第87話 オーバーワーク
師匠からお母さんの過去を聞いて、私はその事に対して何も言えなかった。
でも、争いが起これば戦地へ向かうのなら、どうして教師をしてるんだろうと思ったので、その事を師匠に聞いてみた。
「なんで、なんでお母さんは軍に入隊せずに、女学院の教師になったん?」
「それは、ミナに直接聞くんやな」
「でも、どう聞いたらええの?」
聞くにしても、話の切り出し方が判らず悩んでいると、師匠は私の頭に手をのせて撫でてきた。
「親子やろ。なんでも聞いたらええんや」
師匠の言葉を聞いて、前にお母さんから言われた言葉を思い出した。
『親子なんだから、些細な事でも遠慮せずに話して欲しいの。頼りない母かも知れないけど、私はマールと本当の親子の絆を築きたいんだよ。ダメかな?』
「判った。修行が終わったらお母さんに聞くわ」
「そう、それでええんや。じゃあ、修行を再開するで」
「はい!」
話し込んだことで長い休憩になったけど、再開後は師匠の容赦ない修行に、終わる頃には二徹でもしたのかと思うほどの疲労感だった。
「お疲れさん」
「はぁ、はぁっ、お疲れ様……」
「結構ハードやったけど、まだ余裕あるん?」
「いや、余裕なんかないよ?ももええ……帰る」
思い切りツッコミを入れたいところだったけど、疲れ切ってそんな余裕はなかった。早く帰って汗を流してゆっくりしたいので、師匠に背中を向けたまま手を振りながらその場を後にした。
私は頭を使い過ぎて、ヘロヘロになりながら移動してると、部屋へ戻ろうとしていたお母さんに声をかけられた。
「ちょっと、マールどうしたの!顔色が悪いじゃないどこか具合が悪いの?」
「あっ、お母さん、修行がキツ過ぎて……」
「とりあえず、私の部屋で少し休みなさい。ほら、肩を貸すから行くよ」
「ありがとう」
私はお母さんの肩を借りて部屋で休ませてもらう事にした。一緒に移動してる時に修行の説明をしていると、お母さんは頬を膨らませながら、明日の朝一から文句を言いに行くと怒っていた。
お母さんの部屋へ入ると、リビングで座らせてもらって冷たい飲み物をもらった。
「とりあえず水分補給ね。直ぐにお風呂を沸かすからちょっと待ってね」
「うん、『ゴクゴク』美味しい。あっ、私は着替えを持ってないよ?」
「私の服を貸すから気にしないでいいよ。ほら、もっと飲まないと!」
お母さんはそう言ってから浴室へ向かったので、私はもう一口飲み物を口にすると急に身体が重くなって、机にうつ伏せになってしまった。
(やっぱりオーバーワークだったのかな?身体が思うように動かないや……)
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