第90話 母と師匠

『コンコン!』


 お母さんの部屋に泊まった翌朝、ドアのノック音で私達は目が覚めた。


(アリシャかな?)


 まだ眠そうなお母さんが、欠伸をしながら声をかけながらベッドから起きあがった。


「ふぁ~、はい、どなた?」

「アリシャです。朝早くにすみません、お嬢様の着替えをお持ちしました」

「はい、ちょっと待ってね」


 ドアを開けると、アリシャが一礼してから部屋へと入ってきて、私の着替えをお母さんに渡したタイミングで、私も寝室から出てアリシャに声をかける。


「おはようアリシャ、お腹が空いたからなにか作ってくれない?」

「それは構いませんが、ミーナリア様のお部屋なので勝手に作る訳には……」


 私の部屋ではないので、勝手な事ができないと言うと、お母さんがアリシャに声をかけた。


「あっ、適当な食材があるから作って構わないよ。私の分もよろしくね」

「かしこまりました。直ぐに用意しますので、着替えを済ませてください」

「ありがとう、お母さんお風呂借りるね」

「あっ、私も入るよ」

「はーい」


 朝食の準備ができるまでに、お母さんとお風呂に入ってから着替えを済ませると、朝食が食卓に並べられていて2人で食事を楽しんだ。


 食事の後は、修行があるので師匠の元へ向かうけど、今日はお母さんも付いてくると言った。


「昨日のマールは明らかにオーバーワークだったから、師匠にそのことは伝えるよ。才能があっても11歳の女の子なんだから、体力的なことも考えてもらわないとね!」

「ミーナリア様がそこまで言われるとは、アナスタシア様は相当な鬼軍曹なのですね。お嬢様に無茶をさせないようにお伝え下さい」


 2人とも少し怒ってるのかな?確かに昨日の修行は辛いと思ったので、もう少し軽くしてもらえると助かるから、お母さんに任せることにした。


 アリシャは私の着替えを受け取ると、もう1度お母さんにオーバーワークにならないように頼んでから部屋へと戻っていったので、私達は修行をする訓練所へ向かったの。


 私達は先に訓練所に着いて師匠が来るのを待っていた。少し遅れてやって来た師匠は、お母さんが居ることに驚いたようだ。


「おや?ミナが居るとは思わなかったよ。一緒に修行をするのかい?」


 師匠は、少し不思議そうな顔をしながらお母さんに話しかけると、首を横に振ってから少し強い口調で話し始めた。


「師匠は、マールが11歳の女の子だと理解したうえで修行をしてください。あんな状態になるまでされては、母としては黙ってる訳にはいきませんよ?」

「えっと、そんなにだったかい?」

「そんなだったから言ってるんです!もっとマールの様子を確認しながら、適切な修行をしてくださいよ!」


 私の異常に気づいてなかったことに、お母さんは『ムッ』とした表情になって、さらに強い口調で師匠へ注意をすると、流石に圧に負けて少し後退しながら、落ち着かせようと両手を前に出した。


「まぁまぁ、落ち着いて。ミナの言うことは判ったから、ちゃんと適切な修行をすると約束するからね」

「今日の修行は私が適正に行われてるか見学させてもらいますね」

「は、はい……」


 お母さん監視のもと修行が行われたのだった。


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