第80話 忌避されるキンバリー
キンバリー様は泣き止んで落ち着きを取り戻すと、スッキリとした表情でもう1度謝った。
「本当にごめんなさい。貴女に酷い事をしたのに手を差し伸べてくれて、感謝しかないわ」
「孤独の辛さを知ってるので、どうしても放って置けませんでした」
「これから……仲良くしてくれる?」
「そのつもりですよ。ただ、1つ聞いておきたいのですが、私以外のクラスメイトと、仲良くする気はありませんか?」
私だけじゃなく、他のクラスメイトと交流ができれば、きっと楽しい学生ライフが送れる。そう思ってるのでキンバリー様の意思を確認すると、少し困惑気味の表情になった。
その表情が、平民を同等に扱う事への抵抗があるものなのか、これまで接してきた態度により、受け入れられないのでは?という不安からくるものなのかは判らないので、その事を確認する。
「平民と仲良くする事に抵抗がありますか?それとも受け入れてもらえるのか不安?」
キンバリー様は少し間を置いて返事をした。
「正直に言えばどっちもあるかな?貴族として生まれたから、階級にこだわる考えが根付いてるの、これは簡単に変えられるものではないわ。それに……」
素直に抵抗がある事を伝えた後に、平民のクラスメイトを飼い慣らそうとして贈り物を渡したけど、受取を拒否された事を話してくれた。初めて聞いた内容に少し驚いた。
「いきなりクラスの輪に入るより、先ずは貴族の生徒と関係を修復していきませんか?」
「できるならそうしたいわ……でも……」
キャメリアとクリスティが離れていった時に、実家へその事を手紙で伝えて、シュスター伯爵家からシェルトン子爵家に圧力をかけたらしい。ただ、シェルトン家が属する伯爵家が圧力を停止させた経緯があるらしい……この事も初めて知ったけど、なかなか前途多難な状況だと理解した。
「どちらも解決するのは大変でしょうが、少しずつ溝を埋めていきましょう」
「えぇ……」
「明日はお時間があるなら、夕食後に部屋へ来てもらえませんか?グリア達が遊びに来るので、少し顔を出して少し話をしましょう」
「判ったわ。本当にありがとう」
時間が遅かった事もあり、話が纏まったところでキンバリー様は部屋へと戻っていった後に、『ふぅ〜』と一息つくとアリシャが不安な表情で声をかけてきた。
「シュスター嬢が、あんなにも裏で動いていたとは、関係修復は簡単な事ではありませんね」
「うん、それでも、やれる事をやってみる」
「お嬢様が無理をし過ぎないか心配です」
「ありがとう」
そう言ってからは、アリシャに抱き着いて少し甘えさせてもらってから就寝した。
そして、翌日の授業と放課後の勉強会を終えて、夕食の後にグリア達が部屋にやって来ると、部屋にキンバリー様が居た事に驚いた。
グリアはそれほどでもなかったけど、キャメリア達の表情からは嫌悪感が見られ、明らかに忌避するものだった……
(キンバリー様、ここからは貴女が誠意を見せて、少しずつ溝を埋めるしかないんだよ)
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