第84話 母の心配

 ジュリエッタからAクラスの貴族と平民の生徒が、上手くいってないと報告を受けた。ことの発端は、マールがキンバーリーと仲良くしようとした事が原因らしい。


 平民の生徒が言うには、


『結局は上位貴族に取り入った』

『平民を手懐けて、キンバリーに差し出そうとした裏切り者だ』


 なんて言う声が多数だったらしい。


 マールがそんな事をする娘ではないと判っているので、特に気に病む必要はないと思うけど、クラスをまとめる事を頑張ってたから、分裂した事でショックを受けていないか心配になる。


 そんな事を師匠に相談すると、『ニヤニヤ』と笑みを浮かべながら『実の娘でなくても心配するなんて、母親っぽくなったねぇ〜』と冷やかしてきた。師匠にマールの継母になるように言われた時は、確かに戸惑い母になれるか心配したけど、短い期間とはいえ接するうちに母性という物が湧いてきた。


「そんなに心配なら直接話せば良いんだよ。親子なんだから遠慮せずに思った事を聞けば良いよ」

「でも、そんなところまで踏み込んで良いのでしょうか?アリシャも付いてるんですよ?」


 私の少し弱気な言葉を口にすると、師匠はなぜか嬉しいそうな表情になっていた。


「本当に母親っぽくなったね。さっきは冷やかしのつもりで言ったんだけど、今の言葉は本当にそう思ったよ。良い母親になってきたミーナに1つ忠告するなら、気を使わない方が良いよ。あんたが気を使えば、あの娘は賢いからそれを感じ取ってしまうよ」

「そうですかね……」

「心配だと思ってるのなら尚更だよ。互いに包み隠さずに、思ってる事を言い合えるようになれば、本当の親子になれるんじゃないかい?」


 師匠が言った『本当の親子』の言葉に『なれるのかな?』ではなく、『なるんだ』と自分に言い聞かせて、マールに今の思いを伝えようと心に決めた。


「ふふっ、決心がついたようだね。頑張っておいで、相談ならいつでものるからね」

「はい、マールと話をしてきます。師匠、ありがとうございました」


 私は師匠に礼を言ってから、マールの部屋へと向かって行き、今の気持ちをそのまま伝える事にした。


(にゃろう、心配かけやがって……もし悩んでるなら私を頼れって説教だ!)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る