあるの?」

「はい、でも5回に1回くらいですよ?」


 驚愕の事実を知った。私が学生時代に全く敵わなかったミーナリアに、中等科の生徒が勝ったことがあるなんて……


(そりゃあ、あの2人がキレる訳だ……)


「アイマール、あなたに謝罪するわ。あなたはクラス委員に相応しい。新任早々に生徒に連敗するとは思わなかったわ……」

「えっと、連敗って?模擬戦を1回しただけですけど?」


 しまった……、思わず胸の大きさで負けたことを数えてしまった。


「ははっ、そうね。負けたショックで言い間違ったようね。今の言葉は忘れてちょうだい」

「は、はい」


 首をかしげてはいるけど、なんとかごまかせたようなので一安心。でも、模擬戦で負けはしたけど、アイマールという稀代の天才少女に、教師としてはこれ以上の機会はないので、喜びに身を震わせたのだった。


◇◇◇ミーナリア視点

 私は遠くからアイマールとコリーヌの模擬戦を観戦している。


 私の予想では100%アイマールが勝つと思ってるの。理由は王立学園の教師を含めて、私と模擬戦をして勝てる者なんて居ないから、アイマールは5回に1回はこの私に勝てる実力者だから。


(さぁ、マール、ポンコツコリーヌを一蹴しちゃいなさい!)


 そして、模擬戦はアイマールの圧勝に終わる。コリーヌの戦いぶりは及第点かな?これでアイマールを小馬鹿にすることはなくなると思うから、圧勝したことを自慢しちゃおう!


「うふふっ、マール勇姿が見れなくて残念がるだろうな〜」

『コツンッ!』


 私が独り言を言った後に、誰かに頭を叩かれたので振り返ると、杖を手に持った師匠が立っていたが、笑ってるように見えたけど怒っていた。


「ほぅほぅ、私になにも報告せずに1人で観戦してたのかい?いい度胸だねぇ〜」

「いや、その……、すみませんでした!」


 この後は、永遠のように続く師匠の説教で涙目になったのだった……

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