第88話 親子水入らず

 私が机に座ったままうつ伏せになっていると、お母さんが戻ってくるとその事に気づいて駆け寄ってきた。


「マール、やっぱり具合が悪いんじゃないの?大丈夫なの?」

「ちょっとオーバーワークだっただけ、少し休めば大丈夫だよ」

「大丈夫じゃないよ!顔色が悪いよ。汗を流したら私のベッドで休みなさい。アリシャには伝言魔法で伝えらからね」

「うん、判った」


 心配そうに声をかけてくれたお母さんに、修行のオーバーワークで疲れてるだけだと伝えて、安心してもらおうと思ったけど無理だった。


 少しふらついて立ち上がると、1人で入浴するのは心配だと言って、お母さんと一緒に入浴することになった。


 脱衣場で服を脱いでいると、ふらふらな私は脱ぐのが遅くて、先に脱ぎ終えたお母さんが声かけてきて、脱ぐのを手伝ってくれたけど、シャツに手をかけると手が止まった。


「マールはじっとしててね。私が脱がした方が早いからねって……」

「ん?どうかしたの?」

「その歳で胸の膨らみがあるなんて……」


 お泊り会の時もみんなに言われたことを思い出した。自分では普通だと思ってたけど、お母さんにまで言われると私の成長は早いみたいね。


(アリエルお母さんありがとう!)


「グリアの部屋でお泊り会をした時も同じことを言われたよ。でも、お母さんの方が綺麗なスタイルで羨ましいな」

「マールなら『ボンッキュッボンッ』って感じの悩殺ボディになるわよ。って、そんな事より汗を流して身体を休ませないとね」

「うん」


 お湯で汗を流した後に、湯槽に浸かると思わず『ふぅ~』と声が出て、生き返った心地がした。


「お湯に浸かって血流が良くなったのかな?顔色が戻ってきたみたいね」

「うん、なんか生き返った気がするもん」

「身体が温かくなったら、長湯をしないで早めにあがって横になるからね」

「は~い」


 しばらくお湯に浸かってから、長湯をせずに風呂からあがった時に着替えがないことに気づくと、お母さんの寝間着が2つ置いてあった。


「少し大きいかも知れないけど、寝るだけなら関係ないでしょ?」

「うん、ありがとう」


 着替えを終えて、寝室にある大きなベッドで横になると、お母さんも入ってきて一緒に寝ることになった。お泊り会でみんなで寝た時と違って、お母さんはとても柔らかく良い香りがした。母の温もりってこういうことなのかと思ってると、胸元へ抱き寄せられたのでそのまま甘えた。


「明日は、厳しくするにも限度があるって、師匠に苦情を言っておくね。マールも辛いと思ったら私に言ってね?」

「うん」


 師匠の名前が出た時に、お母さんが軍隊に入隊せずに教師になった理由を、聞こうと思っていたことを思い出したので、このタイミングで聞くことにした。


 

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