第97話 変わらぬクラスメイト

 アリグリアに提案をした翌日の放課後になると、Bクラスからセイラとハーレイが手を振りながら、Aクラスの教室へと入って私の元へ駆け寄ってきた。


「アイマール、アリグリアから聞いたわ。貴女が力を貸してくれれば、編入試験の合格確率が格段に上がるわ!ありがとう」

「今日からよろしくね。私は計算が苦手だから本当に助かる。感謝だよ」


 セイラが感謝の言葉を伝えてくれると、ハーレイも頷きながら話しかけてきたの。2人の声が聞こえた平民のクラスメイトが、そんな私達に声をかけてきた。


「平民の私達を放っておいて、他のクラスの貴族には勉強を教えるんだ?やっぱり貴族って馴れ合うんだね。ガッカリだわ」


 クラスメイトを放ったらかしにしてると言われた。間違った認識をしてるので、そのことだけは伝えておくことにした。


「私がキムをクラスの輪に入れることを拒んで、放り出したのはあなた達だよね?勉強を教えて欲しいのなら嫌味な言い方をせずに、素直に教えて欲しいと言うべきだと思うわ。それに、これは馴れ合いじゃないよ?王立学園の編入試験に女学院の仲間が挑むんだから、応援するのは当たり前のことじゃない」

「なっ、何が王立学園よ!無駄な努力をして編入試験を受けた結果、新学期には全員揃って女学院へ通ってるんでしょ?」


 何も言い返すことができないから、編入試験を受けるセイラ達に嫌味をぶつける行為には、流石に怒りを覚える。必死に努力することを無駄なんて簡単に口にするものじゃないから……。


「努力することに無駄なんてないんだよ?結果が伴わなくても、努力して身に付けたことは本人の財産になるの」

「それは負け惜しみじゃない。結果が出なきゃ努力の意味なんてないのよ!」


 相変わらず何を言っても平行線なので、少し厳しいことを言うことにした。


「じゃあ、修了試験で努力した結果が出るように頑張ってね。中等科からは成績でクラス分けが行われるから、直ぐに結果が出るもんね」


 そう言い放ってからは、後ろを振り返らずに教室を後にして、勉強会をするアリグリアの部屋へと向かったの。向かう途中にハーレイがAクラスの事で口を開いた。


「なんか、Aクラスの雰囲気は変わったんだね」

「うん……、少し考え方が変わったみたい」


 私がトーンの低い返事をすると、アリグリアがが少し怒り気味に説明をした。


「勉強会で成績が上がってからよ。前期で学力対抗戦の選抜メンバーに入ってからは、変な意味での自信になっちゃって、なにかと貴族に反発してるのよ」

「……」


 アリグリアが話したあと、キンバリーは下を向いてしまう。そのことに気づいた私は肩に手を当ててから声をかける。


「キムは悪くない。嫌な思いをしたかも知れないけど、それをやり返すなんて行為は許されない。そのことに気づかなければ彼女達はずっと成長できないもん。キムはそのことが判ったから変わったんでしょ?」

「うん……マールありがとう」


 少し涙を浮かべながら『ありがとう』と言うキンバリーを私は肩に手を回して頭を合わせてから声をかけたの。


「どういたしまして」

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