第85話 母の助言

 クラスの分裂状態は変わらず続く中、学力対抗戦の日を迎える。


 それまでの間に変わった事が2つある。


 1つ目は私とお母さんの関係で、クラスが分裂した事をジュリエッタ先生から聞いて、私の事を心配して部屋まで来てくれた。


 その時、私に言ってくれた言葉は嬉しかった。


「親子なんだから、些細な事でも遠慮せずに話して欲しいの。頼りない母かも知れないけど、私はマールと本当の親子の絆を築きたいんだよ。ダメかな?」


 私は親というものとは疎遠だった。特に母とは、あの日の事が起こる前から避けられていたので、接し方が判らなかった。クラスの事で悩んでいる時も、話して良い事なのかが判らず黙っていたけど、気に掛けて声をかけてくれた事で、頼っても良いんだと判って気が楽になった。


 その日を境に、お母さんの都合がつく時は、一緒に夕食を取るようになり、その日の出来事を互いに話し合うようになって、2人の距離感は近くなってきたの。

 

 2つ目は、貴族令嬢の関係改善で、私達へ謝罪をして以降の、キンバリー様の行動をキャメリア達も認めて、一緒に行動をするようになった。以前のような関係ではなく友として接するようになり、マール、グリア、キム、キャリー、クリス、アンナと全員が愛称で呼び合うようになった。


 そして、分裂した状況で行われた学力対抗戦は、Aクラスが優勝はしたけど結果は私の予想通りの内容だったの。


アイマール 300点

アリグリア 250点

キンバリー 245点

マナカ   180点

テレーサ  165点


 明らかに平民の2人は点数を落としていたので、前期のような圧倒的な優勝ではなくて、個人戦で1位から3位を独占した、私達の貯金がなければ負けていた。

 授業で判らなかった所を勉強会で教え合いをしていたけど、教えていたのが私達だった為に、勉強会をしても判らない所は放置された結果が如実に点数に現れたの。


 この状態が続けば成績は下がり続けると思う。後は平民の生徒達が私達へ歩み寄ってくるのを待つ事にする。


 こちらから歩み寄らないのは、私の考えではなくお母さんから助言で、私が歩み寄ろうと思っている事を、夕食の時にお母さんに話したら』向こうがその事に気づかなければ、同じ事の繰り返しになる』と言われたから。


 なんでも直ぐに手を差し伸べる事が、逆に悪影響になる場合もある。その事を教えてくれたお母さんに感謝したのだった。



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