第96話 挑む者への提案
武術対抗戦が終わって、初等科として過ごす日もあと僅かとなった。
初等科から高等科までは入学すれば、退学にならない限りは進級できるんだけど、中等科以降は成績でクラス分けが行われるので、学力・武術・理力操作で修了試験が実施される。
3つの試験の総合成績で、優秀な生徒から順番にAクラスからDクラスへと振り分けられるの。
他には、初等科修了後に王立学園への編入を希望する者には、教師の推薦を得る事ができれば編入試験を受けることが可能になって、試験に合格すれば王立学園へ通うことができるの。
編入試験に関しては、異性への恐怖心があるので受けるつもりはないので、私には関係ないと思っていたけど、Aクラスからアリグリアとキンバリーが、Bクラスからセイラとハーレイの4人が、王立学園の編入試験を受けることをアリグリアから聞いたの。
(そうか、そうだよね。このチャンスを逃せば王立学園へ編入できないもんね……)
この4人なら編入試験に合格して、無事に王立学園へ編入できると思う、私にできる限りのことをしようと思ったので、アリグリアに編入試験に向けた勉強会を提案した。
「ねぇ、編入試験を受ける4人と、私を合わせた5人で勉強会をしない?1人でするより断然に効率が良いと思うんだけど、どうかな?」
「確かに良さそうね。私の方から3人に声をかけておくわ。1つ言っておくわ、私は編入試験を受けるけど合格する気はないから」
私が勉強会のことを提案すると、賛同してくれたあとに意外な答えが返ってきた。私が呆気に取られてると、『プッ』と笑いながら肩を叩いてから、改めてその意味を教えてくれた。
「あははっ、編入試験はお母様が受けろと煩いから、仕方なく受けるだけなのよ?私はマールとこの女学院で過ごしたいのよ。ダメかしら?」
アリグリアは、編入試験に合格するつもりはなく、選抜科までの残り4年を一緒に過ごしたいと言ったの。私としては1番の親友が女学院に残るのは嬉しいけど、優秀なバーラント家でそんなことは許されないのでは?と不安に思ったので、そのことを伝えた。
「えーっ、落ちたらお母様から怒られるよ?実家へ帰ったら肩身の狭い想いをしちゃうよ?」
「馬鹿な末っ娘で十分よ?私はそんなことよりマールと過ごす時間の方が大事なのよ。良い親友を持ったことを感謝するのよ?」
私はその言葉を聞いて、嬉しさのあまり涙が溢れだしてアリグリアに抱きついた。女学院に入学して初めての友に、そこまで思われてるとは思ってもいなかったから……。
「ちょっ、マールどうしたのよ?」
「グリアのせいだよ。そんなこと言われたら誰でも泣いちゃうよ……」
「そんな訳だから、これからも仲良くしてね?」
「ぐすっ、うん、よろしくね。ぐすっ」
私が涙声で返事をすると、アリグリアは私の頭を撫でてくれたのだった。
(グリアありがとう。大好き)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます