第110話 偶然の接触

◇◇◇ミーナリア視点


 馬車が討伐協会に到着すると、マールは慣れない討伐の疲れからか、未だに熟睡している。起こすのが可哀想なので、このまま馬車に残してアリシャに任せることにした。


「起こすのが可哀想だから馬車に置いていくから、一緒に着いててもらえるかな?」

「かしこまりました」

「パッと終わらせてくるからよろしくね」


 私は馬車を降りて討伐協会の建物へ入って、受付に声をかけてカレンを呼ぶ。


「Sランクのレジストリーよ。魔物の討伐確認をして欲しいからカレンを呼んでくれるかな?」

「かしこまりました。部屋へ案内致します」

「うん、よろしくね」


 別室に案内された後は、カレンに草原にワイバーンが現れたことを報告すると、目を丸くして驚いていた。安全と思われていた草原に、A級の魔物が現れたのだから仕方ないね。


 報告が終わると、解体場へ向かって討伐成果となる魔物を提出する。ワイバーンなんて大物は王都の討伐協会でも滅多に見れないので、見物客が大勢きていて『流石はSランク』なんて声をかけられたけど、私が言い出したこととは流石に手柄の横取りした感が半端なかった。


(討伐代金でマールと豪華な食事をしよう)


 全ての手続きが終わったので、馬車へ戻ろうとすると1人の男性から声をかけられた。


「貴女がレジストリー子爵様ですか?お初にお目にかかります。私はヴィラン.イーブルと申します。一応は貴女と同じ子爵です」


 その名を聞いた瞬間、私の心がザワつき殺気立った。


(コイツが、私のマールを傷つけた張本人?!)


「そうよ、私はミーナリア.レジストリー子爵だけどなにかご用?」


 なんとか冷静を装って返事をすると、ヤツは『ヘラヘラ』と笑いながら話を続けてくる。このタイプは本心を語ることはないだろう。


「優秀な養女を迎えられたとお聞きしました。なんでも女学院の首席だとか、素晴らしいご令嬢ですね」

「よくご存知で?上位貴族ならまだしも、下級貴族にまで知れ渡ってるとは驚きです」


 転籍の情報は下位貴族には回らないので、そのことを少し嫌味っぽく伝えると、少し『ピクリ』と眉を動かしてから返事をした。


「ははっ、これは失礼しました。ご令嬢のことを知ってまして、転籍前の実家とは資金援助をしてたので、出入りをしていたのでアイマールのことは、よ~く知ってるんですよ」


 ここが公の場でなかったら……殺していたと思うほどの怒りを覚えたが、相手に悟られないように平然を装うように努めた。


「そうですか、女学院では溢れんばかりの才能を発揮して頑張ってますよ」


 私の言葉を聞くと、一瞬だけ目を細めて真顔になったの見逃さなかった。アレが素顔のイーブルなのだろう。


「立派に成長した姿を見てみたいものです」

「ご縁があれば見れるかも知れませんね。では、学院で娘が待ってるので失礼します」


 そう言ってから私は早足で馬車へと向かい、乗り込むと同時に馬車を走らせたのだった。


(寝ててくれて良かった……)

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