第79話 私の負けよ……
◇キンバリー視点◇
パメラから突然の告白を聞いて声を失った……
私は必死に勉強をして、学力対抗戦に出場する権利を勝ち取ったと思っていた。のに……
「あははっ……馬鹿みたい……」
「いいえ、お嬢様はAクラスの中で、誰よりも頑張られました」
「どこがよ!あのメモがなければ、今回の学力対抗戦へ出る事ができなかったって事じゃないの!アイマールはきっと笑ってるわよ」
「私はそうは思いません。レジストリー嬢は貴族でありながら貴族らしくない方です。決して人を馬鹿にする事はありません」
私の事をアイマールが笑ってると言うと、パメラはすぐに否定した。なぜ私のメイドがそこまでアイマールの事を認めてるのか不思議に思っていると、パメラは話を続けた。
「なぜ、レジストリー嬢を認めてるのと思われるでしょうが、後期が始まって直ぐに声をかけて来られて、最初は偽善だと思ってましたが……」
パメラは後期が始まってアイマールから声をかけられて以降は、私がいない頃合いを見計らってはメモを作って渡して、私の進捗状況に合わせて勉強の進め方を、事細かに説明していたらしい。なぜそこまでするのかと理由を聞くと『1人は辛いから』と答えたらしい。
私へ勉強を教えた事で、学力対抗戦のメンバーから漏れる生徒がでれば反感を買う、そうなれば孤立する事になるかも知れない。そんな事をパメラが聞くと、『その時はキンバリー様の友達になってもらえるかな?』と言ったとか……
パメラの話を最後まで聞き終える頃には、私の目から涙が溢れていた……
「お嬢様、レジストリー嬢の元へ参りましょう」
「い、今更……どう言えば良いのよ…… 」
「今の素直な気持ちを伝えるのです。まだ、就寝には早いので間に合いますから」
私はパメラに背中を押されアイマールの部屋へと向かったのだった。
(アイマール、私の負けよ……ありがとう)
§アイマール視点§
夕食の後に、グリアが遊びに来ていた。思いっきり話を楽しんだ後に湯浴みを終えて、そろそろ寝ようかと思ったら、ドアをノックする音が聞こえたので、アリシャが対応する。
『コンコン』
「このような時間にどちら様でしょうか?」
「キンバリーよ、遅くにごめんなさい。」
キンバリー様が部屋に来られた。アリシャに合図して部屋へ入ってもらう。
「どうぞ、お入りください」
アリシャは2人を部屋へ招くと、私は寝間着のままだけどキンバリー様へ声をかける。。
「このような格好でごめんなさい。こんな時間にどうされたのですか?」
「パメラから話を聞いたの……あの、私なんかの為に……ありがぁどぉう……ごゔぇんなざぃ」
キンバリー様が泣きながら謝罪を口にした。私は頭を下げるキンバリーに近寄って優しく声をかけてから、包むように抱きしめた。
「いいえ、1人で本当に頑張られましたね」
「あぁ、アイマール……うわぁああっ」
私は泣き続けるキンバリーを胸に抱いて、落ち着くまでは背中を撫で続けた。
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