第93話 圧倒的な存在感

 アリグリアもセイラに敗れて、副将のクリスティも手も足も出ずに敗れてしまった。ここまでの間、セイラは全クラスの生徒を1人で倒すという、圧倒的な存在感を示した。


 そしてそのセイラの前に、最後の1人となった私が闘場へ上がって対峙する。


「貴女に負けた日からは、この瞬間の為に基礎から鍛え直したのよ。必ず勝ってみせるわ」

「私も頑張って修行をしたから負けないよ」


 セイラはこれまで使っていなかった盾を持った。これまでの攻撃一辺倒ではないということか、戦いながら様子を見るしかない。


「第5試合始め!」


 試合開始の合図とともに私は扇を振って斬撃を飛ばすと、盾をやや斜めに構えて斬撃を受け流した。正面から受け止めれば一瞬の隙が生まれるかと思ったけど、その辺りはセイラも判っていたようだった。続けて土の理魄で石の弾を複数撃つと同時に間合いを詰めていく。弾は上下に撃ち分けたので盾だけでは防げない、セイラは上は盾で、下は槍で弾ききった瞬間に、私は盾がない右側から扇を振って打撃を打ち込む。


『ガッ!』


 槍で受け止められるのは想定済みで、もう一方の扇を閉じて打撃を打ち込もうとすると、セイラは盾で打撃を受け止めようとしたけど、私は打撃ではなく斬撃を飛ばしていた。


『ガッチィーン!』

「しまった……」


 斬撃を真正面から受け止めたことで、勢いに押され後ろへ倒れて尻もちを着いた。私は盾を持った手を足で踏み押えると、残った方の手に持っていた槍で突こうとしたけど、握った手に扇を投げて当てた。


『バチッ!』

「くっ……、参りました」


 勝ち名乗りがあがる前に負けを認めたことで、前期に続いてセイラに勝利した。


「勝者アイマール!」


 これまで圧勝で勝ち続けていたセイラの敗戦に、Bクラスの生徒達は信じられないといった表情で、ただ闘場を見つめるだけだった。そしてAクラスの方は、私の勝利に湧き上がって4人で抱き合って喜んでいた。


「必死だった……それでも貴女に届かないのね。悔しいけど完敗だわ」

「凄く強くなってたね。前期のままなら負けてたと思うよ。次の対戦を楽しみにしてるね」

「えぇ、よろしくね」


 互いの健闘を称え合ってから握手を交わすと、セイラは闘場から降りて、次の生徒が顔を強ばらせながら上がってきた。


 私は続く次鋒、中堅、副将を退けると、最後に大将のハーレイが上がってきた。


「セイラに勝つなんて……、私はまた違うタイプの戦い方だから簡単に勝てると思わないでね?」

「うん、判ってるよ。クラスの勝利の為にお互い全力を尽くそうね」


 お互いに声をかけ合ったところで、優勝決定戦の大将同士の戦いが始まろうとした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る