第82話 立場が人を変えるのか……
私の部屋で話し合いをした翌日、私とキンバリー様は放課後の勉強会の前に、平民のクラスメイト達の元へ歩み寄った。そして、これまでの事を謝罪したけど反応は良いものではなく、心ない言葉を浴びせられる。
『謝罪の時は金品を配らないんですね?』
『マールの家にも圧力をかけたんですか?』
キャメリア達が加わる時はそんな言葉をかけなかったのに、キンバリー様に向けられた言葉を耳にした時は、私も驚いて眉をひそめた。隣りにいたキンバリー様はさらに辛そうな表情で、私は肩に手を当てて教室を後にして部屋まで送った。
「大丈夫?あの言葉は酷すぎるよ。後でみんなに注意しておくよ」
「ううん、それだけの事をしてきたから仕方ないよ……」
「夕食の後に部屋へ寄っても良いですか?」
「うん……ありがとう」
キンバリー様を部屋まで送ってから、教室へ戻って勉強会に加わろうとすると、クラスメイト達の声が廊下まで流れてくる。
『マールは平民の味方だと思ってたのに残念』
『グリアからも注意してよ。キンバリーなんかと仲良くするなら仲間と認められないよね』
『マールは貴族と平民とかじゃなくて、クラスメイトとして仲良く接してるのよ?』
『クラスメイトと仲良くしたいなら、私達の意見を尊重してもらわないと困るよね』
『『そうだよ』』
クラスは上手くまとまってると思ってたけど、そういう訳ではなかったようだ。聞かなかったフリをして合流するのは、面倒事から逃げるみたいになるので嫌だったから、正直に話をする。
「ごめん、声が大きいから聞こえちゃったよ」
「それじゃあ、キンバリーと仲良くするのは辞めるんだよね?」
私は迷う事なく首を横に振ってから、教室に居るみんなに向かって返事をする。
「それはできないよ」
「じゃあ、マールは輪に加わらないでね?」
今のみんなは、昔された事を根に持って、立場が逆転したからやり返してるだけだ。辛いと思った事をどうして……そう思ってしまう。
「うん、優位な立場になったからといって、その力を行使して虐げるのは間違ってるもん」
「なっ、何が言いたいのよ!」
「貴族の力に虐げられてると言ってたけど、今のみんなは数の力でキンバリー様を虐げてる。立場が逆になったからって、同じ事をやり返すなんて私は認めない」
私がハッキリと応えると、グリアは席を立って私の元へやって来た。
「私はマールと同じ意見だわ。話をしてても圧をかける言いっぷりにはついて行けない」
「「私達もマールにつくわ」」
クラスが1つになるかと思ったら、思わぬ形で分裂してしまった……
(立場って人の考えを変えてしまうんだね……)
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